明鏡日記9.11:EYL最終日ー最後に演奏!

We are not “United States of Europe” yet(我々はまだ「ヨーロッパ合衆国」には程遠い)

こう言い切ったのはウィルス学者で2007年以降はベルギー連邦政府に任命されインフルエンザ対策担当を行っているMarc Van Ranst教授。棒グラフでヨーロッパ各国のCovid-19の波の違いを見せ「それぞれの国の方針が違ったためパンデミックの拡大の仕方や被害の大きさも国ごとに違う出方をした。が、交通規制が解除になれば、大義ではこういう違いは全て意味がなくなる。と言った後、今度は全世界のグラフを見せ、欧米・アジア・中近東が一度以上のワクチン接種者が過半数を超えた現在でも、しかし主にアフリカなどの貧困国のワクチン普及率は1.9%であることを受け、「我々のブースターショット(3度目のワクチン接種)」は倫理や人道、そして科学的論理に叶っているか?」と問いかけます。

「おはよう!早いね~。」

フロリダ州在住で同じく今回ブリュッセルに行けなかったオンライン組でスペイン人のアルフレードがチャットして来ます。東海岸の彼にとっては朝6時のセッションは、西海岸の私は3時。早いというのか遅いというのか...「このEYLに希少なアジア人代表として、私は少なくともイメージだけでも提供するの!」と主張する私に「いいね~。応援するよ!」嬉しい。

このアルフレードの言葉に勇気を得た事もあり、思い切って『質問』(発言)をする事にする。「パンデミックは人類は一つの生命体であるという事を示してくれるチャンスだったのに、残念な事にそれと反対の社会現象が観られている様に思えます。科学者に対する不信感を超えた敵対心、更にパンデミックの発祥地としてのアジア人へのヘイトクライムの上昇や過激化は、どこまでがトランプ政権の影響で、どこまでがパンデミックの世界的一般現象と考えれば良いのでしょうか。」と発言。心臓がバクバクしている。自分のアジア人としての観点を述べたぞ!マキコ、一点!それに発言をする事で、積極的参加姿勢も表明した!もう一点!

Ranst博士は真摯に応えてくれる。「疫病にはデマやマイノリティーへの責任のなすりつけは、歴史的にも多くみられる現象だ。しかし今回はSNSやトランプの影響でそれに拍車がかかって居る。特に科学者への脅しやヘイトクライムなどの損失は大きい。私自身、今いくつもの訴訟を抱えている。全て弁護士を雇わずに自己弁護をしている。真実は私の見方だ。裁判官が科学を理解すると信じている。アジア人に対するヘイトクライムも、責任のなすりつけはこういう疫病では歴史的に一般な現象です。」MCの人も「アメリカからの貴重な観点をありがとうございます」と言ってくれる。今までは自分のプレゼン以外はZoomの箱でニコニコしている正体不明だった東洋人女性がちゃんと声と意見を持った!よし!

「閉会の言葉の後にちょっと演奏していただけませんか」

突然、Zoomのチャットボックスと、Whatsapp両方にこんな言葉が同時に舞い込む。

「プロの演奏家に、このタイミングでこんな事をお願いするのは大変無礼かもしれません。そうだったとしたらお許しください。でも今回は初日からずっとヴァ―チュアルでも時差にも拘らずご参加下さったあなたの演奏を、みんなも聞きたいと思うのです。」

気持ちはありがたいが、朝の4時。下半身はパジャマで寝室では野の君は眠っている。一度はそう言って断ってみる。相手は即受け入れてくれる。でも、直後に考え直す。(せっかく真夜中に起きて参加してアジア人の存在を主張したのだ。このフィナーレで演奏させてもらったら絶対インパクトある!)野の君、ごめん!!

「私の世界観を広げてくれてありがとう。共鳴の気持ちをショパンの曲に乗せて愛を込めてロサンジェルスから弾きます」

弾き終えて見上げたら、スクリーン越しでも皆の表情が温かくなっているのが感じられました。拍手がいつまでも続いて、私が何度も「ありがとう」と言っても辞めないのです。体が眠った状態でウォームアップも無しで、3回音を引っかけちゃったけれど、でも「音楽は世界の共通語」「音楽は社会を一体化する道具」という私のメッセージがこの数分で感じてもらえた実感がありました。

昨日とは雲泥の本当に晴れやかな気持ち。

3 thoughts on “明鏡日記9.11:EYL最終日ー最後に演奏!”

  1. お疲れ様です。

    ステージの活用は自分。
    「弘法筆を選ばず」
    プロであれば、必要に応じてなんなりと。
    幸運女神の髪をしっかり掴めて何よりです。
    次のステージが必ず待っています。

    小川久男

  2. Pingback: 明鏡日記9.19:私はやっぱりピアノ弾き。 - "Dr. Pianist" 平田真希子 DMA

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