ホタル 2


私が13の時、私の家族はアメリカのニュージャージー州に越してきました。
父のニューヨーク赴任に伴っての引っ越し先はニュージャージーのショートヒルズと言う街で、車でマンハッタンから40分、電車で50分のアメリカの郊外を絵に描いたような町です。越してきたのは今からほぼぴったり21年前の6月9日。日本では想像できない様な、幼稚園の運動場くらいある広々とした芝生の裏庭には、昼間は野兎やりす、夜にはごみあさりの狸や狐がでる自然が残っていました。庭には野イチゴがなり、木曽育ちの父はそれを進んで食べて見せて、「汚い」と尻込みする私と妹を「大丈夫だよ、こんなの蝶のおしっことか蜂の糞くらいしかかかっていないから」と頓珍漢な励まし方をしました。そして一番びっくりしたのがホタルです。日本では水の汚染により、かなりの田舎でも「ホタルを呼び戻そう」と住民が努力をしているくらいですが、ここではクリスマス・ツリーかと思うくらい、ペカペカペカペカ、一杯居るのです。多分水の汚染に強い、全く別の種類のホタルだと思います。日本のものより光も強くて大きいし、それに何より、マンハッタンのセントラル・パークにも居ますから。
21年経って、ここら辺の生態も結構変わりました。野兎は昔の様には見かけません。リスも少し数が減った感が在ります。その代わり、自然の天敵がいなくなって鹿がこの10年で急増し、食べ物が無くなって庭の花や草を食べ散らかしてしまい、住民の悩みの種となっています。その為に限定期間の決まった時間、行政がプロの猟師を雇っているほどです。鹿は大きいので、車と衝突すれば車だけでなく、時には人にも大きなダメージを与えます。でも、裏庭を早朝、家族連れの鹿がゆっくりと横切るのを見るのはやはり美しいものです。
ニュージャージーは今、一年で一番気持ちの良い季節です。
空気はからっとしているし、太陽の光は優しく、木漏れ日と風がとても心地良いです。
刈られたばかりの芝生があらゆる所で物凄い草の匂いをそこらじゅうに元気よく撒き散らしています。


2 thoughts on “ホタル

  • abbros.kawashima

    なにやらわたしの田舎(北海道の東部)の話を聞いているような気分になりました。四十年程前には、ホタル・野いちご・野ウサギ・リスがどこでも見られましたが、今ではほとんど壊滅です。酪農の為に木を切りつくしてしまったからです(どうしてそうなったかは長くなるので)。そして現在、狼のいない森では鹿が増えすぎて、そのコントロールに頭を悩ませています。簡単に言うと市場経済主義的な人間活動が、自然からのしっぺ返しを頂戴しているわけです。けれどもお話ではニュージャージーにはまだ素敵な自然が残っているようですね、うらやましくおもいます。

  • ピアニスト、makicha

    >abbros.kawashimaさん
    ホタルの光と言うのは、見ていると本当に時間も我も忘れてしまいますね。私は北海道はまだ行ったことが無いのですけれど、全て都市化(資本主義化)してしまう前に一度行ってみたいと思っています。
    マキコ

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