異国での生活は様々な挑戦や困難に直面します。そんな中コロナ禍で里帰りが難しくなった在米日本人は、いつもにも増して持ちつ持たれつして、結束を深めました。ヒューストン日本人会(Japanese Association of Greater Houston:JAGH)も日本飲食店の経営サポートの為に、会員がズーム越しに一緒に発注したお弁当を食べる会などを企画して積極的にサポートをしていました。私もまだ生演奏や演奏旅行が不可能な時、JAGH主催のオンライン・コンサートをさせて頂きました。
題して「現場医師のコロナ最前線情報と日本人芸術家の復活公演」
今回の会は日本政府の助成金で可能になりました。外務省が海外在留邦人・日系人の生活・ビジネス基盤強化事業の助成金を発表したのを受け、JAGH会長の武智さんがすぐに行動を起こしてくださいました。外務省の方針とヒューストンに在住の感染症専門の日本人のお医者様が3人もいらっしゃるという事で、コロナに対する正しい知識をプレゼンでご教授頂き、同時にヒューストンの日本人経営飲食店4軒に当日参加者全員分のお弁当を発注してサポートし、更に日本人舞台芸術家の出演でヒューストンバレーに在籍する日本人8人や、クラリネットの佐々木麻衣子さんと私、ヒューストン・オペラでもご活躍なさるオペラ専門のピアニストの戸田さんや戸田さんがリードする日本人合唱団も出演する盛沢山の会となりました。チケットはすぐに完売し、満員御礼状態となりました。日曜日の午後と言う事もあり、子供連れの家族が沢山登録して下さったことに一同喜びました。
会場となったAsia Society of Texas Center
今までも多数演奏会をさせて頂いた思い出深い場所です。モダンな建築の会場に入るといつも背筋が伸びる気がします。当日は素敵なお花がいたるところに飾られ季節感と「和」を演出してくれました。
シゲルカワイのフルコンを提供してくださったKawai America Corporation
日本人ピアニストとして、美しい音色の日本のフルコンを弾くことには誇りを感じます。ですから2018年にシゲルカワイ・アーティストに任命されて嬉しかったです。しかしコロナ禍で音楽産業の様々な分野が沢山の困難を抱えている中、ご協力をお願いするのは恐縮致しました。でもカワイ・アメリカ・コーポレーションの皆さまは、このJAGHの会に最高級のシゲル・カワイのフルコンをご提供くださいました。その気持ちと、素晴らしい楽器に込められた日本人の誇りと歴史が、この会を盛り上げてくれました。
重厚な音色のシゲルカワイ 会場にしっくり
何十人ものボランティアスタッフが企画運営から携わって実現したこの会のリーダーたち
いつも笑顔のリーダー・日本人会会長武智さん
(写真:堀田幸司さん)
絶妙なMC(写真暁子子フレデリックスさん) JAGH副会長松村さん(写真暁子フレデリックスさん)
ヒューストンバレー在籍中の日本人が華やかな踊りを披露してくださいました。
現在ヒューストンバレーに在籍する日本人は8人。皆さん国際的な評価を受ける素晴らしいダンサーたちです。この中の6人が今回踊ってくださいました。会場が一気に華やかになり、別世界へと連れて行っていただきました。私は何よりも公演が不可能だったコロナ禍でもダンサーたちがトレーニングを怠る事が無かったという事実に、同志を得たような勇気と元気を頂きました。
(写真:堀田幸司さん) (写真:堀田幸司さん)
日本人の感染病専門家たちが日本語でコロナの現状や予防法などについてクイズ形式のプレゼン
ヒューストンで感染病を専門に研究していらっしゃるお医者様は3人。研究だけでなく臨床も行われていたり、それぞれお子様がおありだったりと、コロナ禍での挑戦は想像もできません。そんなにご多忙なお医者さまたちが、時間をかけ心を込めて、クイズ形式のコロナ情報のプレゼンをやってくださいました。打ち合わせの時もクイズの音響効果などのチェックへの熱心さから、奉仕とか貢献と言った姿勢の背景に深い愛情が感じられ、ジンとしました。(写真:堀田幸司さん)
「一滴の水について」の独奏と、クラリネットの佐々木麻衣子さんとラプソディーインブルー!
トークの最中に涙が出ました ラプソディーインブルー デュオの幸せ 愛情ホルモン全開!(写真は4枚とも堀田幸司さん)
ヒューストンオペラでご活躍の戸田さんとオペラ歌手と日本人合唱団
「花は咲く」は本当に心に沁みる曲ですね。合唱団の浴衣も素敵!
コミュニティーが一体となった会でした。
受付のスタッフは法被姿! 休憩時と会終了後はテラスで飲み物 会終了後は日本食店のお弁当!
翌日の打ち上げでは演奏を聞き逃したボランティアの為にピアノを囲んだお夕食会がありました。
打ち上げにはボランティアスタッフを中心に30名ほどの方々が集まってくださいました。皆さん、本当に素晴らしい笑顔で美味しいワインとご馳走を囲んで歓談が盛り上がりました。ヒューストンのメディカルセンターはこの都市の一大産業の一つで、日本人の研究医も多くいらしています。前日コロナに関するプレゼンをして下さった感染症専門家のお医者さんや脳神経科のお医者さんなどと、音楽と医療と言う事について沢山お話しさせて頂きました。駐在でいらしている方々も意外と熱心な音楽ファンやピアノファンの方が多く、「シャイン」や「グリーン・ブック」と言ったピアニストを主人公とした映画の話題で盛り上がったりしました。ヒューストンのNASAで宇宙飛行士として活躍されていらっしゃる日本人も多いのです。その中で野口さんが本番と打ち上げと両方お見えになってくださいました。私は少しお酒も入っていたのでおこがましくも「宇宙も音楽も浮世離れしているという意味で、一般とは違った視点から気候変動や社会問題に関して語れるのではないのか」という発言に、お優しく協調してくださり、同志を得た気持ちになったりもしてしまいました。
左からヒューストンバレーの吉山シャルル君、宇宙飛行士の野口聡一さん、私、JAGHの武智会長、そして伊藤嘉則さん。
今回の会はライブ配信も行われました。いつもJAGHのIT関連で大活躍してくださる錦城さんのお陰でこの会の録画はこちらでご覧いただけます。
感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
お疲れ様です。
会場の熱気が行間に溢れています。
芸術が平安を齎しています。
それぞれの笑顔に優しさが顕れています。
小川久男
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