旅路

スペイン5日目:マドリッド史付け焼刃―強行軍突破!

今日の私たちは凄かった。 まず、マドリッドの西側、ウォーキング・ツアーと言うのに参加しました。 http://www.ogotours.com/madrid-free-walking-tour 朝の10時から1時半までかなりの暑さと日差しの中、 マドリッドのお城、聖堂、歴史ある市場広場、ヨーロッパ一古い食堂など見て回り、 マドリッドの創立から現在に至るまでの歴史を 王族の代々の家系、イスラム・ユダヤ・キリスト教信者の関係と迫害、歴史的エピソードや伝統などの お話しを聞きながら歩き回ったのです。 面白かったことはいろいろ。 最初に、そのビジネス・モデル このツアーは全く無料です。 オンラインで予約することはできますが、それもいい加減なもの。 何時にこの広場で、と言うところに出現さえすれば、参加することができます。 ツアーで回る観光スポットはあらかじめホームページで分かっています。 ツアー終了時に、参加者はそのガイドに提供されたサーヴィスに適度と思われるチップを渡すのです。 この会社とビジネス・モデルは10年前くらいに開発され、ヨーロッパでは定着した観光方法の模様。 ツアーの最初の時点でまず参加者はこのビジネス・モデルについて簡単な説明を受け、 ガイドの生活が受け取るチップにかかっていること、ガイドは会社のブランドとトレーニング、そしてビジネス・モデルの利用料として受け取るチップの半分を会社に払うこと、しかし参加者には支払の義務は無く、それがガイドのサービス内容向上のインセンティブになっていることを説明されます。 面白い! 人間はお互いを助け合いたがっていると言う基本的信念のもとに 10年も続いていることが素晴らしい! 次に私たちの今日のガイドのセバスチャンが面白かった こういうツアーだから、ガイドによってその経験が大きく左右されることは一目瞭然です。 この会社がどの程度までガイド内容のクオリティーコントロールをしているか知りませんが、 例え一字一句説明本文を暗記することが義務付けられていたとしても ガイドの個性と参加者との相性が、ツアーの印象を影響することは当然でしょう。 しかし、今日のツアーではセバスチャンのキャラクターが私と麻衣子さんの論点と一つとなりました。 セバスチャンはバンビの様な目をした熱血青年です。 可愛い顔をしているから、多分年齢より若く見えるのでしょう。まあ、20代半ばか後半か。 150年早く生まれていればリンゴ箱に乗っかって革命スピーチをしていたか、と言う 社会改革・現状不満のメッセージが溢れてしょうがない、 良い意味でも悪い意味でも「これが『青い』と言うことか」と、ちょっとだけ年上の私に思わせてしまう、 そんなツアーガイドでした。 確かにマドリッドの歴史は複雑で、今でもその説明は非常な心配りを要します。 参加者は20人で、世界中から来ている。 イスラエル人も、イラク人も、フランス人も、ロシア人も、 スペインが植民地にした南米、東南アジアの人々も居て、 宗教もカトリック、プロテスタント、ユダヤ教、イスラム教と実に多様。 そう言う中で、血まみれの宗教迫害の歴史を説明し、 ヨーロッパの王族同士の戦争・政略結婚、そしてスペイン帝国の植民地の支配などについて話すのは 至難の業、と言うことは良く分かります。 セバスチャンは、歴史的年号・名前・権力関係、すべてを暗記で機関銃のように喋りまくります。 その知識量には、心から脱帽! しかし、事実を披露するだけでは我慢ならず、 自分がいかにスペインに植民地化された南米コロンビア人とスペイン人のあいの子で、 抑圧や偏見については実感しているか、 イカに政治的でも宗教的でも人権の抑圧は良くないか、 原理主義は歴史上どの宗教にもあって、今ISISがいろいろ問題を起こしているからと言って アラブ人全員にそのステレオタイプを押し付けるのがいかに間違っているか、などなど 私たちが質問を挟むのもはばかられる勢いで、一生懸命語り続けるのです。 セバスチャンのかわいい顔とその懸命な勢いのミスマッチは、 私のマドリッドの明るい包容力の印象と、 昨日Reina Sophia 美術館で見たピカソの『ゲルニカ』を初めとする戦争の絵とのミスマッチと […]

スペイン5日目:マドリッド史付け焼刃―強行軍突破! Read More »

スペイン4日目。スペインにどっぷり。

練習をするつもり、はあったのです。 これははっきりと言えます。 私たちはClarinetFest中のリハーサル・練習会場に行って、 受付に誰もいないので、勇気を出して暗い建物に入り、電気のスイッチを入れることまでしたのです。 その途端「ウィ~ン、ウィ~ン、ウィ~ン、ウィ~ン」と警報が鳴りだし… 走ってきた係りの人たちに身振り手振りで「練習!練習!」と言ったら 「9月1日まで閉館です。」 とスペイン語でおごそかに告げられてしまった。のです。 そうしたらもうすることは二つだけでしょう! 1.ゆっくりする。 2.スペイン文化にどっぷりはまる。 1.をまず達成すべく私たちがしたこと。 まず、カフェでゆっくり食事。 内容:絞りたてオレンジジュース。コクの深ーいコーヒー、チョコクロワッサンと、雑穀クロワッサン。 そして、果物屋で大袋1ユーロでたたき売りしていた桃一袋を買い、 約3時間かけて砂糖煮を作る。 作る過程で桃をきれいにしながら、一つ一つかじり、味比べをし、 それぞれの桃の個性の強さについて麻衣子さんと二人で話し合う。 大量に出来た砂糖煮を、パンに乗せたり、チーズと混ぜたり、ヨーグルトを乗せたりして楽しむ。 そして「音楽家である意味」とか「将来」とか非常に壮大なトピックで大学生のように熱論を交わす。 2.の『どっぷりスペイン文化』に移行したのはもうすでに夕方5時! でも大丈夫。スペインは実に、実に夜型の国なのです。 まず私たちはReina Sophiaと言う美術館に行きました。 ピカソのゲルニカを中心に、ダリ、ミロー、ゴヤと国内戦、第一次・二次世界大戦ごろの スペインの絵画を見て回り、その暗さの中にも熱情を込めた表現に圧倒されました。 そのあと、フラメンコを見に行きました。 すごい!すごい! 女の人が強い!しかも私たちが普通「ダンサー」と言ってイメージする年齢より2周り位年上の 多分50代の女性が実に力強い、ダイナミックで、太っ腹で、エネルギーが感染するような 物凄い踊りをギラギラとした集中力を持って見せてくれ、私は本当に触発されました。 自分もああ言う女性に成長したい。 フラメンコを踊ってみたい! そのリズム感、躍動感、生命力、そしてこだわり、誇り、逞しさ。 最後に行ったのは、タパス・バー。 飲み物を注文すると、飲み物に食べ物がくっついてきて、びっくりするような安さ。 そして出される小皿料理が、酢漬けや、イベリコハムなど、素朴でおいしいのです。 そしてバーテンダーのミゲルはやさしい顔をしてお客さんを見守り、 静かに確信をもって思いやりのあるサービスをさりげなくこなし、 いかにもよそ者の私たちも、絶対に疎外感を感じないように 素晴らしいタイミングでさりげなく挨拶や、小さなコメントで会話の糸口を提供し、 本当に地域に根付いた、古~きよきたまり場、という感じのところ。 私たちは二回目です。 ミゲルは私たちの最初の注文を覚えていてくれて、 「ドリンクはこれだね?」とさっと確認して出してくれます。 シードレと言う、スペイン特産のリンゴジュースを発酵させた炭酸の強い甘いアルコール。 近所の人たちも私たちをにこやかに迎えてくれます。 10席くらいしかないのですが、お互い知り合いっていう感じ。 今日は隣に座った酔っ払いのおじさんに全部おごってもらっちゃいました。 なんだか、うれしい。 スペインは、ものすごい包容力でもって、私たちを迎えてくれます。

スペイン4日目。スペインにどっぷり。 Read More »

お洒落なパリ

パリで道行く人は本当にみ~んなお洒落に見える。 何が違うんだろう、とギョロギョロヒューマン・ウォッチングした、私の結論。 お洒落=意思・意図・意識的表現としての洋服と身のこなしと身の手入れの選択の結果 簡単に言えば「こうした」がお洒落で「こうなっちゃった」が非・お洒落。 ただ、この「こうした」にどれだけ自信を持って、 その自信が表情や身のこなしや態度に表れるか、と言うのもお洒落の一部なんだと思う。 流行におどおどと付いて行っている、と言うのはだから どんなに時間・お金と神経を使っていても、究極的には「非・お洒落」。 反対に、自分は絶対着ない!と言う服でも「私はこれを良いと思っています」と言う態度が 堂々たる身のこなしに繋がって、その自信がその人をより寛容にしているなら、 その選択に私自身が感心しなくても「この人はお洒落だ」と思える。 あくまで私の意見です。 昨日、私のパリの心の友(と言うか文字通りの幼馴染で、感覚的にはちょっと妹みたいな)、 Mさんと私たちの共通テーマ、二人が会えば必ず話題に上る「女性美」の話しをしていた時。 (ちなみにMさんはお洒落な美女です)。 私は録音技術の向上が今日のピアノ演奏の画一化にいかに繋がっているか、 と言うことを、現在の(私達がいつも誤解されていると同意する)女性美に繋げてみました。 録音技術の向上によって、 市場にでる録音はすべてミスタッチが無い、非・人間的に完璧な音楽になった。 これに慣れた聴衆は生演奏でも録音に近い完璧さを演奏家に求めるようになり、 演奏家は期待に応えるべく、凄い練習と、それに耐えうる正確と、 音楽や聴衆からある程度距離を保つ冷静さを身に付けるようになり、 結果、現在の演奏家は画一化した。 1950年代より前の世代のピアニストはその音色や歌いまわしを聞けば すぐ「この人!」と分かるような特徴を強く持ったピアニストが多い。 それに反して、最近のピアニストは極端に言えば、誰が弾いても同じ。 女性美にも同じことが言えるのではないか。 美容整形や、化粧品、美容薬品の向上により、女性がどんどん「美しく」なっている。 しかし、何を基準にした「美」なのか。 韓国の最近の美人コンテストの入賞者が皆同じ顔だ、と言うことが話題になっている。 韓国ではレーザーで顔のほくろなどは全て除去するのだそうだ。 整形も、物凄い。 それが、本当に「美しい」のか。

お洒落なパリ Read More »

ミュンヘンにて

チェックインカウンターのきれいなお姉さんもびっくり! 私も考えれば考えるほど摩訶不思議。 なぜ、日本からヒューストンに行くのに、ヨーロッパ経由で、 しかもそれが一番安いチケットだったの? 何にせよ、ミュンヘンに居ます。 羽田からミュンヘン、ミュンヘンで16時間待機後、ヒューストンへ! ミュンヘンでは空港で寝て、文献や楽譜でも読むかな~と、思っていました。 私にとっても過保護な父も「危ないことはしないほうがいいよ、うん、できれば動かないで、ずっと同じところに座っていな!」と言う意味のことを一生懸命言っていましたし。 でも、着陸直後の機長からの放送で「現地の気温は25度」と聞いて、 そう言えば、ヨーロッパは結構行かせてもらっているけど、 ドイツは2002年以降じゃん、ドイツの空気吸うだけでも違うかも、 音楽家としては、やっぱりこういう見聞のチャンスは逃しちゃだめだよね! と、急遽ミュンヘンにちょっとだけミニ旅行することにしました。 5時30分の着陸後、空港内で変圧器を買ったり、色々してたらもう6時過ぎ。 そしてミュンヘン市内までは電車で48分もかかると判明。 (まあ、いいか、電車の中では文献でも読んでいよう!)と開き直っていたら、 次の駅で私の真向かいに座ったおば様がとっても人懐こそうで、 一生懸命目を合わせてくるのです。 「私はミュンヘンは初めてなのですが、ミュンヘン在住の方ですか」 と声をかけると、 「私は英語が下手なのだけれど、でもミュンヘンに住んで35年になります」 と、一生懸命ミュンヘンの見所について説明してくれました。 ベルリンに住むお孫さんを一週間預かったあと、 親元に送り返すために空港に見送りした帰りだとか。 会話をしていたら48分はあっと言う間に過ぎてしまいました。 そして、ツーリスト・インフォメーションで教えてもらったマリアン・プラッツに到着。 そしたら、おば様も一緒に降りてくるのです。 (乗り換えするのかな~)と思いつつ、一緒に歩いていたら 「夫には1時間遅れて帰ると、さっき電車の中で伝えたので、ご案内させてください」 と、色々な建物や歴史的な場所に案内してくれました。 そのご好意にびっくり! 街角では、タンゴや、音楽学生らしい4人組の四重奏や、アコーディオン2重奏など、 兎に角生の音楽がいたるところで演奏されていて、 しかも人々が立ち止まってちゃんと聞き、そして2ユーロをバンバン上げている! なかでもアコーディオンのデュオは、ヴィヴァルディの四季や バッハのトッカータとフーガのニ短調など、息がぴったりで驚異的でした。 私も4重奏とアコーディオン・デュオに2ユーロずつ上げてきました。 とっても良い思い出になりました。

ミュンヘンにて Read More »