演奏会の演目を決めるのはコース料理のメニューを決めるのに似ています。
それ自体がアートと言っても過言ではありません。
前後する曲の相性。全体のバランスと構築。満足はして頂きたい、でも食傷はさせない。
そして、それぞれの曲に聴衆の皆さまにお楽しみいただける音楽体験を提供して欲しい。
その上、ツアー中は不確定要素が多いのです。
未知のホールやピアノ。
それぞれの土地のさまざまなお客様。
そしてツアー中日々変わる自分のコンディション。
外的条件が変わっても、提供する音楽はいつも楽器やホールと共鳴して、感動を生み出すさなければいけません。
去年は新しい試みとして、プログラムの一部をお客様にいくつかの曲の中から多数決で選んでいただきました。
今年は、プログラム自体をアンケートでお客様にお選びいただければと思い、今日このブログを書いています。
コメントで、どのアイディアがお好きか、お知らせください。特別な思い入れに関するコメントや、曲のリクエストなどもいただけると嬉しいです。すべて考慮させていただきますが、最終決定はお任せいただくようお願いいたします。
アイディアその1:「水のある風景」
今年の日本ツアーは7月下旬から8月上旬の暑い盛り。
「水」をテーマにした涼し気な曲の数々をお楽しみ頂きます。
テーマを『雨』→『池』→『大海』とどんどん大きな水の形体にしていきます。
曲例)ショパンの雨、ドビュッシーの池、シューベルト「水の上で歌う」、チャイコフスキー「舟歌」、ラヴェルの噴水、ラヴェルの大海、など。
アイディアその2:「物語るピアノ」
映画・小説・漫画などでピアノ曲が象徴的に使われる例は多くあります。それぞれのシーンでの曲の象徴性を考察しながら、音楽をお楽しみ頂きます。
曲例)バッハ:ゴールドベルグ変奏曲(『羊たちの沈黙』『イングリッシュ・ペイシェント』、ショパン:バラード一番(『戦場のピアニスト』)、メンデルスゾーン:無言歌集作品30-1(『ソフィーの選択』)、無言歌集作品62-6(無数)など。
アイディアその3:「世界を司る6種の音楽」
脳神経科学者、ダニエル・レヴィティンは著書の中で人間の脳・文明・社会の進化には6つのタイプの音楽が深く関わってきたと唱えています。彼のアイディアを基に、この6つのタイプの音楽を紹介していきます。
#1 連帯感を促すリズミカルな音楽。リズムと共にする単純作業やダンスは生産性と共感を促す。
曲例)プロコフィエフのソナタ3番, 又は7番一楽章?(K博士のご提案)
#2 音楽を通じて連帯して喜び合い、共に高揚するすることで「幸福ホルモン」と呼ばれるドーパミンの分泌が促進され免疫力が高まる。
曲例)ショパン「華麗な円舞曲」作品34-1
#3 慰め・いたわりの音楽。ゆっくりで一定感のあるリズムで呼吸や心拍そして血圧を下げ、ストレスを軽減し、痛みも和らげます。心労や悲しさも(他の人も悲しみを超えて生きている)とメッセージとなると言う意味で、葬送行進曲などもここに入ります。プロラクティンと言う鎮静作用のあるホルモンの分泌を促進します。
曲例)ブラームスの子守歌、作品49-4(編曲:ゴドウスキー)、ゴドウスキー『左手のための哀歌』
#4 知識やメッセージの伝達のための音楽。儀式で使われる音楽には伝統や記憶の補佐と言う意味があります。歌に載せる歌詞は、詩の暗唱よりもずっと長く記憶に残ります。
曲例)ラヴェル「ハイドンの名によるミニュエット」、「クーペランの墓」(組曲のそれぞれが第一次世界大戦で戦死した戦友に捧げられているほか、戦争前の古き良き時代をしのんで、古風な様式で作曲されています。)
#5 宗教音楽:音楽と同じく、宗教が無い文明と言うのも見つかっていません。音楽も宗教も肉体と知性を超えたものに全身全霊で向かいます。
曲例)バッハ作曲ペトリ編曲「羊たちは安らかに草を食み」バッハ作曲ヘス編曲「主よ、人の望みの喜びよ」
#6 恋愛感情:曲例)シューマン「献呈」
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