あと一時間で本番なのだけれど、どうしても書き留めておきたい発見。
この前の「安定は静止にはあらず」というのと関係しているのだけれど、私は今まで一瞬一瞬を完璧にすることに力を込め過ぎていた。ダンサーが一つ一つのポーズを完成する事に一生懸命になって振りの流れの中でのポーズの意味まで頭が回らない感じ。シェフがそれぞれの野菜の形を完璧にすることに没頭して、その野菜がレシピの中で果たす役割を忘れてしまう感じ。
大事なのは流れなのだ。積み重ね。経過。時。
恩師の伊藤恵美子先生に何度も言われた。「余力をいつも残して弾くという事を覚えなさい。精一杯は美しくない。」
一つ一つの音、和音、旋律に全てを賭けては、持続不可になる。
別の恩師のJeffrey Swannに、本番で滑った後落ち込んでいたら言われた。「人生の中で一つの演奏会は、通過点に過ぎない。」
一回一回の演奏会に一生懸命になったら成長が無い。
これが一皮剥けるという事なのかなあ。
流れる。委ねる。たゆむ。許す。
今夜は本番ですが、これも流れの内。さて、着替えて化粧して、行きますか。
お疲れ様です。
観客は、芸術に悩む演奏家は観たくありません。
プロならば当然なことだからです。
観客は、すべてが光彩を放つ演奏を期待しいます。。
生々しい演奏によって、共感し、喝采し、涙するのです。
小川久男