マーラー交響曲6番(レヴァイン指揮)

8時半開演の今日のボストン交響楽団の演奏会が終わった時、すでに11時半だった。
時間の感覚が全くなくなっていたので、時計を見て、びっくりした。
遅いなあ、とも思ったが、同時に3時間でこれだけの体験ができるのもなんだか不思議な気がした。
今日の演目は、前半にレオン・フライシャーがモーツァルトの協奏曲23番(イ長調)を弾き、
後半がマーラー6番。
レオン・フライシャー氏は、2月に学校のオーケストラを客演で指揮しに来た時、
ラフマニノフのパガニーニ狂詩曲のソロで共演させていただいた。
その時は、本当に優しく、厳しく、いろいろなリハーサルやランチを一緒に過ごしたが、
今日のモーツァルトはそういう思いでを全て超越した美しさだった。
81歳の誕生日が一週間後だが、モーツァルトに対してへつらうことなく、
何気なく、さりげなく弾いてしまい、それが完璧に美しかった。
ジストニアと言う病気で右手がほとんど使えなくなり、何十年も左手だけの演奏だったが
近年ボトックスを使った治療が効果を上げ、両手での演奏を再開している。
でも、やはり右手の、特に小指がなかなか思うように動かないらしく、
指使いを工夫したり、時には手を交差させて右手の部分を左手で弾いたりしていた。
(今日の席はピアノの鍵盤側の前から5列目だったので、実によく見えた)
しかし、後半のマーラーは全くの別世界だった。
私はこの交響曲は初体験だったのだが、本当にびっくりした。
「亡き子をしのぶ歌」の直前に書かれた曲で、
新婚でキャリアも順調、一番幸せな時期に在ったはずのマーラーが
仮題として「悲愴」と名付けたイ短調の曲。
マーラーにしては珍しく、最後に長調ですくわれることなく、短調のまま終わる。
ベースや、チューバなどにソロが与えられ、全体的にどんどん音域が低くなって
音響がどんどん重くなっていくのに、リズムはずんずん進んでいく。
本当にびっくりして、今ちょっとショック状態気味。
どこまでがショックで、どこまでが眠気なのか、自分でわかりませんが、
とりあえず消化の為に、寝ます。

2 thoughts on “マーラー交響曲6番(レヴァイン指揮)”

  1. かつて録音されたレヴァインのマーラー。特に6番や9番は評価の高いものでした。今でも素晴らしい演奏をされているのですね。あのフィナーレを実演で聴くと、何か打ちのめされたようになります。ぜひ、6番も再録音して欲しい曲目(残念ながら9番の再録は今ひとつでした)です。

  2. >fairchild670さん
    私はこの交響曲は
    ほとんど何も知らないまま聴いてしまったのですが、
    この曲は楽章の順序をマーラー自身が
    最後まで決められずにいたそうですね。
    レヴァインはいつも、
    一楽章、スケルツォ、ゆっくりの楽章、フィナーレ
    だったそうですが、
    昨日は新しい試みとしてスケルツォとゆっくりが
    入れ替わっていました。
    そのせいか、スケルツォとフィナーレがお互いを
    薄めあってしまったような感があり、
    レヴァイン自身は不満足だったようです。
    でも、本当に最後の楽章でイ長調の和音が
    急にフォルテッシモで入ってくるところでは
    びっくりして一瞬息が止まりました。
    レヴァインはああいうびっくり効果を出すために
    その前の合図の指揮をできるだけ小さくして、
    何度もリハーサルして本番に臨むそうです。
    本当に胸が痛くなりました。

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