「ピアノに聴く水」参上!

これから半年ほど、水をテーマにしたピアノ曲を比較検討するピアノトーク『ピアノに聴く水』をお届けに世界各地に参上します!

ご用意した曲を下に、年代順に書き出してみました。全部弾いて、休憩を挟む通常のリサイタルプログラム程度です。トークを挟むとちょっと長め。サロンなど、お気軽な一時間プログラムでは、レストランのメニューの様にお好きな曲をお選びいただけたら嬉しいな、と思ってご用意しています。まだまだ旅行先各地で空き日があります。ホームコンサート、出張コンサート、誰かへのプレゼント...ピアノとスペースさえあれば、お値段や日時など、なんでもご相談を承ります。お蔭様で19年目になる日本での夏の演奏活動は今年は7月中旬から8月中旬を予定しています。(演奏日程はHPトップページをスクロールダウンしてご覧ください。)

水をテーマにしたピアノ曲って実に多いんです!あんまり多いので(そう言えば体重の3分の2が水だったよね~)とか、(生命の始まりは水中からだったよね~)とか、そういう壮大な所まで想いが走ってしまうくらい。その膨大のリストからえりすぐった曲を準備した、私の「ピアノに聴く水」。

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ルドヴィグ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)

ソナタ14番作品27-2嬰ハ短調(1801)より一楽章「月光」(6分半)

『月光』は直接は水には関係ありませんが、ベートーヴェンの死後この曲を聴いた詩人の「湖に映る月」と言う描写が有名になって、このタイトルが有名になったことから今回はこのメニューに加えました。

フランツ・シューベルト(1797-1828)

リスト編曲(2版目:1844)「ます(1817)」(4分)

あまりにも有名なこの歌曲はシューベルト自身がピアノ五重奏の変奏曲のテーマにもしていますし、子供たちも童謡のように元気よく歌っているようです!19歳のシューベルトの無邪気ないたずら心を反映してるような曲です。ドイツ語の歌詞とその邦訳はこちらでご覧いただけます。ドイツ語版「およげ!たいやきくん!」

リスト編曲(1876)「水の上に歌う(1823)」(4分半)

ゆったりとした水の流れを思わせる6拍子の伴奏と、水面を踊る光を思わせる装飾音が、切ないメロディーを囲んでいる曲です。この作曲の数か月前に梅毒の死刑宣告を受けていたシューベルト。ますとは全く別人の様です。この歌詞の邦訳はこちらでご覧いただけます。

フレデリック・ショパン(1810-1849)

前奏曲集作品28(1839)より『Raindrop(雨だれ)』

『雨だれ』はどっち?4番ホ短調(2分30秒) vs. 15番変ニ長調(6分)
激しい雨の中、出先から帰って来た恋人を迎えたショパンは「ああ、君はもう死んでいるかと思っていた。溺れる夢を見た。胸を水滴が叩き続けるんだ…」。口走りながら作曲中の前奏曲を夢中で弾いていた、と逸話があります。一般的にこの時ショパンが弾いていたのは15番だろうと言うことで、15番が「雨だれ」の通称で知られています。が、実はこの時にショパンが弾いていたのは4番だったかも知れない、と言う説もあるのです。確かにどちらの曲もポツポツと言う単調な雨だれの音がします。

『Barcarolle(舟歌)』作品60(1846)嬰ホ長調。(9分)

ヴェニスのゴンドラ漕ぎ歌の歌をイメージした楽曲が一つのジャンルになっています。実に「舟歌」だけで一つの演奏会の特集が組めるくらい。その中でもショパンの「舟歌」は有名。ゆったりと漕がれていると高揚感が募ってきます。

フランツ・リスト(1811-1886)

巡礼の年第三年より「エステ荘の噴水」(1877)(8分)

晩年のリストの代表作です。水の動きを描写する音型が後にドビュッシーやラヴェルと言ったフランス印象派作曲家たちに多大な影響を与えました。若いころはロックスター的な人気とモテっぷりで一世を風靡したリストですが、晩年は僧侶になりました。この曲の144小節目には聖書の中のイエスの言葉がラテン語で引用されています。 「私が与える水はその人の内で泉となり、永遠の命にいたる水が湧きあがるであろう」(『ヨハネ伝』第4章第14節)

ピョートル・チャイコフスキー(1840-1893)

『Seasons(四季)』作品37(1876)より「6月:舟歌」(5分)

沢山の作曲家が「舟歌」を書いていますが、チャイコフスキーの舟歌は、リヒテルなどが好んでアンコールに弾いた哀歌です。ショパンの舟歌とはずいぶんと調子が違います。プレシチェーエフの詩の一節がこの曲のタイトルの下に記されています。「浜辺に行こう:波が足をキスしてくれるだろう。不思議な悲しみを持って、星が我々を照らすだろう。

クロード・ドビュッシー(1862-1918)

「ベルガマスク組曲」(1905)より「月の光」(6分)

中間部が「水面に映る月」と言う解釈が一般的なため、このメニューに加えました。ヴェルレーヌの同名の詩に着想を得て書かれた曲です。

「映像」第二巻(1907)より2番「黄金の魚」(4分)

ドビュッシーは大の愛日家。浮世絵や日本の工芸品のコレクターでした。彼の机の上に飾ってあった池に泳ぐ鯉を描いた塗り物に触発された曲です。水を飛び散らしながら生き生きと泳ぎ回る鯉を彷彿とさせます。

前奏曲第一集(1910)より10番「沈める寺」(6分)

動く水を描写するのはピアノ技法を使って色々できますが、この曲がすごいのは鏡の様に静まった水の世界を醸し出していることです。海底に沈む伝説の都市「イス」が、澄んだ朝に限って一時水面に姿を現す...その時に聞こえてくるイスの鐘の音や聖歌の歌声などが、だんだんと近づき、そして遠のいていく様を音で描写した曲です。

前奏曲第二集(1913)より12番「花火」(5分)

この曲だけが水に関係ありません。この曲は「黄金の魚」とペアにして、お客様に、どっちが魚の飛び散らす水でどっちが夜空に光る花火か、当てて頂こう!と言う趣向です。

モーリス・ラヴェル(1875-1937)

『水の戯れ』(1901)(6分)

Jeaux d’eauと言う原題は確かに直訳すれば「水の遊び(あるいはゲーム)」なのですが、これは通常「噴水」を意味します。現にリストの「エステ荘の噴水」も原題は「Jeux d’eau villa d’este」。これを「水の戯れ」と敢えて邦訳した人はこの曲の事をとても好きだったのだと思います。ラヴェルはこの曲の原本に詩人、アンリ・ド・リニエの「水にくすぐられて笑う川の神様」と言う一節を引用して書き加えています。

組曲「鏡」(1905)より『Une barque sur l’océan(海原の小舟)』(7分)

「水の戯れ」よりもずっと大きく水を捉えた曲。比較検討をすると面白いです。

フェデリコ・モンポ―(1893-1987)

前奏曲集(1943)より8番『一滴の水について』(3分)

水滴が水面に波紋を広げ、そして蒸発して、また降りてくる...水の輪廻転生を描いたような不思議な曲です。(この曲の公共演奏は著作権料がかかります)

番外:連弾 べドルジハ・スメタナ(1824-1884)

「わが祖国」より『モルダウ』(1874)(12分)

故郷のチェコを交響詩で描写しようとした組曲の中であまりにも有名。モルダウ川がその川辺のさまざまな場面を捉えながら流れていく。
(この曲は下のパートを弾けるピアニストがもう一人必要です。)

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