明鏡日記㊹: 病床読書評『ボスニアのフェルメール』と『なぜ脳は気候変動を見過ごすのか』

木曜日の午後突然悪寒と下痢に圧倒され、そのまま床に就いて昨日(月)までそのまま臥せました。最初の二日は水分も消化できず、二晩で2キロ痩せました。始めは月曜日の想像を絶する難易度の山道にはまり込んでしまった命がけの大冒険の後遺症の日射病かと思っていましたが、週末明けに診てもらった医者によると食中毒かお腹の風邪の可能性が高いとのことでした。今日は初めて起き上がってずっと仕事をしています。食欲もだいぶん元通りになってきました。体重は史上新記録の軽さ!頑張ってダイエットしたトーマス・マン・ハウスの収録時よりも2キロ下回っています...保てるでしょうか?(多分無理でしょう)

自分でもあきれるほど一日中目さえつぶればトロトロといくらでも気持ちよく眠っていられました。それで夜もぐっすりと眠れるのです。でも、トロトロ眠りの合間に溜まっていた読書が結構捗りました。

病床読書その①: トッホのお孫さん著:「ボスニアのフェルメール」

Vermeer in Bosnia by Lawrence Weschler: 9780679777403 |  PenguinRandomHouse.com: Books
知人の欲目ではないと思います。トッホのお孫さん、Lawrence Weschler氏は名文家です。(ピュリツァー賞の候補に挙がったことがあります。)この本はジェノサイドの被害を直接・間接的に被った人々を綴った、文章で描かれた肖像画集です。LA滞在中に私に話してくれた戦争裁判の裁判官の苦悩の逸話を筆頭に、シェークスピアの「ヘンリー五世」で伝統的に排除される残酷シーンと向き合う演劇監督とサラエボ虐殺;幼少時にホロコーストを生き延びた映画監督のローマン・ポランスキーとその紆余曲折; 著者の祖父である作曲家のトッホに関するエッセーも3本;ホロコースト生存者の子孫である著者とその娘との微笑ましい逸話; ユダヤ人をネズミ、ドイツ人を猫、ポーランド人を豚、アメリカ人を犬として描いた漫画家アート・スピーゲルマン、など。

病床読書その②:ジョージ・マーシャル著。「なぜ脳は気候変動を見過ごすのか。」

Don't Even Think About It: Why Our Brains Are Wired to Ignore Climate  Change: Marshall, George: 9781632861023: Amazon.com: Books
人間の脳には論理的な部位と感情的な部位がある。生存本能や危機察知は回路が単純で即刻な感情部位が担う。気候変動は、感情部位からも論理部位からも、人間の生存本能や危機察知の回路の全てを滑りぬける一番厄介、かつ深刻な生存危機である。これを大衆にうまく伝達し効果的な行動へと移行させるためにはどうすれば良いのか。社会心理学・進化心理学・脳神経科学・危機回避専門家・社会運動家・経済学者...色々な人とのインタビューを基に書かれた一冊。その結論は、何千年も続く宗教の布教パワーに学べ、という物だった(著者は無神論者)。なぜ宗教は証拠不十分な神、曖昧な予言でも信じるのか。コミュニティーベース、行動ベース、習慣・伝統ベース、そして疑問や憂いや不安を包括する精神的交信の場を提供するから。このモデルに沿えば、環境問題対処への大衆協力も可能になるはず、という提言。

今、環境問題について付け焼刃で詰め込み勉強をしているべきなのです。これはまた追ってより詳しく書きますが、実は気候変動音楽キャンペーンに関わる為の最初の会合が明後日あるのです。メンバーは有名な心理学者や環境運動家・環境科学者・広報専門家、など。病床でいくつか環境問題に関するドキュメンタリーなども観ました。温暖化もその影響も予測をどんどん上回る勢いで体現化し、移住を強いられる環境移民の数はこれから膨れ上がる事は間違えないというのが一般的な専門家の見解の様です。居住可能地域・食料生産量・エネルギー・水...気候変動による資源の激減は、非常な困難をもたらします。その上に温暖化による干ばつ、洪水、山火事、台風、竜巻などが次々と襲ってくるのです。

私は主に英語でリサーチをしていますが、今朝気になってちょっと日本語でググってみたところ、日本ではあまり環境問題が取り上げられていないようですね。これはなぜでしょう?

4 thoughts on “明鏡日記㊹: 病床読書評『ボスニアのフェルメール』と『なぜ脳は気候変動を見過ごすのか』”

  1. お疲れ様です。

    体調不良とは驚きでした。
    ある面、超人かと思っていました。
    頭脳明晰で頑健が最も望ましのですが
    生身の人間であれば、そうはならないようですね。
    絶頂から奈落の底へ。
    明日が知れないから、芸術が存在するのだと思います。

    小川久男
    なぜ?芸術は人間を幸せにする一重お幸せにする

    1. お優しいお言葉、ありがとうございます。もう元気です!
      2冊とも大変お勧めです。一人でも多くの方に読んでいただきたいです。
      真希子

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