音楽ずくしのお年越し

2016年、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

日本のおせちや家族も恋しいですが、NYで迎える新年もまた中々の物です。
今日は今年の私の年越しのご報告を。
大晦日に大抵毎年参加している演奏・パーティーがあります。
NYの付近でも特に歴史ある大きな邸宅が立ち並ぶ物静かな一角にたたずむお宅で
家庭の伝統として31年間続いているパーティーに毎回呼んでいただいているのです。
一昨年亡くなられたご主人は1940年代来のRadio Cityのオケのヴァイオリン奏者で、
トスカニーニやフルトヴェングラーなど、歴代の指揮者の元で演奏された方でした。
娘さんはチェロ、息子さんはヴィオラをそれぞれジュリアードでお勉強なさったのですが、
今では獣医さんと金融関係で活躍なさっていて、楽器演奏は趣味です。
奥様は腎臓を専門とされるこれも素晴らしい現役のお医者さまであられます。
私が最初に参加させていただいたのは多分2001年とかそれくらいだったと思います。
始めはジュリアードのアルバイト広告の公募に応募しただけでした。
その頃はご主人のお知り合いの、NYの音楽史をのまま生きられたような
ツワモノの音楽家が沢山参加して、若造の私には信じられないようなお話しを沢山聞ける
凄い機会でした。
改築する前のカーネギーホールの音響がいかに素晴らしかったか、とか
この指揮者の逸話、あのソプラノ歌手のリハーサル風景とか、
凄い話をポンポンしてくれるのです。
でも、これらの方々がどんどんお年を召されて、亡くなられ、
奏者が段々若手に乗り替わる、その移行の時期の最初から参加させていただいている私は
いつか、家族の伝統の名誉会員に昇格されていました。
ありがたい事です。
毎年絶対弾くのは、ブランデンブルグ協奏曲の5番。
ハープシコードのソロが延々と続く、あれです。
私が弾くのはベッヒシュタインですが。
そして3番もやります。
バッハのヴァイオリン・ダブルコンチェルトもあります。
それからモーツァルトのクラリネット五重奏とか、
私もソロを披露させていただきます。
エロイカ・トリオのヴァイオリン奏者や、
クアトロ・タンゴと言う四重奏とか、
面白い活動をしている奏者が沢山呼ばれていて、
順番に演奏を披露していきます。
今年は麻衣子さんとブラームスのソナタを弾きました。
11時ごろ、演奏をいったん中断して、奥様の手料理とデザートをごちそうになり、
シャンペンで年越しを祝います。
音楽家とは思えないほどの騒音とキスの嵐になります。
年が明けたらまた、皆演奏続行です。
今年は2時半まで弾きました。
15年間やらせていただいて、
中には(毎年ほぼ同じメンバーで同じ曲目で、進展がない)
と、ありがたみを感じなかった年もあります。
でも今年は、その毎年同じことをやると言う、その意義を特に実感した年でした。
最初の参加者の多くは亡く成られました。
学生として参加を始めた奏者の中には結婚・出産・離婚を経たメンバーも居ます。
その子たちが赤ちゃんからどんどん成長するのも一年ごとに見られます。
健康を損ねたり、回復したり、
お付き合いしている人が毎年代わる人も居ます。
そんな中で毎年、一緒に同じ曲を演奏して、
行く年を思い、来る年を想う。
お腹の時に居るときから知っている、今年4歳の男の子が
「I love you」と言ってほっぺにキスしてギュッとしてくれました。
その子を愛おしいと思うのと同じくらい、
この会を、ご主人亡きあとも継続する奥様、そしてその娘さん息子さん、
そして毎年必ず参加をする奏者のみんなを愛おしい、ありがたい、と思いました。
去年は婚約発表をしたばかりで、皆に最高の祝福をもらっていました。
今年は明らかに私は婚約を解消していたのだけれど、
その事については誰も何も触れず、
いつもと同じようにハグをして、私の演奏を褒め、
共演を楽しんでくれます。

元旦は別の、演奏パーティーに行きました。
音楽家で無い友達にこのパーティーがどういうパーティーか説明するのに
こういう風に言いました。
「ダンスパーティーで、一緒にダンスしたい人を誘ってフロアでダンスするように
演奏パーティーではアマチュアとプロが入り混じって楽器を持って立っていて、
お互い『次はブラームスの五重奏を一緒にやりませんか』とか言って
フロアが空き次第、セットアップをして弾き始める。
フロアの周りには聴衆用の椅子とかが一杯在って、
食べ物とか飲み物とかもたっぷりあって、
皆、自分が弾いていないときは小声で会話したり、
演奏が良ければ皆身を乗り出して聞いて、盛大な拍手を送ったり、
思いがけないミスがあれば皆で大声で笑ったりする」
こういう会はNYでは私は結構良く知っていて参加したり招待されたりしますが、
ヒューストンや日本でも出来ないかな~、と麻衣子さんと話しをしました。
今年も幸先が良いです‼!
2016年もよろしくお願いいたします。

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