November 15, 2015

メシアンの「時の終わりのための四重奏」について

11月22日(日)もいよいよ一週間後に迫りました。 ヒューストンにこの秋新しくオープニングした MATCH(Midtown Arts and Theater Center of Houston)にて演奏する 20世紀を代表するフランス人作曲家、Olivier Messiaenによる 『時の終わりのための四重奏』を午後5時開演でお届けします。 この曲は本当に重要な曲なんです。 1.まず内容が劇的: ―新約聖書に出てくるヨハネの黙示録の中で 特にこの世の終末を描いた部分が題材となっています。 10章の1~2、5~7は特に直接のインスピレーションとして作曲の前書きに引用されています。 10:1わたしは、もうひとりの強い御使が、雲に包まれて、天から降りて来るのを見た。その頭に、にじをいただき、その顔は太陽のようで、その足は火の柱のようであった。 10:2彼は、開かれた小さな巻物を手に持っていた。そして、右足を海の上に、左足を地の上に踏みおろして、 10:5それから、海と地の上に立っているのをわたしが見たあの御使は、天にむけて右手を上げ、 10:6天とその中にあるもの、地とその中にあるもの、海とその中にあるものを造り、世々限りなく生きておられるかたをさして誓った、「もう時がない。 10:7第七の御使が吹き鳴らすラッパの音がする時には、神がその僕、預言者たちにお告げになったとおり、神の奥義は成就される」。 2.次に歴史的背景が非常。 第二次世界大戦中、ドイツ軍に捕虜に捕られたメシアンが 捕虜収容所、Stalag VIII-Aでたまたま居合わせた ヴァイオリン奏者(Jean le Boulaire)、 クラリネット奏者 (Henri Akoka)、 チェロ奏者(Etienne Pasquier) そしてオルガン・ピアノ奏者であったメシアンのために この楽器編成で書かれ、 捕虜収容所の中で他の捕虜たちを聴衆に初演が行われたのが1941年1月15日の極寒の夜。 3.最後にこの曲はOlivier Messiaen(1908-92)と言う 現代音楽に多様な影響を及ぼした作曲家の 一番有名な代表作と言うだけでなく 彼の音楽理論発展の過程に於いて決定的な役割を果たす曲となった。 ―鳥類学者として鳥の鳴き声を譜面に書き取り、自分の作曲に題材として利用したメシアンが 最初に特定した鳥(ブラックバードとナイティンゲール)の鳴き声を利用した作品。 ―「わが音楽語法」(1944)と言う自分の作曲法を説明した著書で一番引用されている曲 世の終焉の後に来るとされる無限の時を音楽で表すためにこれ等の書法が使われた。 「移調の限られた旋法(移調しても音が同じになることが多いモード)」 「逆行不可能なリズム(前から読んでも後ろから読んでも同じリズム)」 「リズム・メロディー・ハーモニーのペダル(リズムとメロディーとハーモニー、それぞれに何度も繰り返すパターンがあるのだけれど、中世のイソリズムのように、それぞれのパターンが違う長さ―例えばリズムは5拍分、メロディーは13拍分、ハーモニーは21拍分と言ったように―なのでいつも違う音が違うハーモニーやリズムに当たる)」 「時の終わりのための四重奏」は8楽章から成っています。 1.水晶の典礼(4楽器) 作曲家の描写: 「朝3時と4時の間の鳥たちの眼覚め:高い木の中で出所が分からない震える音、トリルの後光の中でブラックバードとナイティンゲールが即興で鳴く。これを宗教のレヴェルに移調させると、天国で共鳴する静寂が垣間見られる」 音楽的に: クラリネットがブラックバード、ヴァイオリンがナイティンゲールとしてこの楽章中、鳴いています。その中でチェロが5つの音(ドーミ―レーファ#-シb)を15のリズムのパターン(2つの「逆行不可なリズム」の組み合わせで繰り返して、メロディック・ペダルを奏で、ピアノはハーモニックペダルとして29の和音を17のリズミック・パターンで繰り返し「永劫」を醸し出します。 […]

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本番は大成功でしたーさて、お次は…?

昨日の本番もお陰様で大成功でした。 会場の大学の駐車場から、私の付き添い担当になった警察官がずっと付き添ってくれ、 ストーカーが出現した場合の対策としてちゃんと避難ルートまで説明され、 担当の警察官のボスとかが私が練習中に何人も来て自己紹介したりして、 「このキャンパスは平和なんだね~」という感じでした。 私もお姫様か大統領にでもなったような気分で、中々楽しかった。 お客様の中には私の昔の教え子が二人来てくれていて、びっくり! 本当に懐かしくて、嬉しくて、そしてこの子たちを教えた一年前の自分と 今の自分を比べたりして、本当に感慨深かった。 ギュッとハグして、近況とか卒業の予定とかお勉強の様子とか色々聞かせてもらいました。 それにしても、同じ演目でも会場と聴衆とピアノが違うと本当に色々変わります。 観客の反応や雰囲気や、感じ取られる「気」の様なもので、 奏者の曲に対する気持ちが随分変わります。 そして楽器と会場が違うと、音そのものが変わる。 音楽会と言う共同体験に於いて、演目と言うのは一部でしかない。 そして先週、この演目を初めて弾いた経験を踏まえて 2回目の余裕と、そして野望もあります。 更に、前回は弾いた5曲を書いた5人の作曲家の内 イタリアに滞在中の一人を除いた4人が聴衆の中に居たのに対し、 今回は1人だけ。 やはりプレッシャーが軽減し、 その分「自分節」をそれぞれの曲に於いて試したくなってきます。 今回護衛をしてくれた警察官が私の音楽に興味を持って 色々良い質問をしてくれたり、私の事を立ててくれたりしたのも手伝って 聴衆に伝えよう、コミュニケートしよう、とすごく意識した演奏になりました。 それが通じたのかな? 大学の生徒、教授、スタッフ、色々な人が私のトークや演奏に生き生きと反応してくれ、 演奏後に沢山の人と言葉を交わし、お礼を言われました。 そして今日は早速、来週末演奏のメシアン「時の終わりのための四重奏」 初リハーサル! 昨日のパリでの惨事と、この曲の終わりである「世の終わり」 更に、この曲が描かれて初演された第二次世界大戦中の捕虜収容所、と言うことが 妙に共鳴し合って、リハーサルなのに結構感情的な演奏になりました。 良いメンバー。 これは楽しくなりそうです。 来週はがっつりリハーサル! 私の誕生日も重なって、色々イベントフルな週になりそうです。 さ、備えて今日は、早寝! おやすみなさい。 いつもお読みくださっている皆さん、ありがとうございます。

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