音楽人生

自閉症のためのコンサート

今日は、アメリカとイギリスでもう10年ほど活動を続けているNPO「Music for Autism(自閉症のための音楽)」主催による演奏会を、今日やって来ました。クラリネット奏者で、私と色々な活動を共にしてくれている麻衣子さんとの共演です。 「自由に、演奏の妨げにならない限り、したいことは何でもさせてあげて」と前もって説明を受けていましたし、過去の演奏会でのエピソード(舞台によじ登って演奏者の周りを演奏会中休み無くぐるぐる20分ほど走り回った後、そっと演奏者一人一人の背中にキスをして女の子の話、とか)を沢山聞いて臨んだ演奏会だったので、ビックリすることなく、彼らの視線から音楽を一緒に楽しめる、とても新鮮な体験となりました。 例えば、ピアノの下にもぐりこんでしまった男の子がいました。多分、5歳くらい。そして私の演奏中に時々下から手を伸ばして、そっと高音の鍵盤を静かに鳴らすのです。お父さんが舞台から男の子をおろそうとしましたが、その子は本当にそっと弾いているし、時々だけだし、「大丈夫ですよ」と言いました。 それから楽器紹介などのトークの時に、大事な言葉を大きな声で繰り返す男の子がいました。(9歳くらいかな?)「ピアノ!ピアノ!」「クラリネット!クラリネット!」「ドビュッシー!ドビュッシー!」など、など。その子が演奏会の後に私と麻衣子さんに握手をしてきてくれました。そしてそれぞれに「ピアノを弾いてくれて、ありがとう」「クラリネットを弾いてくれて、ありがとう」と静粛に言うのです。なんだか、この演奏会のお礼ではなく、まるで「ピアノに捧げる人生を送る事を決めてくれてありがとう」と言われた様な気持ちがして、背筋が伸びてしまいました。 サン・サーンスの「動物の謝肉祭」から抜粋でいくつか弾いたのですが、「亀」を麻衣子さんがバス・クラリネットで、私がピアノで演奏していた時は、子供たち(自閉症の子も、普通の子も)が自主的に急に亀になって床を這い始めました!子供はいいなあ!! 私たちも楽しくなってしまいました。 自閉症の人と言うのは、興奮すると声を出してしまったり、大きな動作を繰り返し長時間行ったり、と言う特徴があるため、演奏会などには『他の聴衆の邪魔になる』などの理由で行きにくくなります。そうすると、自閉症の本人だけでなく、家族も結局演奏会に行きづらくなってしまいます。けれども、音楽による自閉症の子供への精神・知覚向上効果と言うのは、一般の人以上、と理解されており、さらに自閉症の人の中には音楽(でも、他の分野でも)のずば抜けた才能を持った人がたまにいます。そういう人たちのため、またその家族のために、生演奏を供給しよう、と言うのがこのNPOの趣旨です。資金は個人や企業の寄付からまかなわれており、家族の経済状態に関係なく参加できるよう、入場料はただです。そして演奏家にはきちんと報酬が払われます。 自閉症だけでなく、盲目でもある男の子がいました。(多分15歳くらい)。そして演奏海中はずっと静かに座って聞き入っていたのですが、演奏が終わった後、ピアノのところに来て、ドビュッシーの「月の光」の触りの部分を鍵盤で探し始めたのです。次の音が分からなくなったところで私が助け舟を出すと、どの鍵盤を弾いたか見えないはずなのに、「パッ」とその音を拾って続け始めます。お母さんによると、その曲は初めて聞くそうです。 人間と言うのは、素晴らしいなあ。そして、音楽と言うのは凄いなあ、と、改めて思いました。

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グッド・タイミング!

金曜日は、ヒューストンの日本人会の方が中心となって 私の5枚目のCD,「ゴールドベルグ変奏曲」完成記念の会を開いて下さいました。 (このCDに関する情報はこちらから=http://www.cdbaby.com/cd/makikohiratapianist) 土曜日の演奏会のための学校のオーケストラのリハーサルが5時に終わってから ヒューストン・ダウンタウンにある会場にドレスを持って直行! そのまま音出しをして、会場の音響を確かめます。 私と会の趣旨のの紹介、ちょっとゴールドベルグの触りの演奏の後、 皆さんとのお食事(ステーキやえびやチーズケーキの出るコースで、美味しかった!) そして私のデモンストレーションを交えたゴールドベルグに関するトーク。 皆さんにこやかに身を乗り出して聞いてくださり、活発な質問が沢山出る、 とても素晴らしい会となりました。 ヒューストンで、このように日本語で私の熱意を分かち合って下さる同郷人と一緒に 熱く語り合う時間を持てて、本当に凄く嬉しかった! 持って言ったCDが、完売してしまいました!! オーマイゴット! これから「ヒューストンの若手演奏家を支援する会」で定期的に演奏会をしよう!と 積極的におっしゃって下さる日本人会のVIPの方々と夜中の2時まで語り合いました。 そして昨日の夜は学校のオーケストラの演奏会。 私は、ライス大学、シェパード音楽学校のオーケストラは正直、 多くのプロのオケ(例えばヒューストン交響楽団)より上手いと思っています。 大きな理由を二つ挙げると、指揮のラリーラックレフが素晴らしいのと、 一つのプログラムを入念に3週間リハーサルする、と言う事があると思います。 私がこの学校に来た理由には、このオケの評判とラリーラックレフの物凄さがあります。 そんなわけで、私はオケの鍵盤パートを誇りを持って担当しているのですが、 昨日はピアノ・パートがかなり重要なレスピーギの「ローマの松」、そしてバルトークの「舞踏組曲」が ドヴォルザークの交響曲8番に続くプログラムで、私はちょっと緊張して望みました。 シェパード音楽学校の大ホールは2千人ほど入る、本格的なものです。 音響も素晴らしいのですが、照明も素晴らしい。 毎回、ステージに上がって、調弦が終わり、指揮者がステージに登場する前の瞬間に 客席の照明が落とされ、ステージがほわ~っとまぶしくなると 戦意が高まる、と言うか思わず高揚感を感じます。 昨日の演奏は素晴らしかった。 本当に「ノル」と言う感覚でした。 もう次のパッセージとかのことを考えていない。 音楽の事だけを考えていて、自分のパートは思わず弾いてしまう。 考えていなくても弾かずには居られないという感じ。 オケと本当に一体となっている感覚。 私は結構、素晴らしい人生を送っているではないか、と思います。 とは言え、やはり寝不足の本番は禁物です。 昨日は午後のゲネプロの後、前後不覚に1時間半熟睡してしまいました。 起きたら、一瞬今朝なのか、午後なのか、何曜日なのか思い出せなかった。 20秒後くらいに(ああ、今日は土曜日でオケの本番の日)と思い出し、 あわてて時間を確認して、まだチャンとシャワーを浴びる時間があることを確認してホッとしました。 そして本番の後はかなりぐったり。 涙が出るかと思うくらい疲れていました。 そのまま帰宅して眠る事実に10時間。 しかし、今日は冬時間の始まり。 日照時間がずれるのにあわせて、真夜中に一時間時計を戻すのです! と、言うわけでたっぷり寝たのにその割には早起き、と言う超お得な日! グッド・タイミング、冬時間、ありがとう! 今日はショスタコーヴィッチの交響曲1番のピアノパートを担当します。 これも重要なピアノ・パートで有名な曲です。

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冬休みまで、後一ヶ月の追い込み!

これからの予定を書き出してみます。 11月4日(金)  6時半~「ヒューストン若手演奏家を応援する会」ヒューストン日本人会と日本総領事館の後援による「ゴールドベルグ変奏曲」CD完成記念の会。(お食事、トーク、演奏) 11月5日(土) 朝、Campanile(音楽以外の専攻のライス大学学生のオーケストラ)のリハーサル指揮。(ヴァイオリン・セクショナルを仕切る) 午後、Shepherd School of Music(ライス大学音楽学校の正式名)オーケストラのゲネプロ。 夜 8時~、Shepherd School Symphony Orhcestraの演奏会。レスピーギの「ローマの松」とバルトークの「舞踏組曲」のチェレスタ・パート担当 11月6日(日) 夕方5時半~ ヒューストンの高校生のためのオーケストラの演奏会でショスタコーヴィッチの交響曲一番のピアノ・パート担当 11月8日(火) 図書館リサーチのクラス、試験(参考文書・百科事典・辞書について) 11月10日(木) 作曲家Steve Stuckyと顔合わせ、と翌日の演奏会前の曲の解釈確認、打ち合わせ。 11月11日(金) 現代音楽シリーズ、Syzygyにて、Steven Stucky のソロ・ピアノ曲「Album Leaves」を演奏 11月12日(土) 朝、Campanile のリハーサル。正式な指揮者がこの日は休みなので、代わりに仕切る。 11月13日(日) 朝、ヴォランティアで、日本人会の方々と地域の公園の掃除 11月15日(火) 図書館リサーチのクラス、文献まとめのプロジェクト締め切り 11月18日(金) 誕生日! 11月19日(土) Campanile,最終リハーサル 11月20日(日) Campanile 5時から7時までゲネプロ、8時本番 11月22日(火) 中世音楽のクラス、ペーパー締め切り「メシアンの中世聖歌の使用について」 11月24日(木) 感謝祭 12月1日(木) 朝、図書館リサーチ方の期末プロジェクト締め切り 中世音楽のクラス、期末試験 夜、8時からコープランド、クラリネット協奏曲のピアノ・パート担当 12月3日(土) 1時~「自閉症児と家族のための演奏会」出演 思ったとおりの効果あり。 書き出してみたら、思ったよりは圧迫感が少ない! 出来る、出来る! 前向きに、前進!

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文武両道!

私がここで言う、「文武両道」の『武』の方は、練習の事である。 運動もまったく不足しているのだが、非常時なので冬休み(あと一ヶ月ちょっと!)まで目をつむる。 今、勉強が大変! 図書館リサーチ法(Bibliography)のクラスが色々な辞書の出版社、編集者のバックグラウンドを調べ、記事の信憑性を評価する、とか、膨大にある音楽百科事典の類のタイトル、用途、年月日などを覚える、とか兎に角時間がかかる宿題が多い。それに加えて、中世音楽の試験が来週の木曜日にある。さらに、指揮のクラスでは段々責任や担当曲を増やされ始めた。これは大変光栄な事なのだが、指揮法を学ぶ、と言うより半分は指揮する準備のための勉強方を教わっている、と言う感じで、でもこれを実践しようと思ったらそれなりに勉強時間を割かなければいけない。 しかし、ここで練習を割愛してはピアニストがすたる! 今練習中なのは、4月20日に演奏するメシアンの『天の都市の色彩(Couleurs de la Cité Céleste )』、 11月11日に演奏するSteven Stuckyと言うアメリカ人作曲家の「アルバム・リーフス」 11月4日にゴールドベルグCDリリース祝賀会があるので、そこでちょっと弾くためにゴールドベルグ、 11月5日にオーケストラの定期演奏会で弾く、レスピーギの「ローマの松」のピアノパートと、 バルトークの「舞踏組曲」のチェレスタ・パート。 そして特に演奏予定は無いけれど、この冬NYに滞在時にクローデ・フランクに聞いてもらいたい、 ベートーヴェンの協奏曲4番。 毎日最低2時間半は練習、が目標である!! そして指揮は毎日30分。 睡眠は出来るだけ削らず。 気分転換にストレッチやその場でジョギング。 好きこそ物の上手なれ、それぞれその時やっている事を『楽しい!』と思う気持ちを忘れない!

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有効な時間の使い方

やる事が沢山ある。 練習、指揮、オーケストラ、中世の音楽の勉強、食事、睡眠、演奏活動にまつわる手配、メール、友達付き合い… そのリストの全てがとても楽しい事なのだけれど、 でもその集まりが時に(こなしきれないかも知れない!)と言う焦燥感を醸し出したりする。 さらに(こんなに毎日忙しくて、出会いが無い!私の赤い糸はどこに繋がっているの!?) と、トンでもない(でも無いのかな?)方向に頭が飛んで、集中がはるかかなたに飛んでいったりもする。 でも、この頃ちょっと工夫をすることにした。 それは、メリハリをつける工夫をする、と言うことである。 例えば、練習はタイマーをつけて25分ずつする。 25分のベルが鳴ったら、ストレッチしたり、水を飲んだり、トイレに行ったりして、絶対に休む。 でも、25分間は絶対に他に何もしない。 と、自分に約束すると、25分でかなりはかどるのである。 それから(忙しい)を理由に友達のSOSを断るのを止めた。 例えば、今週の月曜日にパリに引っ越す友達がいた。 彼女に日曜日の夜、引越しの最終でどうしてもできない事がいくつかある、とSOSを出された。 私はペーパーの締め切りがあったけど、「夜に行く」と約束した。 そして耳栓をしっかりして、本当に猛烈にペーパーに集中したのである。 限られた時間だったから、 (この時間には彼女の家に向かって出発しなければ)と言うプレッシャーがあったから 際限無く時間が在った場合よりも短時間で済ませられたと思うし、集中できたと思う。 そして、彼女にはとってもとっても感謝されたのである。 そして実際私が手伝いに行かなかったら、彼女はきっと全部出来なかったと思う。 物凄い満足感があった。運動にもなったし。 人が自分に何かを要請してきたら、何としてでも都合をつけることにする。 私の新しいポリシーである。 もう一度、宣伝させて下さい。私の新発売、5枚目のCD! http://www.cdbaby.com/cd/makikohiratapianist

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