このブログは日刊サンに連載させて頂いて3年目になる私のコラム「ピアノの道」12月18日発表の記事を基にしています。
環境問題に取り組む科学者たちに、音楽家として物申す機会を頂きました。1800席の大きな会場。主催者が用意して下さった立派なピアノ。
でも時間は短い。本当に自分が言いたいことは何なのか。熟考する良い機会になりました。音楽家として私の役回りは希望と喜びを誇示する事だと、リズムが軽快なガーシュウィンの前奏曲をまず演奏します。
そして次の様な演説をしました。
「ジャズに触発されたユダヤ人の作曲を日本人ピアニストが演奏しました。音楽は、本当に世界の共通語なのです。
私は原爆被害者の孫娘です。この曲は、ロシア系ユダヤ人移民の息子が、南部の黒人たちが培ってきた音楽のスタイルで書いたものです。音楽は、背景がいかに違っても共有する我々の人間性の大きさを思い知らせてくれます。
我々は未知への探求心を共有しています。我々は一緒に笑い、食べ、泣き、共感します。そして我々はこの地球と時空を共にする運命共同体です。
音楽は我々の底力の源であり、同時にその底力の表現です。
ロージャとモイシェ・ゲルショヴィッツは悪化するユダヤ人迫害を逃れ移民した際、アメリカ風に『ガ—ショヴィン』と改名しました。その息子として、1898年ニューヨークのブルックリンで生まれたのが、ジョージ・ガーシュウィンです。彼の音楽はクラシック・ポピュラー・ジャズなど多様な音楽のるつぼ。アメリカその物であり、そして同時に時代も人種も文化も超えた人間性を謳っています。
音楽は声なき人々に声を、差別される人々に効力を、そして孤立化・分裂化した人々に一体感をもたらします。音楽の伝染力は、感覚や情報を拡散します。音楽は活力です。何のために生きるのか、戦うのかを明確化します。そして、沢山の異なる声を共鳴させ、協力によって得る勇気へと導いてくれます。
And so, let us unite, with music.」
確かに届いた手応えがありました。これからも発信を続ける勇気と意欲を頂きました。
この記事の英訳はこちらでお読み頂けます。https://musicalmakiko.com/en/life-of-a-pianist/2808
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お疲れ様です。
この一文は、脳科学者でピアニストの心棒でした。
簡潔明瞭、澄明な青い空のようでした。
ゆく道に道しるべは、もう、いりません。
小川久男