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今年の目標は、「信じる」

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 さて、題名に掲げた今年の目標「信じる」と言うことについてです。 私はニューヨークの友達の一部で「connection goddess (コネクションの女神)」と呼ばれています。Connectionと言う単語には「乗物の乗り継ぎ」と言う意味もあり、私はなぜか、乗り継ぎのタイミングの運が抜群に良い(と思われている)のです。きっかけはもう何年も前、友達と連れ立って出かけた演奏会に遅れそうになり、焦った皆を落ち着かせようと私が冗談で、「大丈夫、私と言う女神がついているからね」と言った瞬間に電車が遠くからホームに滑り込んできた、と言う嘘のような本当の事件です。ニューヨークの地下鉄は運送台数がかなり多く、これはただ単にタイミングが良かっただけの話なのですが、それ以来私と出掛けた友達が良く「今日は“女神”が一緒だから、乗換がスムーズだね」とか、たまたまホームについた瞬間に電車が滑り込んでくると「やっぱり!」とか、始めは冗談で言っていたのが、段々定着して来てそのうちに電車が来ないと「今日はどうしたの?調子でも悪い?」と、半分真顔で聞かれ始めるようになりました。私がロスに移ってからは「遅れそうなときは、心の中でマキコに祈っているよ」と言われるくらいです。 不思議なのは、そうやって周りに言われ続けると、自分でも何だかその気になってくる、と言うことです。そして、都合良く電車のタイミングが素晴らしい時はひそかに誇らしい気持ちでそのことを良く覚えていて、タイミングが悪い時は(今日は何かが私の能力を邪魔している)と「例外」としてサッサと忘れてしまっているのです。そして、そうやってその気になっていると、現実に電車がどうであれ、幸せ度はずっとアップしているのです。 私は宗教にほとんど縁無く育ちましたし、そう言う私がこういうことを言うのは僭越かも知れませんが、信仰を持っている知人を見ていると、「神が守ってくれるから悪いことは起こらない」と信じ、困難に出会うと「これは神に与えられた試練だ」と考え、突き進んでいる様に思えます。こういう究極的な楽観性、信念と言うのは、別に特定の宗教を信仰しなくても、一人の人間として強さの源にすることが出来るのではないでしょうか。 私は自分を信じたい。自分がどんな状況においても、正直にベストを尽くす姿勢を崩さない人間であることを信じたい。そして、私は音楽が普遍的な人間性をコミュニケートするパワーを持つ、と信じたい。それから私は人間性善を、そしてもっと身近には自分の友達、家族を信じたい。そして、人生に起こる全てのことは、意味が在って起こっている、と信じたい。それが私の2010年の目標です。

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また、風邪

今年は何度も病気になってしまった。 11月のリサイタル前にのどが腫れたし、 2月に学校のオケとラフマニノフのパガニーニ狂詩曲をレオン・フライシャーの指揮で弾く、 責任重大な本番前にも風邪をひいてしまい、冷や汗をかいた。 そしてまた、風邪です。 咳、鼻水、痰、熱は無いけど、けだるい状態です。 それにかこつけて、映画を沢山見ています。 実はマンハッタンに二泊三日する予定の前夜、38度の熱を出してしまい(アチャー)と思っていたのだが、 予定をもう一度組み直すのは不可能にも思え、それから高齢の保護者に移したくない、という思いで、 早寝と気合で熱を下げて、マンハッタンに出かけて行ったのだ。 そして帰ったその日はクリスマス・イブ~日頃の感謝をこめて保護者を夕飯に招待して、 クリスマスの日は保護者と私の友達を招いたクリスマス・パーティーで盛り上がり、 楽しく予定が詰まっている時は張り切って病気なんて吹き飛んでいるのだけれど、 ちょっと気が弛むとすぐ風邪ひいちゃう。 本番前の風邪は(そろそろ準備OK。このまま行けばばっちり)と思った瞬間に弾いてしまう。 そう言えば、ギリギリの所でいつも頑張っていた7週間半のタングルウッドでは一度も風邪をひかなかった。 病気は嫌いではない。 貧乏性だから、ぬくぬくして、ぼーっとするのは風邪を引いてないと罪悪感で無理なのです。 だから、今は結構幸せな気分で、気が向けば練習し、文献を読み、 気が向かなければ際限なくテレビを見たり、窓の外をボーっと見ながらお茶を飲んだりしています。 明日はまたマンハッタンに出かけて行ってレッスンを受けて、友達と会います。 今日でしっかり直さないと。

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大雪

サラサラの雪が、月並みな言い方だが音も無く降っている。 昨日の夜から天気予報が大声で警報を発していた。 水気のほとんど無い雪で、桜の花ビラみたいに、風が吹くとサーっと模様を描きながら舞う。 みるみるうちに景色が白に染まって行く。 空気が乾燥しているので、外に出ると最初の一瞬は肌が引き締まったようなピリピリした快感がある。 寒さを感じ始めるのは30秒くらいたってから、肌の下で、である。 段々骨がきしむような、骨がギューっと絞られているような、「寒さ」になってくる。 雪がやむ頃には、もう少し暖かくなっているはずで、太陽が出てきたらば雪に反射して、きれいだろう。

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移動日について

演奏活動で、特にソリストとして生活の糧を得ようと思うと、物凄い量の旅をすることになる。 本当のスーパースターになると、ほぼ一年中ホテル住まいで、家なんて持つほうがばからしくなるらしい。 私の友達や教授の何人かは、素晴らしい才能と経歴でそう言うソリストになる機会はあったけど、 移動とホテル住まいで参ってしまい、演奏活動をギブアップした人達が何人もいる。 飛行機の中で眠れない、ホテルで眠れない、飛行機でアレルギー反応を起こしてしまう、 あるいはホテル住まいで、いつも新しい知人に囲まれている生活で鬱になってしまう、 など、色々な理由を今まで聞いてきた。 ところが、私は移動日は大好きなのである。 飛行機、バス、電車、どんな移動手段も大好きで、眠ければ全然問題なく眠れるし、 プログラム・ノートを書くとか、ある曲の勉強をする、ペーパーを書く、本を読むなど目的があれば かけられる時間は始めから分かっているし、飲み物とか持ってきてくれるし、凄く集中できる。 飛行場も、バス・ターミナルも、電車の駅もいつも興味を持って歩きまわる。 それぞれのローカルな工夫が面白いし、人間観察も面白い。 景色を眺めるのも大好きだ。 飛行機で初めて行くところに向かって下降していく時は、私は本当に窓にへばりついている。 農場なのか、工場地帯なのか、自然が多いのか、都市か、都市近郊住宅街なのか、 観察しながら、次の演奏会での私の聴衆の生活を想像してみる。 この人たちは、どれくらい演奏会に行く機会があるのか、どう言う教育を受けてきているのか、 どう言う価値観で、どう言う人種で、どう言う生活を送っているのか? 目的地について、乗物から一歩新天地に踏み出す瞬間の空気、においも好きだ。 (ああ、ここはこういう所なんだあ)、と思って嬉しくなる。 ホテルも大好きだ。 ホテルのお風呂は不潔のような気持ちがして入れない、と云った友達が居たが、 私はホテルのお風呂は後で自分できれいにしなくて良いので、大好きだ。 夜も大抵のホテルのベッドは私のおうちのベッドよりずっと大きくてほわほわで、 楽しいので、ぐっすり眠れる。 昨日のこの時間は摂氏12度のロサンジェルスで荷物造りをしていた。 今日は、零下7度のNYで、冬景色を見ながらブログを書いている。 愉快、愉快。

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緊張 vs。 弛緩

「あ~~~」と叫びながら走り回っている様な午前中と午後の後、 ぽっかりと夕方に一時間半、開いたりする。 渋滞に巻き込まれて、演奏する約束の時間に間に合うかドキドキしながら一時間車に乗った後、 意外と早く着いてしまって、演奏までに30分くらい手持無沙汰でほーっとしたりもする。 今日のスケジュールはこんな。 8時   起床、身支度、朝食、メールなど雑用 9時半 学校のオケのリハーサルに副指揮者として、出席(ただ聴いているだけだけど、一応指揮者の注意をスコアに書き込んだりする) 12時  色々な教授とこれからの期末のスケジュールについてミーティング 12時半 友達と昼食 1時   練習 2時   オーボエのレッスン(デュティユのオーボエ・ソナタ=素晴らしい曲!) 3時   今夜の演奏の打ち合わせ 5時   マンハッタン・ビーチに向けて出発 6時   コルバーンに多額の寄付をしてくれているお金持ちのうちのパーティーの余興で演奏 弛緩している時、どう言う風に自分をその前の緊張状態の状態の時得た情報を消化・吸収し、 次の緊張状態に向けて、自分のコンディションを立て直し、頭を切り替えて準備するか、 と言うことが、こういう日々を、楽しく過ごすために重要なポイントだと思う。 今日の2時からのオーボエのレッスンは素晴らしかった。 コルバーンのオーボエの先生はアラン・ヴォーゲルと言って、 例えばヒラリー・ハンのバッハのヴァイオリン協奏曲全集の録音の時 ヴァイオリンとオーボエのダブル・コンチェルトのオーボエの独奏を務めたりするスターだけど、 仏教徒で、小柄で、朗らかで、とっても優しい人。 今日レッスン中に他の生徒から教えてもらったのだけど、 なんと大学はハーヴァードの英文学で修めているそうだ! 「大事な音を弾く前には、部屋の空気の振動を感じ取って、それと発音を共鳴させるつもりで」 とか 「モーツァルトは、『作曲は美味しい夕飯を食べて、パイプをくゆらせて、散歩をして、 良い気持ちで触発され、一曲が一瞬で頭の中で出来上がる。 頭の中で出来上がった曲は忘れたりはしないから、 時間のある時書き出すだけ』と言ったそうだけれど、 そのモーツァルトが一番難しいと言ったのは、正しいテンポを決めることだったんだよ。 それぞれの楽章の正しいテンポが決まれば、後はほとんど自動的に出来上がるよ」 とか、色々触発させてくれた。 彼は、ピアノも沢山弾くのだけれど、 イェ―ル大学では何と、バロック奏法で重鎮のラルフ・カークパトリックにピアノを習ったそうな! そして、来学期は、私にバロック奏法を伝授してくれるそうな! とっても楽しみ。

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