息を吐く

今日のスケジュール
8:30-11;30    練習
11;30-12;30 キャンパスへ移動。友達と散歩
12:30-1;30 研究生、教授群、スタッフの記念撮影と、昼食会
1;30-2;30 図書館で歌詞の訳し、新しい楽譜入手して、コピー・整理
2;30-4     練習
4-5       ボストン交響楽団のリハーサル見学(ブロムステッド指揮, ブラームス4番)
5-7:45 寮に帰り、皆と夕食。NYの友達と長電話
7;45-9:30   練習
今夜は本当は夕飯の後、キャンパスに戻って
ベートーヴェンの全ヴァイオリン・ソナタ・リサイタルの第三弾をオザワ・ホールで聴くはずだった。
クリスティアン・テツラフ(ヴァイオリン)とアレクサンダー・ロンクイッチのデュオは
公開レッスンでも、前回二回の演奏会でもその微細に至るこだわりが物凄く、
生徒間でも評判が最高で、前から楽しみにしていた第三弾だった。
特にこのテツラフと言うヴァイオリニストは
先週の日曜日の2時半からのボストン交響楽団のコンサートで
ブラームスの協奏曲を弾いたその晩に
ベートーヴェンソナタの第一段のリサイタルを弾いてのけたのだから、
本当にびっくりした。
しかもブラームスもベートーヴェンも、半端な弾き方では全くない、
もう精魂こめて、と言う感じで弾くのだ。
ロンクイッチと言うピアニストだって、全く負けず劣らずだ。
古楽器なんか使わなくても、本当にベートーヴェンの時代をほうふつさせるような
音色や、音楽造りをして、でもスタインウェイのフルコンのスケールの大きさもフルに活用して、
なんだかものすごいベートーヴェン・ソナタなのだ。
それなのに、なんだか音楽に食傷気味な気がして、今日は結局欠席してしまった。
最後のバスが出発したとき、後悔の念と罪悪感に駆られたが、
でも自分の直感を信じて、ふらふら寮を歩き回っていたら、
いつもは誰かが練習してふさがっている集会場が開いている。
何となく入り込んで、何となくポロん、ポロんとピアノを触っていたら
急に練習したくなった。
瞑想するような気持ちで、久し振りに自分のソロの曲を練習していたら、
思わず入り込んで、時間が経っていた。
気がつくと、窓の外の空がシソで染めたような紫色になっている。
タングルウッドに来てから毎日、学ぼう、学ぼうと、
レッスンでも、リハーサルでも、
自分で演奏する時でも、聴きに行く演奏会でも
ずっと息を吸い込み続けるような気持ちだったけど、
息は、吐くから、また吸えるんだよなあ、
と、思った。
明日は、ボストン交響楽団が、エマニュエル・アックス氏のソロで
ベートーヴェンのピアノ協奏曲4番を演奏します。
楽しみです。

4 thoughts on “息を吐く”

  1. >一世(Issei)さん
    コメント、ありがとうございます。
    アックス氏はまるで日本人のような謙虚な人で、
    「ベートーヴェンの4番、楽しみにしています」、
    と申し上げたらば
    「いやあ、本当に弾けるのかな、僕には本当に難しい曲だよ」
    と言っていました。
    でももう何十年も弾いていらっしゃる曲なんですよね。
    それから、公開レッスンで誰かがショパンのエチュードを弾いたらば
    「僕はこんな難しい曲、自分では弾かないんだけれども」
    と前置きをつけてからレッスンをするとか。
    アメリカ人でこんなことを言う人は初めてなので、
    皆でびっくりして顔を見合せました。

  2. 大物ピアニストほど、そうした傾向があるのではないかと感じます。謙遜ではなく、理想とする演奏がとてつもなく高い所に設定されている様に思えます。アルトゥール・ルービンシュタインが88歳の時「私はもっとピアノが上手くなりたい」と言ったそうですが、ルービンシュタイン氏といいアックス氏といい、我々には(ある意味で)震え上がるような台詞です。台詞の「格」からして既に違うように感じます。

  3. >一世(Issei)さん
    そうかも知れませんね。
    クローデ・フランク氏もとても謙虚でしたし。
    私も、そういう風な老人に成長したい、と思います。

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