August 2017

皆さまの心に寄り添った音楽活動とは?

US-ジャパンリーダーシッププログラムのご縁でお会いすることの出来た退蔵院副住職でいらっしゃる松山大耕さんの記事です。音楽家として、皆さまの心により寄り添った活動をするにはどうすれば良いのか試行錯誤をしている自分にはとても考えさせられる記事でした。 17年間、皆さまのご支援の基、毎年定期的に日本で演奏活動を行い色々な出会いに恵まれて来ました。癌闘病を続けながら毎年「来年もマキチャンの演奏会を聴きに来れるように頑張ります」とおっしゃってくださって遂に亡くなった方もいらっしゃいます。家族の闘病を支えながら毎年演奏会に来てくださる事を家族の恒例行事にしてくださっていたご家族が、お亡くなりにご主人や奥様と「今日はデートです」と言ってお子様と一緒にいらしてくださったケースもいくつかありました。また私が帰国の度に練習をさせていただきに伺っていたお宅のご近所で介護で苦しんでいらっしゃる方が「マキチャンの練習が始まると(良く聞こえる)お庭に出て草むしりをしながら泣いた」と教えてくださった事もありました。ただ、この方々は、私が勝手にやっていた音楽活動にありがたくも癒しや家族の絆の象徴性の様なものを見つけてくださったのであって、もっと積極的に私から癒しを提供できる活動をするためにはどうすれば良いのか。それともそんな事を考えるのはおこがましくて、私は私の芸に徹すれば良いのか? 人生半ばに差し掛かり、博士課程取得など色々な節目を迎え、これから社会度の様に社会貢献をさせて頂こうか、色々考えています。カンボジアやアフリカに音楽教育に行くなどと言うお話しも在ります。それは私の見聞を広める事には違いない。そして貢献も少しは出来るでしょう。しかし本当に遠征しなければ私の音楽や音楽観・人生観は社会貢献出来ないのか?ニーズはもっと身近なところにも沢山あるような気がします。皆さまにお考えをお聞かせ願えれば幸いです。

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MATIMAのアルバム・リリースを「スカッとスカぴあ」でラジオ放送!

FMブルー湘南で毎週土曜日の朝10時半から放送されているクラシック音楽番組「スカッとスカぴあ」。横須賀ゆかりのピアニストグループ、スカぴあメンバーが交代で担当しています。今月は私。2週目の昨日の放送では、この夏リリースされたアンサンブルMATIMA(Matima.org)のアルバム「100年:初期ベートーヴェンと晩年のブラームス」についてお話ししました。 ご購入はこちらから!CD本体をご注文いただけるほか、ダウンロードも可。サンプル音源も在ります。https://store.cdbaby.com/cd/matima 放送用の原稿です。 『横須賀ゆかりのピアニストグループ、スカぴあメンバーが送るクラシック音楽番組「スカッとスカぴあ」の時間です。今月はヒューストンからスカぴあメンバーの平田真希子がお送りします。 私はほぼ2~3年おきにソロ・アルバム・リリースすることを自分に課して来ました。そして本当にお陰様で今年の夏7枚目をリリースすることが出来ました。最新アルバムは題して「100年:初期ベートーヴェンと晩年のブラームス」。1794年に書かれたベートーヴェンのピアノ・ソナタ第一番と1895年に書かれたブラームスのピアノとクラリネットのためのソナタ作品120をおさめています。 まず最初に、今年の私が日本で6月に演奏したプログラム「『天上の音楽』vs。地上の英雄」で後半に弾いた、ベートーヴェンのソナタ、作品2-1から4楽章をお聴き頂きましょう。 (アルバム『100年』より、トラック4:5分28秒) さて、今までソロアルバムをずっと6枚録音して来た私ですが、今年のアルバムではベートーヴェンを独奏している他、ブラームスのソナタで私の2011年以降の心の友でありデュオ・パートナーであるヒューストン在住の佐々木麻衣子さんと共演しています。 私は音楽の大儀の一つにはコラボレーションと言う事があると思います。例えば私が独奏したとしても、作曲家、ピアノ製作者、会場設計家、ピアノ調律師、会場のスタッフ、企画・運営スタッフ、広報係、そして聴衆の皆さんは、その音楽会とその思い出を協力して創り上げるコラボレーターです。独奏の時は特に私は、お聴きくださっている皆さんが本当に私の音楽に乗ってくださるように、「せ~の!」と号令をかけるつもりで弾く前に息を吸い込み、会場の息の根に気を配りながら演奏しているつもりです。聴衆の方には一緒に体を揺らしてもらったり、メロディーの抑揚に合わせて心の中で一緒に歌っていただきたい。独奏の醍醐味は、聴衆と直接「コラボレート」が出来る事です。 でもやはり、気心の知れ、音楽性の合う共演者と音楽を奏でる、と言うのには独創とは違った音楽の醍醐味があります。麻衣子さんとは2011年の東日本大震災の復興支援のチャリティーコンサートで協力をしてからこっちずっと色々な形でコラボをさせていただいていますが、気が合うと言うのでしょうか?一緒に弾いているとちょっとした目線や息遣いや、フレーズの持って行き方などで相手がどうしたいか、次にどう来るか、全てテレパシーの様に分かってしまうのです。考えなくても体が一緒に弾こうとして、自然と息があってしまう感じ。まずは私と麻衣子さんの息ぴったり感をアルバムからお聴きになってみてください。ブラームス作品120の1より1楽章です。どうぞ! (アルバム『100年』よりトラック5.8分36秒) どうでしょう?ご購入されたくなったでしょう?平田真希子最新アルバムwith クラリネット奏者佐々木麻衣子。題して「100 Years: Early Beethoven and Late Brahms」by ensemble MATIMA. CDBaby.com, iTunesなどで好評発売中のほか、平田真希子のライヴ、MATIMAのライブでもお買い求めいただけます。 このベートーヴェンのピアノソナタ一番とブラームスの作品120には、1794年から1895年の101年の年月があります。これは西欧変動の100年でした。フランス革命を始め政治革命も色々あります。思想革命がフランスの啓蒙主義からドイツの観念論哲学へと進み、カントが唱えた「主観的な世界と客観的な現実」のギャップを超えるためには抽象的な美の観念が必要とされ、結果歌詞の無い器楽曲が最も抽象的な芸術として崇高されるようになります。そして産業革命が人々の生活を大きく変えていきます。最初の蒸気機関車(Steam Locomotiveの頭文字を取ってSL)が走ったのは1802年だとされています。ピアノと言う楽器もこの100年でどんどん大きく、複雑に、重厚になっていき、さらに大量生産されるようになります。そして1821年『コンポ二ウム』と言う機械が発明されます。これは初期のアルゴリズムを使って2小節を組み合わせて合計80小節の曲をその度に新しく作曲する、と言う機械です。 私たちは今どんどん発展するテクノロジーの日常介入に戸惑い、色々不安を抱えています。自ら学び、人間の指示を仰がずとも決定する力を持つAIによって私たちの生活・人生はどうかわっていくのでしょうか?その現在の私たちの不安は19世紀の人々の不安に似ているのではないか、そしてその不安の中でも音楽に正直で一生懸命な自己表現を委ねたベートーヴェンとブラームスの人類愛に、私たちは思いを重ねました。 最後にブラームスのピアノとクラリネットのためのソナタ作品120の1の最終楽章をお聴き頂きながら、今日はお別れしたいと思います。ヒューストンからスカぴあメンバーの平田真希子がお届けしました。クラリネット奏者の佐々木麻衣子さんと立ち上げたアンサンブルMATIMAと、私たちのアルバム『100年:初期ベートーヴェンと晩年のブラームス』をよろしくお願いします。 (アルバム100年:トラック8:5分29秒‐時間になったらフェードアウトしてください)」  

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原爆記念のラジオ放送…

8月5日(土)の10時半からFM湘南ブルーで放送されたクラシック音楽番組「スカッとスカぴあ」を担当していました。7月27日にUS-Japan Leadership Programの一巻として初めて広島に行っていた私は、その時の話と人間の強さと愛おしさについて話しました。 上で放送をお聴き頂けます。US-Japan Leadership中のカラオケの大音量をも制する大声で大議論を戦わせたりしていたので、声がつぶれています。 下に原稿をコピペしましたので、よろしければお読みになってください。 おはようございます。明日は原爆記念日ですね。実は私、10日前に生まれて初めて広島に行っていたんです。US-Japan Leadership Programは米日財団が自分たちのフラッグシップ・プログラムと掲げている企画で2001年に発足されました。ホームページUSJLP.orgから引用すると「次世代の日本とアメリカのリーダー達の間に、より緊密なコミュニケーション、友情と理解のネットワークを築き上げることを目的としています。」と書いてあります。パネル・ディスカッション、文化体験など本当に盛り沢山で、夜は朝まで飲み明かして議論やカラオケ。そんな1週間の中、木曜日は半日広島で過ごしたのです。アメリカ側から来ている20人の中にはオバマ政権で働いていた人達や、州知事の副内閣長官、国防長官の顧問、外交官、軍人、報道陣など色々な人が居たのですが、この人達と広島初体験を共にするのは、また非常に感慨深いものがありました。広島で私は感極まって「アメリカでは原爆投下は戦争終結のために必要だったと言う考えが主流だけれど、日本ではすでに降伏の条件に関する協議が行われていることを実はアメリカ政府は知っていて、それなのに広島と長崎と3日しか置かず、しかも都市のど真ん中に原爆を落とした!それなのにGHQのWar Guilt Information Programなどで戦後、日本人に物凄い罪悪感を植え付け、原爆の被害も出来るだけ報道しないようにした!」などとアメリカの参加者の一人で政府関係のお仕事をしている人にバーッと言ってしまいました。そしたら翌朝呼び止められて「自分は第二次世界大戦は全く専門外だし、昨日あなたに言われたことは自分の認識とは違った新しい見解だったのだけれど、あの後自分の知り合いの軍人に話しを聴き、さらに自分でリサーチをして、あなたが正しいと言う事が分かった。教えてくれてありがとう。」と言われたのです。涙が出るくらい嬉しかった。 人間と言うのは本当に強いと思います。広島はあんなにことごとく破壊されたのに、今は復興しています。被爆者の方々は体験を語られる時に本当に声を詰まらせて泣いていらしたけれど、それぞれが平和活動にそれぞれのやり方で携わり、アメリカ人をも含め世界中の人達に自分たちの体験を共有して、自分たちの痛みを未来の役に立てようとしてくださっています。またTBSアナウンサーの久保田とも子さんは広島出身でいらっしゃいますが、今回のUS-Japan Leadership Programにご参加なさっていて、広島の被爆者のお話しを語り継いでいくことの意義を熱く語ってくださいました。そしてアメリカ人と日本人は戦後72年を経て、1週間を共にした後、別れを惜しんで抱き合って泣くくらい、心を許し合う事が出来ます。このプログラム参加中、すごい経歴の政治家や科学者や軍人など歴史を直接創っていっている人達の中で自分に何が貢献できるのか、なぜピアニストの自分が選ばれたのか、不安に思う事もありました。でも自分のプレゼンの時、人類は通じ合いたいと思い続ける強さを持っている、音楽史は私たちにそういう人間の思い出させてくれると言いました。そして、右手を失って帰って来た軍人が左手のためのピアノ曲を委嘱した話しをして、左手のための曲を弾きました。そしたらみんな、総立ちで拍手をしてくれたのです。 その時に弾いたのは、私のアルバム「Chopin to Japan」に収録したスクリャービンの左手のための夜想曲、作品9-2です。この曲は右手を失った軍人が委嘱した作品ではなく、スクリャービンが学生時代練習し過ぎで右手を故障していたとき、自分で弾くために書いたものです。私のアルバムからお聴きください。 (Chopin to Japanトラック10、6分5秒)https://store.cdbaby.com/cd/makikohirata3 戦争から右手を失って帰って来て沢山の左手のためのピアノ曲を委嘱したピアニストで一番有名なのは、オーストリア人のPaul Wittgensteinです。ラヴェルやプロコフィエフ、ブリテンやヒンデミットにも左手のための協奏曲を委嘱、初演しました。その中でも一番有名なのは、ラヴェルの左手のための協奏曲でしょう。クリスティアン・ツイメルマン(ピアノ)、ブーレズの指揮、ロンドン交響楽団の演奏でお聴きしましょう。時間の都合上、途中のアレグロからお届けします。ジャズっぽいカッコいい曲です。 https://www.youtube.com/watch?v=WAXzynUA1hs(8分15秒から) 今日は明日の原爆記念日にちなんで、左手のためのピアノ曲の特集をヒューストンからスカぴあメンバー、平田真希子がお送りしました。私たちは強い。人間のサヴァイヴァル精神、そして何があってもコミュニケートしたいと思う人間の愛おしさ。私はそんなものを左手のためのピアノ曲に見ます。そして、原爆記念日に心を込めて世界平和を願いながら、これらの曲を捧げたいと思います。      

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遅ればせながら...6月3日にラジオ放送された原稿です。

横須賀ゆかりのピアニストグループ、『スカぴあ』の創始者メンバーとして2011年に活動を始めた。 日本での演奏活動をずっと共催してくださっていた「世界で活躍する音楽家を応援する会」が横須賀拠点と言うだけの、メンバーの中でも一人だけ横須賀出身で無い、しかも在外の、お味噌の様な存在の私。 でも色々一緒に仲間としてやってきた。 その活動の一部。 FMブルー湘南78.5MHzで毎週土曜日朝10時半から放映されているクラッシック音楽番組『スカッとスカぴあ』。6月3日に私の日本での演奏活動の宣伝も兼ねて、出演させていただきました。その時書き起こした原稿をここに今日は挙げさせていただきます。 ちなみにこの番組、世界中どこからでもインターネットを通じてお聴きいただけます。リアルタイムのみですが。私は今月、8月の土曜日4回も担当です。放送終わったら原稿アップして行きますが、お聴きいただければ一番うれしいです。このURLでお聴きいただけます。 http://www.jcbasimul.com/?radio=yokosukafm それでは、6月3日放送された原稿をコピペ! ヒューストンのスカぴあメンバー、平田真希子です。先月、沢山の方々の様々なご支援の基、お陰様で遂に博士課程を取得し、さて、これから何を?と言う近況報告からまず今日は始めさせていただきたいと思います。私は今、二つの大きな目標に向かって歩み始めました。一つは、世界平和につながるような音楽活動をしたい、と言う目標です。音楽は想像力を刺激します。遠い昔のヨーロッパのベートーヴェン、ショパンがどのような社会背景、どのような心理で曲を書いたのか、思いを馳せるとき、共感する、と言う私たちの能力が増長される、と思います。この想像力と共感への欲求が、私たちをお互い助け合う、相手の痛みや苦しみに手を差し伸べられる、人間らしさを強めてくれる、と言う信念の基、これから色々活動を展開して行きたい、と思っています。その皮切りに、私は今年の夏から米日財団が一番力を入れて運営しているUS-ジャパン・リーダーシッププログラムに参加いたします。日本から20人、アメリカから20人選ばれた様々な分野の代表たちが2年間にわたり一週間ずつ今年は日本、来年はシアトルで集まって、世界情勢や社会問題などについて協議し、文化交流を行い、友情を育んで将来の国際関係を改善して行くことを目的としたプログラムです。過去にはヴァイオリニストのみどりや、オリンピック選手の有森裕子さんなどもご参加なさったプログラムです。もう一つは、音楽の効用と言う物を科学的に立証するためのリサーチに、音楽家として携わって貢献したい、と言う事です。最近、脳神経科学の世界では、音楽家の脳と非音楽家の脳に違いがあることが注目されているそうです。また、医療現場に芸術を起用することで、医療効果が高まる、と言う事を受け、アメリカの国立保健機構では新しく「芸術と医療」と言う分野を設けました。私はこの5月から、ヒューストンにあるCenter for Performing Arts Medicineでコンサルタントと言う役書きをもらい、自分の脳のfMRIイメージを提供したり、どのような音楽が脳のどの部分にどのような影響を与えているか研究している方に、音楽の基礎知識を教えて差し上げたりしています。 そんな中、来週からまた、今年17年目になる日本での演奏活動を行わせていただくために、来日いたします。6月17日(土)に13時半開演で品川きゅりあんでさせていただく演奏会を中心に、様々な場所で7回演奏させていただきます。詳しくはMusicalmakiko.comをご覧ください。今年はいつもにも増して、思い入れが強い帰国です。選曲にも、私の修行や考察の結果を反映させてみました。題して「天上の音楽 vs. 地上の英雄」。前半が天上の音楽、ゴールドベルグ変奏曲です。なぜ、天上の音楽イコール地上の英雄かと言うと、ゴールドベルグ変奏曲が、古代ギリシャの「音楽は天上を体現している。惑星が天上で動き回る時に醸し出す、私たちには聞こえないその音が究極の音楽だ」と言う考えを受けて、バッハの数字学や宗教観を非常に投影させて書いた曲だからです。後半の「地上の英雄」では、思想・工業・社会革命などを経て、数字や宗教などと言ったものに絶対的な真実を求めるのをやめ、代わりに主観が大事になった時代、活躍したベートーヴェン、ショパン、そしてリストの特に英雄をテーマにした曲を集めて、歴史考察を試みます。 私の選曲からまず、オープニングだけ、味見的にお聴き頂きましょう。まず、「天上の音楽」、ゴールドベルグ変奏曲のアリアです。グレングールドの1955年の録音からお聴きください。https://www.youtube.com/watch?v=Ah392lnFHxM (0:51、前半の終わりまで) 対称性、バランス、等と言ったものが重視された、美しい曲ですよね。実はこのアリアの中には30の物凄い変奏を可能にする種が沢山潜んでいるのですが、そんな事はおくびにも出さず、あくまでも平穏に響く、広く愛される有名なアリアですよね。 次にベートーヴェンのソナタ第一番をお聴き頂きましょう。1794年の作品です。この時代にはすでに啓蒙主義が浸透し、個人の思想や感情と言ったものが重視されています。感情の方が知性よりもより道徳的である、とするセンチメンタリズムなどを受け、疾風怒濤と言う、美しさよりも劇的さを好む動きが、音楽や文学などに見られるようになって来ています。リヒテルの1976年の演奏です。https://www.youtube.com/watch?v=X4KGTrk9ah4 (0:55まで) 音域、強弱の幅、音の長短、静寂の音楽的使い方と言ったものがバッハのアリアよりもずっと劇的ですよね。後半では、ベートーヴェン、ショパン、リストと進むにつれ、この傾向がどんどん強くなっていくのがお聴きいただけると思います。これには美的感覚の変化だけでなく、工業革命を受け、ピアノの急激な品質改良がおこなわれた、と言う事も反映されています。さらに、資本主義的な経済になり、音楽や演奏会が商品化されて、演奏会場がどんどん大きくなり、一つの演奏会の聴衆の数がずっと増え、そのために音量も劇的要素も市場のニーズに応えて大きくなっていったのです。 その傾向を次にショパンとリストで比べてみましょう。まず、こちらも有名!ショパンの英雄ポロネーズです。キーシンの演奏です。https://www.youtube.com/watch?v=Ac1qWwc0pG0 (1:06まで) このオープニング、ドラマチックですよね。聴衆の期待をあおるような、(これから何が起こるんだ…!)とワクワクさせてくれるようなちょっとミステリアスで緊張感のあるオープニングです。 そしてさらにドラマチックなオープニングがこちら。リストのメフィスト・ワルツの一番です。この曲はドイツの悪魔伝説に基づいたレーナウの詩を基に作曲されています。リストの描写です。悪魔メフィストフェレスと、悪魔を呼んでしまった主人公ファウストがあるいていると村の宿場で結婚式が進行中。メフィストは音楽家からヴァイオリンを奪い取ると、魅惑的な音楽を奏で始める。ファウストは、メフィストの奏でる音楽をほれ薬にして村の美人を踊りへと誘い出す。」と言う事です。まず、オープニングの数秒だけ、お聴きください。https://www.youtube.com/watch?v=o59zEOq1uBY (最初の16秒のみ) こちらも劇的ですよね。これ、何を表現しているか、お分かりになりますか? https://www.youtube.com/watch?v=KfSH1ezevjM (0:02から0:16まで) メフィスト・ワルツのオープニングはメフィストが調弦をしているところから始まっているんですね。実ににくい演出ではありませんか?   このメフィスト・ワルツ一番はオーケストラ版とピアノ版がほぼ同時に作曲されました。ピアニストが英雄視され、崇拝された理由の一つには、この個人主義の時代に於いて、一人でオケと同じ音楽が演奏できる、と言う事もあったのです。では、メフィスト・ワルツ、今日はオケ・バージョンでお楽しみいただきましょう。ストコスキー指揮、ロンドン交響楽団の演奏です。https://www.youtube.com/watch?v=RUyAkl_x_i4 (時間が許す限り。) 今日の『スカッとスカぴあ』はヒューストンから平田真希子がお届けしました。来週から来日して6月17日品川きゅりあんで13時半開演の演奏会を中心に、3週間で7回演奏いたします。詳しくはホームページ、Musicalmakiko.comにてご覧になってください。日本での再会を楽しみにしています。

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