「これからも演奏は続けられるんですか?」
スタンフォード講師に着任したご報告をした際に、お世話になっている知人に尋ねられ、びっくりしました。
とは言え、スタンフォード大学の音楽科ではなく国際異文化教育プログラムの講師着任は、ピアニストとしては風変りな肩書きである事には間違えありません。でも私は「ピアノ弾き」に徹しているよりは、オケを指揮したり、脳神経科学の共同研究に携わったり、書き物を出版したり、『テンポ:音楽による環境運動』の創始メンバーとして企画運営に関わったり、チームビルディングやリーダーシップのワークショップをし、見聞を深め、様々な刺激を受ける事で、より社会に関連性のある音楽を提供できる音楽家になれると信じています。
私は立身出世の為に演奏をするのではなく、誇り高く生き人道を全うするために練習・演奏しています。その一環としてのスタンフォード大学への着任であり、環境運動であり、ワークショップや執筆なのです。
先々週末のスタンフォード大学の為の弾丸出張の際出席した受講式について和歌山放送ニュースや毎日新聞やわかやま新報の記事として取り上げて頂きました。そして一昨日、記念すべき最初のオンライン講義を無事終えました。生徒さんたちは実に熱心に一生懸命私の講義に耳を傾け、協議に参加し、そして講義後、胸を突くような真摯な感想を寄せてくれたりもしました。
それでも演奏を全くしない帰国は初めてで、異例の4日間という超短期でも少し違和感がある弾丸出張だったことも否めません。そんな中、もう四半世紀を通じて私のNYでの音楽学生時代からたゆみない応援を続けて下さっているKさんが、7月の帰国の際に企画して下さった演奏会に関してこんなSNSポストを発信して下さったのです。
身に余るような手放しの褒め言葉に、勇気づけられました。私は演奏以外に手広く活動はしても演奏の質を妥協しているつもりは全く無く、自分の演奏を通じた音楽時空共有の場に、いつも正直に誇りと感謝を感じています。
お疲れ様です。
「弾き手と聴きてがともに場を作る」。
ライブ派と自称していたが、これだったのだ。
ストンと腑に落ちました。
小川久男