美笑日記2.11:誰のために何を弾くのか

先週土曜日の2月4日、一時間の独奏会を開催して頂きました。このブログでも以前(10月19日12月3日に)言及させて頂いた、私が演奏出来るように地域で基金を募ってアップライトを購入して下さった図書館支部の集会場での演奏です。生憎コロナ禍で2020年に予定されてたこけら落としがキャンセルされて初演は去年の10月になったいきさつを経ながら、2023年は偶数の月に、一年を通じて計6回の独奏会をさせて頂くことが決まっています。10月・12月とすでに2回の演奏会を経て、3回目となった2月4日の演奏会にはすでに顔馴染みの常連さんまでいらっしゃるようになりました。

私は最近、演目を決めずに演奏会を行うことが多くなりました。自分の状態、会場やピアノや聴衆の調子や雰囲気、天気・時事ニュースなどを踏まえて、一期一会のお客様との交流を大事にしながら臨機応変に選曲をし、そのお客様の為に弾き進めたい、と思うからです。一応、目玉となる大き目の曲をいくつか自分への課題と共に準備して、大まかな枠組みやテーマは決めていき、でも臨機応変に即興的に、「お客様との共同制作」というつもりで弾き紡ぐ演奏会。先週はその最たるものとなりました。

  • この日に会場にお集まりになった皆さまとの交流の結果出来上がったのは、こんな音楽会です。
    • ドビュッシー:ベルガマスク組曲より「月の光」
    • モンポ―:曲集「Paisajes(風景)」より「La fuente y la campana(泉と鐘)」
    • モンポ―:前奏曲8番「On a Drop of Water(一滴の水について)」
    • ベートーヴェン:「エリーゼのために」(聴衆のリクエスト:「子供の頃に大好きで弾いて以来、聞いていない」)
    • ショパン:「革命」のエチュード、作品10-12(聴衆のリクエスト:「同じ会場で10月に聴いたのをもう一度聞きたい」)
    • モーツァルト:「トルコ行進曲」(「これも政治紛争の結果生まれた曲ですが、こちらは音楽が国際親善に役だった例です」)
    • モーツァルト:ソナタヘ長調、KV280
      • 1楽章:アレグロ・アサイ
      • 2楽章:アダージオ
      • 3楽章:プレスト

こういう演奏会は、本当に心が通じ合うというか、会場の一体感と信頼感が凄く暖かく、嬉しい会になります。まさに音を楽しむ会、「音楽会」です。私も楽しいですし、お客様も楽しんで下さっているのが分かります。

先週の演奏会からハイライトを5分ほどの短編に編集しました。会場の雰囲気をお楽しみ頂ければ幸いです。

ただ、一抹の不安を覚える自分も否めません。(こんなに安楽で良いのか。)

今まで私の音楽人生に於いて、演奏会というのは命がけでやるものでした。舞台恐怖症を含め恐怖症全般は程度の差こそあれ、恐怖の対象を「命の危険」と体が誤認した時に起こります。このブログでも幾度も書いていますが、口が渇き、心拍数が上がり、手足など体の末端が冷えたり、震える。吐き下したりすることもある...こういう症状は、体が命がけで生存の可能性を少しでも増やす為に、生存に直接関係のない臓器の機能を一時停止し、生存に必須な臓器に全てを集中する結果起こります。経済的にも社会的評価に於いても報われない命がけの音楽人生:毎晩演奏会のツアー人生や、体が命の危険を感じるほどのプレッシャー、朝から晩まで練習の根性もの人生は、誰のため、何の為なのでしょう。

今回は、2泊3日スタンフォード大学までの弾丸出張がラストミネットで入り、演奏前日の午後帰宅。20時間後くらいに、出演する運びとなりました。それでも自信満々で楽しんで弾ける曲を選んで弾いた、という事もあります。(こんなに気楽な片手間で良いのか。)命がけに見合うギャラを頂いている訳では決してない事は、会場の大きさからもアップライトでの演奏でも分かると思います。自分の生活や経済や精神のサステイナビリティ―を考えたら、こういう風に和気あいあいと、弾けるものを弾けるように楽しく弾いた方ががずっと健康的だとも思います。

でも一方でもっともっと自分にぎりぎり挑戦したい!もっともっと難解な曲を聴衆に挑戦状のように提供し続けたい!という気持ちがある事も否めません。もっと大きな会場でフルコンでしか出せない音色を会場いっぱいに響かせたい。渾身込めて、凄いプレッシャーの中で大きなコンサートに向けて、翌日の筋肉痛を見込みながら精一杯練習したい!

私は真剣勝負がしたい!私はピアノ宮本武蔵なのです!

そんな私に、大きな会場でフルコンでしか出せない音色を会場いっぱいに響かせる好機が突然オファーされたのです。8月6日(日)の午後。群馬県の会場。「クラシックに余り馴染見が無いお客さんにも楽しめる演目で」というリクエスト。でも私にとってはコロナ以降初めての本格2時間独奏会です。

誰のために、何を弾くのか。音楽とは、私の音楽人生とは、誰の為の何なのか。

一番最初のドビュッシーの「月の光」は撮り忘れてしまいましたが、これが先週の独奏会全編です。スマホで自撮りのご愛敬。

1 thought on “美笑日記2.11:誰のために何を弾くのか”

  1. お疲れ様です。

    クラッシック演奏家の錬金術は、André Rieu にあり。
    公演は、各国で満席。
    軸足は、聴衆とともに楽しむ。
    これに尽きると思います。

    小川久男

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