- アメリカ国内で初めて一日の新感染者数が6万人を超える:7月10日(金)の終日までには6万5千人(ニューヨークタイムズ)
- 世界規模でも一日の新感染者、新記録:22万8千102人。(WHOの発表)
- 熱帯低気圧が東海岸を中心にアメリカ各地で洪水を起こす。
ゴルトベルグ変奏曲は本当にすごい!どれくらい凄いかという説明シリーズその③.
シリーズ①ではゴルトベルグ変奏曲を象徴的に取り上げた映画を3本ご紹介。②ではゴルトベルグの至るところに現れる「32」について書きました。
今日はバッハと数字、そして「3」と「2」の重要性について書きます。
そもそもなぜバッハがそんなに数字にこだわったのか:歴史的背景
音楽と数字の関係性というのは、遠くピサゴラスまで遡ります。古代ギリシャでは動き在るもの全てが音を出すと考えられていました。天球は動いている。ので、音を出しているに違いない。でも、この音は私たちが生まれる瞬間から死ぬ瞬間まで鳴り続けているので、私たちには意識することはできない。しかし、この「天上の音楽」と共鳴するのが良い音楽だ。
ピサゴラスはハモる音波はきれいな比例で表せることを発見したと言われています。この発見も「天上の音楽」の裏付けになっています。長い弦をはじくと低い音がしますね。この弦を半分の長さではじくと、一オクターブ高い音が出ます。例えば「ラ」の音(440 Hz)から一オクターブ高い「ラ」(880 Hz)が、弦の長さで1:2です。さらに元の弦を3等分にして、3分の2の長さで弦をはじくと5度高い音がします。例えば「ラ」から「ミ」が2:3です。「ラ」から「レ」は3:4。
数学=美。宇宙=数学の視覚化。音楽=数学の聴覚化。
音楽=数学的な宇宙の秩序の体現。
この壮大な考え方は、コペルニクスやガリレオ・ガリレイが「実際には天上の音楽はあり得ない」と証明した後でも美学として今でも私たちに影響を及ぼしています。バッハは特に「天上の音楽」や「数字=宇宙=音楽」という考え方に心頭していました。これは彼が経験なクリスチャンだったこと(彼の作曲家にはよく自分の作曲にSDGと書き残しました。Soli Deo Gloria、ラテン語で「神のみに栄光」という意味です。)、そして聖書でも数字の象徴性が多く使われていることも関係しています。
ゴルトベルグに於ける「3」の重要性。
3という数字は「三位一体」というキリスト教の中でも特に難しい概念に基づいています。父と子と聖霊の結合が一つの神を作る。例えば、クリスチャンがお祈りの際に頭と胸と両肩を触って十字を切りますね。「父」で額に触れ、「子」で胸に触れ、「聖霊」で両肩。つまり、知性と感性と肉体性、ということだそうです。
ゴルトベルグ変奏曲はアリア+30の変奏曲+アリアの復元、という構造です。30の変奏曲は10個のユニットから成っています。それぞれの10個が(多少例外はあるのですが)こういう繰り返しです。①様式(踊りから作曲様式)②ピアノ技巧(指さばきや手の交差)③カノン・輪唱。これはいわば①聴き手(感性)②弾きて(肉体性)③作曲家(知性)という風に分担しているとも言えます。
ユニットが3変奏曲から成っている、という以外にも3という数字はゴルトベルグに於いて、沢山出てきます。例えばこの曲はほぼ全てト長調ですが、3つだけト短調の変奏曲(15、21、25)があります。更に、アリアを含め3拍子の変奏曲が非常に多いです。
ゴルトベルグに於ける「2」の重要性
2と言う数字は「天と地」「神とイエス・キリスト」「旧約聖書と新約聖書」などの象徴性が在るそうです。ゴルトベルグ変奏曲は、変奏曲16の前と後で、明らかに2つに分けられています。変奏曲16番は「フランス序曲」の様式。序曲というのは、何かの始まりを記す曲で、この曲もファンファーレで始まります。さらに、アリアは最初と最後で二回弾かれるし、アリアもそれぞれの変奏曲も前半と後半がリピートサインで2か所に区切られています。そしてゴルトベルグ変奏曲はト長調か、ト短調=2つの調性しかありません。
例えばこんなところにも③と②が...(Mさんご指摘)タイトルページにご注目!
まず、大きな文字で書かれているラインが3つ:Clavier Ubung; Aria; Johann Sebastian Bach
さらに残りのごちゃごちゃ書いてあるのも、みんな2段か3段で分けられています。2-3-2-3-2と言う風に!
こう言うことで大興奮する私はやはりマニアックな「お宅」なのでしょうか?...なんと思われようが楽しい!!!
明日のライブ配信ミニコンサートは、今週月~金まで朝練ライブ配信でやった変奏曲7~11と、カバレフスキーの変奏曲作品40-1、他です。
Pingback: コロナ日記124:明日のライブ配信!...ワクワク - "Dr. Pianist" 平田真希子 DMA