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ニューヨークのクリスマス No.1

 日本でのクリスマスはいかがお過ごしでしたか? NYのクリスマスもなかなかですよ。  昨日はジュリアードでお世話になってる教授夫妻のお宅へお邪魔してきました。  この奥様は私がああいう風になりたいなあと憧れている人で明るくて、情熱的で、エネルギッシュで、いつもスパッと思う事を言ってかっこいいのです。この頃一緒に仕事をさせていただく事が多いのですが、一度マンハッタンのずっと北にある大学の発表会の仕事でドライブして連れて行っていただいた時、お互い凄く食に興味があることが判明して(勿論私はただの食いしん坊で、あちらは筋金入りのグルメ料理人なのですが)今回クリスマス・ディナーにご招待いただくことになったのです。  まず、生ハムで干しイチジクを包んだのや、フォアグラのパテや、ドライトマトのパテ等のアペタイザー 次にフォアグラのドレッシングをあえた、アルーグラのサラダ メインが私の胴体くらいある羊の足をハーブにマリネして丸焼きしたもの、それと醤油とみりんと大量の大蒜のローストビーフ。 そのサイドディッシュには非常に美味しいローストアスパラガスと、パルミジャンチーズをかけて焼いた芽キャベツ!  どれも全て奥様のお手製なのです! そして出てくるワインは全てご主人である教授の講義つきスパニッシュワインの数数で、普段余りアルコールは頂けない私も沢山飲んでしまいました。どれだけ美味しかったか分かるでしょう。  そのパーティーでも音楽に極める人は舌も肥えていることが多い、という事が話題になりましたが、あれは本当に凄かった。そして非常に幸せだった。  日本でも大分ニュースになったようですが、マンハッタンの地下鉄とバスのストの間、私はほとんどニュージャージーにある高校時代のホームステー先に身を寄せて練習しながらやり過ごしましたが、二度ほどどうしても顔を出さなければいけない用事でニューヨークに参りました。  ペン・ステーションからジュリアード(66丁目)まで歩く訳ですが、まあ歩行者が普段より多いとは言え、パッと見には割りと普通な光景なのですが、話しかけてくる通行人が多い!皆非日常的ハプニングを楽しんで、うきうきと連帯感を感じているらしいのです。  私はピザ宅配のお兄さんと57丁目から64丁目まで、ストライキの権利の是非について語り合いました。あっぱれ、ニューヨーカー!  それにしても、中国から来た同業者の友達が何気なく「中国だったらストの責任者は死刑だよ。。。」と言ったのに、ショックを受けました。  何にせよ、クリスマスまでに無事終了してくれて、よかったです。  皆様、お体にお気をつけて日本の御年越し、そしてお正月を私の分まで満喫してください。 2006年もよろしくお願いいたします。

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ニューヨークの12月

 今日起きてみたら、マンハッタンは今年初めての雪景色です。 感謝祭(今年は11月23日でした)もニューヨーク州のコネティカットはうっすら雪化粧でしたが、さすがにマンハッタンにはつもりませんでした。  穏やかな秋で、いつまでも紅葉が楽しめたと思ったら、昨日急に冷え込んで、例年より10度くらい低いとか。 一挙に厳しい冬に突入です!  私はなんだか走り回っています。 明日、ジュピターシリーズのコンサートに又出演させていただく為、毎日3-4時間リハーサルがあり、その上伴奏の仕事、そしてレッスンがマンハッタンアッパーウェスト中心に散りじりにあり、いつもぎりぎりまで練習して、まっつぁおになりながら、バスに飛び乗ったり、走って行ったり、地下鉄の中で必死に楽譜を読んだりしています。  のだめカンタービレ、と言う漫画をご存知でしょうか。 私は友達にほぼ強制的に読ませられてから(ご飯を作ってあげるから、来て読みなさいと言われた)はまってしまい、全くのだめになりきって日々頑張っております。  もう一つはまっているのは、村上春樹です。 ねじ巻き鳥クロニクル上・中・下三巻、三日で読みきってしまいました。その後左の小指の第二間接が一寸腫れてしまい(おかしいな)と考えて思い当たったのは、読書に夢中で同じ姿勢でずっと本を支えていた時、小指に負担が掛かっていたのです! 何たる、ピアニスト。  もうリンカーンセンターにも、ロックフェラーセンターにもクリスマスの装飾が施されました。今年はジュリアードは百年記念という事で、ジュリアードカラーのブルーでリンカーンセンターは統一です。中々きれいです。  私も年末帰って日本のお正月を楽しみたいのですが、生憎(と言うか幸い、と言うか)年越しコンサート(本当に大晦日の12時まで弾きます)に出演するのと、1月14日にチェロとの共演がありその為のリハーサルがあるので、今年の年末年始はニューヨークになります。  皆さん、良い年末をお過ごしになりますよう。

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コンサートの後で

 昨夜、ジュピター演奏終了後打ち上げにも出席して11時過ぎ、地下鉄の駅から家まで歩く途中のお話。  この辺りはラテン系の人が中心の界隈で、ご存知の通り、ラテン系の男性と言うのは、超ナンパ。手当たり次第、声をかけていると思われるのですが、昨日の夜歩いていたら、「コンニチワ」と言われた。  しばしば「ニーハォ」とか言われるし、たまに「アンニョン」とかも言われるけど「コンニチワ」は初めてで、(お、兄ちゃん勉強したな)と思いながら、知らん顔で通り過ぎようと思ったら、「カワイイデス」と来た。 (もっと言ってくれてもいいよー)と思いながら、笑いで肩が震えるのを抑えながら歩き続けていたら「デンワバンゴウ クダサイ!」とすでにかなり背後になっていた兄ちゃんが叫んだ。  この兄ちゃんはどういう言われでこれだけの日本語を身に着けたのだろう。とても愉快。爆笑しながら振り返ったら、とても無邪気な満面の笑みを浮かべていた。  きっと通じて嬉しかったのだろう。

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ダンスを観て

 今日のニューヨークは小春日和です。  「小春日和」が秋の日を指すことだとまだ知らなかったニューヨークに来たばかりの頃、ジュリアード音楽院に送ってもらう為、DCの家族の車に乗ったとき、同乗していらっしゃったお祖父様に,「今日は小春日和ですね」と挨拶された時、それが私が初めて出会った戦時中日本語教育を受けた韓国人だったこともあってショックだった。この夏もジュリアードの韓国人クラリネット奏者のコンサートの際、お祖母様がいらしていて、NYに送リ届けてもらう際、車の中で一緒に日本語でおしゃべりしたが、この方も俳句や和歌を私のために暗唱して、着物の縫い方を教えてもらったのが楽しかった、と話していらっしゃった。私に気を使っているのだろうか。それともそれだけ日本語が美しい、という事なのか。私は取りあえずひたすら恐縮して見せる他は、敬意を示す方法が思い当たらなかったので、ひたすらかしこまって、自分が知っている限りの敬語を使って応答した。不思議な世代、不思議な歴史だ。しかし、フランス、イギリス、スペインなどの植民地でも、現地人はその言葉を覚えて、今でも喋っていたりするわけだし、そんなに不思議でもないのかなあ。ボリビアのスペイン風パンが非常に美味しかったのを思い出す。  ニューヨークに帰ってきてまだ一週間たたないけれど、なんだかもう一ヶ月こっちにいる気がする。ジュリアードのダンス部門の作品を28日に見て、30日には演劇部門の作品を見た。ダンス部門の作品は”Sir Issac’s Apple”というタイトルで、曲はSteven Reich, 振り付けはElliot Feld (ウェスト サイド ストーリーのBaby Johnの役だった人)。タイトルの”Sir Issac”はニュートンの事で、要するに重力を使った振り付け、と言う意味です。   Steven Reichというのは、ミニマル・ミュージック(極度に切り詰めた最小限の音楽素材を、パターン化して延々と反復しつつ、そこにゆっくりと変化を加えていく手法。民俗音楽でもよくみられる)と言うものの第一人者。Steven Reichの音楽と言うのは、これと言う発展が無く、例えばマリンバならマリンバで、4人くらいが同じパターンをずっと弾くのだけれど、微妙に4人のテンポを違える事によって一分目くらいからだんだんずれが聞こえる様になり、3分後にはパターンがお互いぶつかり合ってかなり複雑なパターンを織り成す。メロディーや、ハーモニーで音楽を進展させるのではなく、音の色、厚さ、広がりなどの変化を音楽とする。こういう音楽は私は今まで余り興味が無かったんだけど、この作品を見て、感動した。  ダンスの生徒40人くらいが、舞台一杯に作られた幅広い、巨大な滑り台からただ降りて、上がって、と言うのを繰り返すんだけど、色々な降り方、あがり方があり、これは全て振付けられている。しかしそれぞれの生徒達が全て同じ動きをしているにもかかわらず、個人個人の肉体と、感性でそれは微妙に違い、単純な動きだからこそ、その違いが如実に浮き彫りになる。そして、全体像として、沢山の生徒が少しずつずれて、同じ動きで次々に滑り台をあがったり降りたりするのは非常な壮観。一人、一人がそれぞれの音、パターンそして、曲全体を同時に表現している。この作品は1時間20分、一瞬の途切れも無く続くのだけれど時間の感覚を超越した風で、はじめから終わりまで、私は固唾を飲む感じで見入ってしまった。  見入った理由のもう一つは、私が今自分の演奏に欲しい物が見えた、と思ったからでもある。沢山の踊り子が単純な振り付けを少しずつずらしてやる時、周りに溶け込む人と、目立つ人がいる。上手い、下手とは言いたくないが、私は目立つ人の方が格好いいと思うし、自分もそうなりたい。そして目立つ人は、動きにハリがある。これを私は自分の演奏に欠けているものとして、今まで「リズム感」と言葉で表していたが、この作品を見て、もう少し適格に言語表現できる様になったと思う。   それは、もうだめ、と思うところまで体を伸ばして、さらにもう少し先に行こうとする感じです。見る側から言うと、一瞬止まったように見えるのだけれど、でも踊る側としては、多分そういう風に見せようと思ったら上手く行かない。要するに、ぎりぎりまで届こう、届こう、もっと、もっと、と求める気持ち。これを音のタイミングであらわす事が出来たら、本当に効果的に伝えたい物が伝えられると思う。後一寸で、それが体得できる、と今思っている。  もう、前の様に「疲れて何も聞こえない」と思うところまで、練習するのはもうしない。取りあえず、10・11の録音でやる曲はこの夏演奏する為に一度仕上げてある曲ばかりだし、もう少し抽象的、概念的に色々な事を考える事によって、曲を把握しようと思っている。

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世界で活躍する演奏家を応援する会からの手紙

 私どもが初めて平田真希子さんにお会いしたのは今から5年前、彼女がやっと20代半ばという頃でした。中学生の時から家族と離れ、単身アメリカで音楽を勉強していた彼女は既にその頃から、各国のオーケストラと世界を廻り実力、経験とも十分でした。しかし日本における支援体制がないため、日本では一度も演奏をしたことがなかったのです。彼女の演奏を聴いてもらうため、毎年夏の帰国時に演奏会を開くことになり、今年で5度目の夏を迎えることになりました。年を重ねるごとにさらに深みと色合いを増していく彼女の演奏に私達も毎年驚きを感じています。   今年は長さ、内容共に非常に重量感のあるプログラムに挑戦されるということです。演奏される平田さんの体力・気力ばかりか、聴く側の皆様にも覚悟が要求されることと思います。しかし、このプログラムは彼女自身の強い希望により組まれたものであり、この演奏会を行なうことにより彼女が何かをつかみ、更に飛躍するだろうという予感を感じております。日本では普通組まれることのないだろう冒険的なプログラムを、是非お楽しみくださいませ。                     2005年8月26日みなとみらいホールにて                                  齋 藤    雅 顕

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