ワーグナーがユダヤ人だった!?

ヒトラーにユダヤ人の血が流れていたかも知れないと言う説は
手塚治虫の「アドルフに告ぐ」などでも扱われ、割りと良く知られていると思う。
でも、ワーグナーがユダヤ人だったと言う説は、
少なくとも私は今日知り、驚愕している。
なぜ私がこの説に今日行きついたのか?
またまた、博士論文のリサーチのためである。
女性が暗譜と言う演奏様式に貢献した、と言う有力な説に関するリサーチはすでに
一月17日付けの「女流ピアニストの進出がピアノ演奏様式を変えた!?」で書いているので
ここでは割愛しますが、
実はエキゾチシズムで憧憬の対象になったのは他にもジプシーやユダヤ人などが居て、
それぞれ全く違った形で暗譜と言う演奏様式の確立に貢献しているようなのです。
ジプシーは文盲に固執することに於いては文字も音楽も同じで、
しかしその即興演奏はリストやブラームスを魅了しています。
その楽譜を使わない「自由」で「自然」な奏法が
特にリストの暗譜奏法につながったとする説はAlan Walkerなどが唱えています。
ユダヤ人は女性と同じく、ヨーロッパの白人男性社会に受け入れられたく、
しかしその社会的抑圧からコンプレックスがあり、その中で溶け込もうとする努力もあり、
秀でてくる音楽家が多くありました。
例えば、一番有名なのはメンデルスゾーン、オペラ作曲家のマイヤービア、
ブラームスと共演したヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒム、
ピアニストのアントン・ルービンスタイン、モシュレス、タウジッグ、などなど。
これ等ユダヤ人作曲家が一般的に比較的保守的で、
ユダヤ人奏者が皆過去の偉大な作曲家のリヴァイバルに務める傾向が強かったのを
その人種・文化的コンプレックスに理由づけするのは無理でしょうか?
そして、女性と同じく、彼らがバッハ・モーツァルト・ベートーヴェンと言った
過去の巨人たちを暗譜で演奏する傾向が強かったのは、
女性と同じく、自分たちの能力を認めさせたいと言う事の現れのほかに
もう一つ、ユダヤ人の文化と言うのがあったようです。
色々な土地を追われ、迫害の歴史が長いユダヤ人の文化では
自分たちの聖書を焼かれるなどの迫害の被害にある事も多く、
その為「記憶する」と言う行為が特に強調されていたのです。
この事に目を付けていた私がNYでその話をしていたら、
最近「Wagner’s Jews」と言う題でドキュメンタリーを製作した学者にあった、と言う人が
紹介をしてくれました。
Wagnerは歴史に名を残すユダヤ人嫌いで、
ヒトラーはワーグナーとワーグナーの音楽をプロパガンダに利用しました。
その為イスラエルではワーグナーの音楽上演が禁じられているほどです。
しかし、このドキュメンタリーではワーグナーが生涯を通して
親しく付き合った音楽家の多くがユダヤ人で、
これらユダヤ人音楽家はワーグナーを崇拝していた、と言う
一般的歴史的見解とは異なる史実に焦点が当てられています。
こちらで予告編が見られます(英語です)。

この人とメールのやり取りをして、この人のプロジェクトに興味を持った私が
この人の文献を読み進めていると、驚愕する学説に出会ったのです。
「ワーグナーの反ユダヤ主義は、
ワーグナーが自分がユダヤ人かも知れない事実を全力で否定する必要があったからだ。」

詳しくはこちらでお読みいただけます。
WAS WAGNER JEWISH?~An old question newly revisited. BY DEREK STRAHAN
http://www.revolve.com.au/polemic/wagner.html
かいつまんで言うと、要するにワーグナーの父方の血筋がはっきりしない、と言うこと。
この説はかなり昔からあったようです。
歴史と言うのは、いつまでたっても絶対的な答えが無いから、
はまるとどこまでも深堀できますね。
しかし、選んで掘らないと論文が進まない!

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