Rice University

最終日-The Library of Congress ワシントンDC

バーンスタインは作曲しながら卑猥な落書きを繰り返ししている。 チャールズ・アイブズの直筆は意外にもぶるぶる震えている。 シューベルトの直筆と思われていたものが、実は出版準備の為のコピーイストの物だと発見して残念。 ブラームスの直筆は読みにくい。急いで書いてるみたい。 音符を全部書いてからフレーズとかを「ザ!ザ!」と書き込んでいる。凄い勢い。 ベートーヴェンのは汚なくて、ほとんど全然読めない。 何を大事にしてこだわって書いて、何がやっつけ仕事だったのか、 筆の圧力や丁寧さ、雑さ、筆の勢い、溜めこみ、力のかけ方、抜け方などで 段々分かって来るようになる。 面白い。

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ワシントンDCにやって来ました。

去年に引き続き、ライスの音楽学部は博士課程の生徒5人を選び、ワシントンDCに送り込みました。Library of Congress(米国の国会図書館)でリサーチと演奏をするためです。Library of Congress(以下、L of C)はアメリカで一番古い文化関係の建物で在り、世界で一番大きな図書館です。 今年選ばれた5人は一年目から私とチェロの女の子、3年目から作曲家とヴァイオリニスト、4年目からもう一人ピアニストです。このプロジェクトは2段階になっています。私たちは今回、12月5日から10日まで5日間リサーチをします。2段目は、3月1日から5日までもう一度DCに戻ってきます。この時は私たちは演奏をする予定です。DCの演奏会の前はヒューストンで同じプログラムで演奏会が在ります。 プロジェクトの第一段階の今回は私たちはリサーチをします。リサーチの課題は大きく分けて二つあります。 1) L of Cの音楽のコレクションは直筆の楽譜、直筆のコピーが多く在りますが、その多くはきちんとカタログされておらず、これらのコレクションのきちんとした記録が在りません。何が在るのか、把握している人がいないのです。私たちはこれらの膨大な量のコレクションに目を通し、自分に興味が在る物をカメラで写したり、コピーを取ったりする事が許されています。去年のプロジェクト・チームはバーバーのトリオ、まだ存在を誰も知らなかったトリオ、を発見しました。私たちがこうやって探している過程で、少しずつこれらのコレクションをカタログするお手伝いをするのです。ここで見つけた物の一部を、私たちは2月と3月にヒューストンとワシントンで何回かの演奏会で演奏する事になっています。 2) ライス大学は1912年に創立されました。2012年は創立100年の大きなお祝いとしてイベントが沢山企画されています。その一環として一年間にわたるコンサート・シリーズが予定されています。この演奏会で演奏されるのは、1912年に書かれた、あるいは出版された曲、または、1912年に(特にヒューストンかヒューストン近辺で)演奏された曲、です。私たちは1912年に書かれた曲、あるいは出版された曲、そしてヒューストン近辺で在った演奏会の曲目を調べます。 学校は私たちの経費を全て負担してくれた他、L of Cの真向かいにあるホテルにそれぞれ一人部屋を取ってくれ、お小遣いもくれました。明日の朝8時半に図書館の係りの人が迎えに来てくれます。

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「マインド&ボディー」復習

明日、「マインド&ボディー」の最後のクラスが在る。 とても良いクラスだったし、私の復習も兼ねて、日本の読者の皆さまにコースを順に追って紹介したい。 1)Performance Psychology 今、「Performance Psychology英和訳」とグーグルして日本語の対訳を探そうとしたが、出てこなかった。まだ日本では未開発なのだろうか。もともとはオリンピック選手やプロの格闘家、スポーツマン(や、時には兵隊)などが好成績を残す手伝いをするための研究、スポーツ・サイコロジーとして開発された物を、近年演奏や演技をする人たちの研究やカウンセリングとして開発されている心理学の新分野である。私も学校で紹介されたり、自分で本を読んだりと、それなりに知識は在ったつもりだったが、このクラスで紹介されたJohn Eliotと言う人のヴィデオは今までの私の考えを覆すものだった。(蛇足だが、T.S.Eliotの孫らしい―それから全く関係ないがとてもハンサム) 1) 「Psychology(心理学)」と言ってしまうと何か治療するべき問題がある、と思いがちだが「Performance Psychology」と言うのは、問題が無い、むしろ平均以上の能力を持った人たちがその能力を最大に発揮する、そしてその能力を伸ばすためには、どうしたら良いか、一緒に考えると言う分野である。(私は今までPerforamnce Psychologyと言うのは緊張をどう克服するか、とか正にそう言う「問題を治療する」事だと勘違いして、そう言う分野に興味を持つ自分を「問題がある」と思っていた 2)いわゆる「本番の緊張」と言うのを一般的に「平常心でない=悪い」と思いがちだが、演奏や演技をする時は平常以上の事をしようとしているのであり、緊張と言うのは五感を研ぎ澄まし、条件反射を良くし、普段以上の能力を発揮しようと身体が自然に準備をしているので、とても良い事である。悪いのは「自分が緊張している」と意識すること、そしてその緊張を悪い物、と思う事によって萎縮してしまう事で在る。口が渇く、と言うのは消化に費やしているエネルギーを瞬発力に回しているから。手先・足先が冷たくなるのも、同じ原理である。 3)演奏家、スポーツ選手など、特殊能力を持つ人たちは厳しいトレーニングを経て来ている。自分にも厳しくなりがちだ。しかし、トレーニング中の厳しさと言うのを演技に持ち込むと、自意識過剰になり、能力が発揮できない場合が多い。トレーニング中の厳しさと、本番の自信と言う二つの姿勢を上手く使い分けられるようになる事。 2)Mindfulness 「Certified Mindfulness Teacher(免状を持った”マインドフル”の先生)」であり、カウンセラーの資格も持っているゲストが来た。Mindfulと言うのは、過去も将来も忘れ、先入観や価値判断を全て捨てて、現状をあるがままに受け入れる、と言う何だかとっても仏教的な姿勢の事。瞑想や、深呼吸の仕方を教わった。 3)Dalcroze(ダルクロース)のEurhythmics(ユーリズミックス) フランスのEmile Jaques-Dalcroze(1886-1950)と言う人が音楽教育の一環として発達したメソッドで、音と理解の間の伝達(知覚)の方法として音楽に合わせて身体を動かす、と言うもの。実際に皆でリズムや音楽に合わせて歩いたり、走ったり、スキップしたり発声したりして、とても楽しかった。楽器の練習に一日何時間も座りっぱなしだったり、スコアを分析する為に何年も勉強したりする音楽家にとって、音楽と言うものは時としてとても観念的になってしまう。それを避けるための手段、音楽を自分と共に成長して行く生き物として息吹かせるための手段として、教わった。 4)Alexander Technique F.M.アレクサンダーと言うイギリスの役者が100年ほど前の在る日突然、舞台上で全く声が出なくなってしまい、長年の原因追究の結果発達した全ての演奏家、役者の為のテクニック。 知覚や思考と言うものは動き無しには在り得ず、動きと言うものは知覚や思考無しには在り得ない。だからどう動くかと言う事が私たちの思考、そして世界をどう知覚するかと言う決め手となる。その為に姿勢や、自分の動きの癖を自覚し、改良する。背骨の一部一部を全てバランス良く重ねていき、その上にバランス良く頭の重みを載せると言う姿勢を取る事によって、一番楽で、柔軟で、効率よく、一番反応しやすい自分になる事が出来る。 5)舞台上での存在感をどうやって醸し出すか 普通楽器奏者より、歌手の方が(特にオペラ)演技の要素が多く、こういうことに関して詳しい。この「マインド&ボディー」のクラスは楽器奏者の為のクラスだったので、オペラ歌手が来て、このクラスを教えた。まず、袖から舞台に出る時の目線、姿勢、歩き方、呼吸の仕方、それから到着した後どうやって聴衆に対面するか、お辞儀の仕方、などを教わった。女性はハイヒールを絶対履きなさい、と言われ少し反発を感じたが、ハイヒールを履く事で下腹に適度な緊張が加わり、またヒールのコツコツと言う音が聴衆の耳を準備する、など色々言われて、ちょっと納得した。それからこれから演奏する音楽の意図を頭の中で出来るだけ明確にする事によって自分のステージで演じる役がよりはっきりして、存在感を醸し出しやすくなる、と言う事にも共感した。 6)聴覚を守る ピアニストには少し関係無い事だが、オケの奏者と言うのは金管や打楽器などから物凄い音量にさらされ、聴覚がダメージを受ける事が多いらしい。今のアメリカでは労働協同組合で指定されている「仕事による聴覚のダメージ」の規定は「会話ができなくなる」であるが、オケで受けるダメージと言うのは高い音波が聞こえなくなるダメージで、音楽家としてははっきりと仕事に差し支えが在るダメージであるが、今の所保障が無い。その為に音楽家の為に特別に発達された耳栓の話(値段が高い!)や、どれ位の音量が耳にダメージを起こすか、という具体的な話を聞いた。 7)水分補給の大切さ 人間の体は66%が水分だそうだ。さらに筋肉は75%が水分であり、肺に至っては90%が水分で成っているそう。水分補給が自己ベストを果たすためにどれだけ大事か、と言う話し。脱水症状になると筋肉は収縮する能力が30%低下してしまう。のどが渇いた時はもうすでに脱水が始まっている。水をいつも飲む癖を付ける事。カフェインは催尿の効果が在るので、カフェインを飲む人は水分補給を普通以上に心がける。一番良いのはカフェインを取らない事。一般の人は一日最低8杯の水、汗を沢山かく人は12杯の水を心がける。 8)栄養 特に演奏前の栄養摂取に付いて教わった。演奏前に食べすぎると消化にエネルギーを消耗するので良く無いと言う事は一般的に言われているが、だからと言って食べないのも良くない。一番良いのは血糖値をずっと一定に保つ、複雑炭水化物とタンパク質。例えば全粒粉のパンにピーナッツバター、オートミールと果物など。マグネシウムは神経と筋肉をリラックスする働きが在り、演奏前にとても良い。緑黄色野菜、ナッツ、豆類、全粒の穀物、種類、など。ビタミンB, C, 亜鉛、クロムもエネルギーアップに効果的。 肉は食べても食べなくても良いが、食べるなら付け合わせや薬味として食べる、決して食べ過ぎない。 9)Performing Arts Medicine Association (演奏家、演技家の為の医療機関) 演奏家、演技家(役者、ダンサーなど)と言うのは、財政難の人が多い。それからその楽器や演技に特殊な問題を引き起こす事が多い(腱鞘炎とか、ダンサーや役者の場合摂食障害とか)。こういう特殊なニーズに応えるべく、医者の中の有志が集まってボランティアで毎月一回とかで無料クリニックを経営している。こう言う機関はアメリカの主要都市には必ず一個以上あるそうだ。医者と言うのは子供の頃楽器をやっていたり、演劇が好き、とかそういう人が多いので、結構やっていけるらしい。そう言う医者の一人、女医のDr. Clearmanがクラスに来て音楽家の健康維持に関して話をしてくれました。 1)音楽家=small muscle athletes(小筋肉の運動選手) ―筋肉と言うのは縮小しかしない。縮小だけさせたら、筋肉は硬くなってしまい、逆効果。使用して縮小した筋肉を伸ばすには、他の筋肉を縮小させる。要するに、いつも使う筋肉以外の筋肉を運動する事が必要。 ―身体から離れて所の作業になればなるほど、身体の中心にかかる負担が大きくなる。音楽家は腹筋、背筋を鍛える必要があり、背骨をサポートする姿勢をいつもとる事。 ―腱鞘炎など、怪我や故障をしてしまったら、正しいお医者を見つける事が肝心。その為にまず①その医者の評判を聞く②電話して、専門を聞く③今の自分の問題と似たケースを去年一年でどれくらい治療したか、聞く③自分の事に興味を持っているか、自分を好きか 10)Physical Therapist理学療法士((身体障害者や怪我をした人の社会復帰を助ける医学的リハビリテーションの専門家)の話 音楽家と言うのは神経にストレスがかかる事が多い事。筋肉とは全く違う神経のストレッチの方法などを学びました。それから重心を下げて、腹筋・背筋を鍛える実際の方法、良い姿勢のデモンストレーション、運動の仕方など。例えば運動で自分を鍛える時、一週間に一度10%ずつ①頻度、②一度にやる運動の時間、③一度にやる運動の激しさ、のどれか1つだけ10%ずつ増やしていく。とか、そう言う実際的な情報。 11)フェルデンクライスの先生のお話 モーシェ・フェルデンクライス(1904-1984)と言うのは、イスラエル人で、蛇足かもしれませんがヨーロッパで一番最初に柔道の黒帯を取った人です。この人がアレクサンダーテクニックに良く似ていてちょっと違った「フェルデンクライス・メソッド」を開発しました。 1)神経と言うのは自己治癒能力を持っている。正しく動く事によって、この神経の潜在能力を誘発する事が出来る。 2)フェルデンクライスと言うのは1)に加え、神経に入ってくる雑音を正しい動きによって消し、リラックスさせる事を意図する。 3)「動きによる意識」「身体の中から行う、自分の体の再発見」「呼吸、動き、そして触感を使って自分の体の再認識をすること」 フェルデンクライスのクラスで特に強調されたのが、「休憩の大切さ」です。例えば一つの運動をした後、目を閉じて、運動にかかったのと同じ時間、ただ静かに座る、と言う事をします。こうする事によってよりこの運動を良く消化でき、運動効果が上がる、と言う理由からです。同じように睡眠の大切さもお話に出ました。睡眠と言うのは色々なステージが在るそうですが、7時間目に至って初めて脳がカルシウムを分泌し、短期の記憶が長期の記憶にインプットされる作業が行われているそうです。ですから7時間以上の睡眠が絶対必要。鬱出ない限り、睡眠は多ければ多いほど良い、と言われました。他にも睡眠によって色々体中の自己治癒能力が作用する様です。

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勝った!

学期が終わりに近付いている。 今日は博士課程セミナーの今学期最後のクラスが在った。 今日はクラスで何をするのか、一体クラスは本当にあるのか、昨日の夜11時すぎまでクラスメート同士でと電話のやりとりをグルグルして一応行ってみる事に皆で決め、クラスに行ったら「今日はもう一度模擬面接を行います」と言われた。大学での教職の時の面接の想定をしてやる、面接ごっこである。正直、皆で顔を見合せながら(え~、また~?もう良いよ~)と言う感じだったが、今日のはちょっと様子が違ったのである。 まず、博士課程四年目で、今まさに大学での教職を求めて就職活動真っ最中の先輩たちがクラスに招かれて面接官の役をやった事。それから、勝ち抜き戦で、クラスメートが4人で選び抜かれて行くのである。最初は4人が一人ずつ壇上に上がり、博士課程4年生の先輩たちと、同級生3人に質問の集中攻撃を受ける。このラウンドを勝ち抜いたら(これは皆の投票で決まる)最終選考で二人がもう一度『面接』されるのだ。 博士課程4年生たちは今正に自分たちが就職活動最中とあって、私たちの面接での態度の観察の仕方もシビアだし、出してくる質問も厳しい、一筋縄ではいかないものが多い。それに同級生とは違って、そんなに親しく無いからやっぱりちょっと緊張する。同級生同士もやっぱりちょっと『負けたら悔しい』と言う気持ちが少しはあるから、お互いにちょっとずつ厳しくなる。(もっとも、今日の課題が明らかになった時、4人で「勝った人は残りの3人にビールをおごる」と約束したので、「お金が無いからわざと負けなきゃ。。。」とほざいている奴も約一名いたが。) 私は最終進行に残った。やっぱり嬉しい。もう一人最終進行に残った女の子と外で待たされること10分強。そして、やっと呼ばれたと思ったら「ここにいる面接官を音楽理論のクラスを始めて学んでいる1年生だと想像して、調性とシャープ、フラットの関係について、説明して下さい。10分間在ります。」一瞬(へ!?)と思ったが、私は実は修士の時に音楽理論の基本は教えていたのである。お茶の子さいさいである。そしてもう一人最終に残った子が音楽理論が全く苦手なチェリストで、私は勝ってしまいました! やっぱり嬉しい! 約束通りバーに行っておごるつもりでいたら、先生が同伴して来て、私の代わりに皆におごってくれました。 皆で多いに笑って楽しい一時を過ごしました。 学期末にふさわしい幕閉じでした。 勝って、嬉しい!

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多忙ですが、余裕を忘れずに。

多忙な時と言うのは、一瞬の暇が妙に心に残ったりする。 今日は音楽学校とDigital Media Centerを行ったり来たりする一日だった。 本当に駆けずり回っていたのだが、でもこの往復、徒歩4~5分の道中色々な事を感じて、考えた。 先週末から今週末にかけてじめじめと冷たい、底冷えする秋の小雨だったのに 今日は一転して汗ばむような陽気。 風が気持ちよく、曇りだから暑すぎない。 紅葉して乾いた並木の葉が風と共にカラカラ鳴る。 たまに雲の隙間から刺す日光が、長袖のシャツを通して肌を温める。 完璧な気候だなあ、と思いながら行ったり来たりを結構楽しんだ。 ライス大学のキャンパスが、私は好きである。

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