環境問題や経済格差などの損失と将来への不安が高まるにつれ、現在の価値観や社会構造、そして近代史で優勢を誇って来た西欧文化を見直す動きが強くなっています。そんな中、古来からの世界各地の土着文化の宗教や価値観や言い伝えなどに、これからの人間の在り方へのヒントを見出したいと多くの人が希望を託すのは、自然なのかも知れません。
先週の金曜日から日曜日まで、2泊3日でアマゾンに伝わる秘儀を体験する為に家から車で3時間ほどの砂漠に行っていました。
「生きとし生けるもの全てとの一体感」「体中に愛情が満ち足りる」「計り知れない大きな存在の実感と自分はその微小な一部だという確信」…こういう感覚を得られるとする修行や儀式は古来から沢山あると思います。例えば「悟り」とか「涅槃(ニルヴァーナ)」というのはこれではないでしょうか。ショーペンハウアーは「抽象的な美的体験(例えば言葉(歌詞など)を伴わない楽曲)で主観と客観の間の溝を超越し真実を垣間見る事ができる」と言う意味の事を書いていますが、これもそれに近い気がします。
今回私が参加する秘儀はかなりの苦行だ、ということは前から読み知って覚悟していました。この秘儀を体験する為に南米まで行って1~2週間滞在する人も多い中、今回私が参加したのは近所でお手頃・手短かな、言ってしまえば簡略バージョン。それを補う意味も兼ねて、参加登録をした段階で色々と細かい生活指導が送られてきました。
生活面では、毎晩7∼8時間以上の睡眠;毎日2~4リットルの補水;日光にあたる事;適度な運動;感情的な刺激の強い状況や情報を避ける;精神安定のためにヨーガや瞑想や内省的な日記や家族との時間などの時間を多くとる、など。まあ、これは演奏会に向けてのコンディショニングとあまり大きく変わりません。
食事面では、カフェインやアルコールやたばこ類や白砂糖は2週間前から一切禁止。発酵食品や保存食(お酢などの調味料も含む)、肉類(鳥と魚介はOK)、熟し過ぎた果物や乾燥果物、強い香辛料も避けます。
儀式の3日前からは塩・SNS・性行為などの、刺激あるもの全てがNGになります。儀式前日からは柑橘類もダメ(それまではレモン汁かけて色々食べていたのですが)。そして儀式開始の4時間前からは絶食です。
ここまで徹底した食事制限は生れて初めてでした。勿論自己責任なのですが、毒食わば皿まで。私もそれなりの期待と覚悟を持って参加を決めているので、サボタージュはできません。野の君は「いつお寿司食べられる?」「いつ辛い中華食べに行く?飲茶は?」と時々聞きます。が、野の君自身お仕事のお付き合いで適当に外食もあり。お家ご飯の際は私が塩なしで料理した物に好きな調味料をかけたり、自分でおうどんを作ったりして美味しく食べてくれています。私は醤油が禁止リストに入っていたので、野の君が作ったうどんの汁の匂いがたまりません!朝の野村チン特製あわあわコーヒーも香りだけ一生懸命楽しみます。「鼻からすでにコーヒー分子が体内に入っているよ。」と野の君にからかわれます。
秘儀そのものについては敢えてここでは書きませんが、この食事制限を経て私たち現代人の食生活にいかに扇動的な刺激物が多いか改めて気が付きました。これだけでも大きな発見でした。
秘儀から帰宅した後も10日間は、この食事制限を続ける事になっています。(発酵食品と塩と柑橘類は解禁。)私は結構この食事制限は半永久的に続けても良いかな~、と思い始めています。食事制限を始めた瞬間に思いがけずストンと1キロ減った体重が全然ぶれなくキープしている。体の調子も良い。刺激物が少ないと食べ過ぎない。そして何だか自分がどっしり落ち着いてきた感がある。大人っぽくなったと言うか。
でもでも...私がこの秘儀に参加した理由の一つには、儀式という物の社会とか人間関係に於ける役割とか効果に一般的に興味がある、という事もあります。そして社交で飲むコーヒーやお酒、そして絶対食べ過ぎる会食という物にも、多いに儀式的要素があると思うのです。
明日は秘儀の食事制限に従い始めてから初めての会食。今週金曜日は協議会に参加(食事つき。多分甘い物も辛い物も沢山。)土曜日は同僚の昇進祝賀会。そして1週間後には同僚グループとの飲茶パーティー。
いやはや...