明鏡日記53:環境問題には通訳が必要=音楽の出番

社会心理学の実験です:実験参加の報酬で5ドルもらったあなたはどの設定にいくら寄付をしますか?

第一の設定)ロキアはアフリカのマリに住む7歳の女の子です。極貧生活の中で食べ物はいつも足りず、飢えに直面する可能性といつも隣り合わせです。あなたの寄付は家族がロキアに食事・教育・衛生・医療などの必要を満たすのに使われます。

第二の設定) 食糧難はアフリカのマラウィで300万人の子供たちを苦しめています。ザンビアでは干ばつの為にトウモロコシの収穫が2000年に比べて42パーセント減少しています。その結果300万人のザンビア人が食糧難に直面すると推定されています。アンゴラの国民の約三分の一に当たる400万人が避難民生活を余儀なくされています。エチオピアの千百万人が今すぐに食料救済を必要としています。

第三の設定)第二の統計にロキアの写真をつける。

結果はこうです。

ロキアの場合、被験者は2ドル38セントの寄付をします。統計の場合は1ドル。そして統計にロキアの写真を付けた場合は平均で1ドル14セントの寄付が在ります。

なぜこうなるのでしょうか?

「一人の死は悲劇だが、百万人の死は統計だ」という言葉が在ります。人間は数字に感情を結びつけることができないようだ、という事が様々な研究で明らかになって来ています。でも大量虐殺の様な人権侵害問題や、気候変動などの被害の規模を表す為には、どうしても数字が必要になります。更にもう一つハードルが在ります。歴史的に学術的な見解や発表は価値判断を超越した客観性を持たなければいけないという伝統的な認識が在ります。しかし人権侵害問題や気候変動は、価値を超越した客観性を持ち続けて良いのでしょうか?数十年来の科学者や歴史家の発表が現状の改善に役に立っていない事を、我々はどう受け止め、これからどうすれば良いのでしょうか?

だから科学と芸術の融合、科学者と芸術家の協力体制なのです。

人を行動へと駆り立てるのは感情です。でも統計や数字は感情を呼び起こしません。そこで、統計や数字に意味付けをする芸術家が必要になるのです。例えば詩や物語にする。イメージ化して視覚に訴える。音楽もこの「通訳」に適しています。聴覚は人間の生存本能に一番近い感覚です。音楽は言葉を喋る前の赤ちゃんや、言葉を解さない脳損傷や認知症・自閉症などをお持ちの方々にも感情を呼び起こし、コミュニケーションを可能にするほど、私たちの本能に訴えかけます。

2 thoughts on “明鏡日記53:環境問題には通訳が必要=音楽の出番”

  1. お疲れ様です。

    環境問題解決は、芸術だ。
    芸術が理解されれば一挙に問題解決。
    とは言え、生活困窮者は、芸術を理解する前に、目先の食物です。
    この解決なくして環境問題に進展はありません。

    小川久男

    1. 頂いたコメントで、戦時中の食糧難で幼児の我が子に食べさせるものが無い出征していく父親がコスモスの花を「大事にするんだよ」と言って渡すシーンを思い出しました。
      無い食べ物・資源は無い。それでも世界に美を見出すのが人間性だと思います。
      ご参考までに:「一つの花」。
      真希子

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