思いがけず、一年を思う。

6月1日に演奏した演奏会。 とても特別な会だったのは1829年にウィーンで制作された古楽器で演奏したから、だけではない。 1765年に建築された、マンハッタンに残る最古の豪邸で開かれた演奏会だったから、だけでもない。 シューベルトが生前参加していたと言う、シューベルトと彼の作品を親しむ会 「シューベルトの夕べ」をマネして、飲み物とウィーンの焼き菓子が振る舞われ、 聴衆を演奏空間に巻き込んで、連帯感が非常に強く生まれた演奏会だったから、だけでもない。 今日、YouTubeで公開する前に確認するため、画像が送られてきて、 私は確認作業を行いながら息が苦しくなるような感覚に襲われた。 あの演奏会を実現のため、裏方で大活躍をしてくれたMさんは、 その後末期がんで10月に亡くなった。 彼は自分が末期がんだと言うことを熟知していたし、 彼の友人たちもみんな知っていたけれど、 あの日はそんなことよりこの音楽会が大事で、 この音楽会のためにみんなで協力して、汗をかいて、そして成功を祝った。 午後の演奏会が終わった後、さわやかなマンハッタンの芝生の上で タイ料理の出前をみんなで広げて盛大にお祝いした。 そして今私の日常に欠かせない大切な人々の中には、 その時まだ巡り会っていなかった人もいる。 たかが半年前なのに。 時間って不思議。 音楽は香りのように、記憶をふっと復活させることがある。 思い出深い出来事のあった時期、練習していたり、演奏していたりした曲に再会すると、 その時の気持ちや、肌に残る感覚や、聞いていた声とか、何でもない会話とかが くっきりと再現されることがある。 あああ。 今年もいろいろあったな~。とても濃い一年だったな~。 その全てに感謝できるように、 思い出いろいろを音楽に織り込んでいくように、 鶴の機織りのように、 今日も練習。

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