音楽産業を経済学で解く!

 

 

昨日・今日と、学会に出席していました。 Music Industry Research Association(音楽産業リサーチ協会)主催の学会です。主に経済学者がデータ解析で音楽産業の傾向や将来、問題と問題の解決法などを協議する学会でした。面白かった!

今回の学会のラインアップはここで見れます。https://themira.org/2018-program

MIRAのHPはここ:https://themira.org/

RIAA(Recording Industry Association of America)の弁護士とかデータ分析の人とかNEA(National Endowment of Art)のデータ分析の人とか、プリンストンの教授、オバマ婦人の首席補佐官だった人(ミシェルオバマは男女平等やアメリカの子供の肥満問題など、色々活動的だったので)など、ものすごい人たちが次々と発表しました。

例えばこんなデータ。

アメリカ人一般で職場人種差別を受けたことがある、と答える人は男性が16.9%、女性が11.1%。ところが、アメリカで音楽家として生計を立てている人(内、クラシックは約35%)に同じ質問をすると、男性が24.4%、女性が26%と一気に増えます。さらに同じグループの一般人にセクハラを受けたことがあると答える人は男性が11%、女性が42%。そして音楽家のグループでセクハラを受けたことがあると答える人は男性が16.8%、女性が67.1%!

このデータが発表されたときは、「このまま自分の本に使える!」と非常に嬉しくなりました。それに、自分が主張しようと勇気を出して頑張っていることが、自分の妄想ではなかった、と言う確認が取れたような気持ちにもなりました。

性差別、そしてセクハラ問題と言うのは、特に音楽産業に多いと言うのは私の主観ではなかった!

 

しかし、なぜこうなるのか。なぜ音楽にセクハラ・パワハラは多いのか?

一つに、音楽産業ではギグ・エコノミー(英語ではGig culture::単発や短期の仕事を受注してフリーランスする労働形態)が蔓延している。こういうやり方だと、人事部のように働き手の保安を組織的に管理できない。したがってギグをする働き手は弱い立場に置かれる。

もう一つは、音楽産業では夜遅く仕事をすることが必然。そうするとお酒や、時には麻薬などの使用も多くなる。そういう付き合いが悪いと仕事がゲットできない、と言う現状がある一方、お酒などが入るとセクハラの被害に会う確率が増えると言う現状もある。

そして最後に、産業内では権力を持つ立場ほど男性が多くなる。女性は立場が弱いフリーランス演奏家として仕事をしていることが多い。権力が大きくなる立場(例えば指揮者や作曲家やマネージャーやプロデューサー)ほど女性が少なくなる、とかいろいろ面白いデータが次々と出てきました。男女比がここまで極端な産業は、今の世の中では珍しいそうです。

セクハラではないけれど、音楽産業のパワハラを描いた「Whiplash(邦題「セッション」)と言う映画。いつも音楽でのセクハラ・パワハラ問題を考える時に思い出してしまいます。

 

他に「著作権侵害の経済的ダメージ」とか、「ダフ屋はなぜ儲かるのか?」とか、「ストリーミングの経済的影響」など、データ分析を使った発表が多かった。

色々面白いことが沢山あったのだけれど、いくつか箇条書き。

1.クラシックはかなり例外扱い。でも経済的貢献はクラシックは非常に大きい。

2.ポップスのスターはクラシックよりもずっと儲かってるんだろうと思っていたけれど、そうでも無いらしい。Anthony Improgoと言う人がびっくりするくらいオープンにどれくらい儲かっているか話してくれた。この人はソチオリンピックのテーマ曲とか、テレビシリーズのテーマソングとかも作曲した人だけれど、広報担当の人とかマネージャーとかレコードレーベルとかいろいろなところに搾取されて、手取りは非常に少ない。面白い。

3.テクノロジーに進化が音楽産業にもたらす影響は経済だけにとどまらず、計り知れない大きさ。もっとテクノロジーがこれからどういう風に発展するのかを見極めて、自分の活動の将来性を上手く計算しなければ。ストリーミングと言うものをもっと勉強しなければいけない。

そして、色々面白い人に沢山会いました。ごはんもなかなか美味しかった!

 

 

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