今日のブログは日刊サンに連載させて頂いて3年目になる私のコラム「ピアノの道」の10月2日発表の記事を基にしています。
私は演奏中、目をつぶる事が多いです。歴史上盲目のピアニストが多い事からも分かるように、ピアノを弾くのに視覚はあまり必要ではありません。ジャンプがある時、着陸点を見据えたりしますが、稀です。質より量の練習をする時は楽譜立てに雑誌を置いて練習したりもします。(内緒です。)
今我が家のピアノの楽譜立てには5枚の、雲中供養菩薩の絵ハガキが置いてあります。先月和歌山県に4日間の弾丸出張をした際、帰りに京都にある平等院に足をのばし、すっかり魅せられてしまったのです。
平等院に52躯ある雲に乗った菩薩像。内27躯が笛・琴・鼓などの楽器を演奏しています。余韻に聴き入っていたり、実は凄く楽しいのがかすかな笑みににじみ出ていたり、次の音に集中しきっていたり...その演奏が聴こえてくるような菩薩像が映る5枚を厳選しました。眺めながら練習していると、自分の音楽家としての理想が体現されている様に思えてきます。皆、実に平穏で、自然体で、気楽で、当たり前のように慈愛に満ちています。雄たけびを上げながら我武者羅に切り開いてきたようにも思える今までの自分の音楽人生を笑いたくなります。(何を血迷っていたんだろう。やっとわかったよ。これだよ、これ。)そんな気持ちです。
パキスタン国土の三分の一が浸水した洪水。一方、世界各地で大河が干上がって水力発電や物流に支障。ウクライナ・アフガニスタン・シリア・イエメン・エチオピア・ロヒンギャ族・ウイグル族…悲惨な状況が世界各地で増えています。音楽の効用を謳いながら一体私は誰の役に立っているのだ…苛立つ気持ちの中で出会った菩薩たちに、私は息を吹き込まれ、肩の力が抜けた気がしたのです。
この記事の英訳はこちらでご覧いただけます。https://musicalmakiko.com/en/healing-power-of-music/2750
お疲れ様です。
次々と新鮮な主題が現れて。
ドクターピアニストの次の展開は如何に?
とは言え、劇的な変化はなくとも曲想は何気に変わります。
小川久男