ワーグナーの「指輪物語」と「送り人」

昨日の夜は盛りだくさんだった。 前から「送り人をダウンロードしたから一緒に見よう」と誘ってくれてる下級生がいて、 昨日の夜9時に約束がしてあった。 内気な子で、やっと段々打ち解けて来てくれたのが嬉しかったので、この約束は守りたかった。 しかしその午後、ワーグナーの指輪物語の「ジークフリートの伝説」の通し稽古の券をもらったのだ! 5時半に開演、10時45分に終演する5時間以上の長丁場だ。 私はジークフリートを9時までみて、それから「送り人」を見ることに決めた。 5時。お腹が空いて無くても、とりあえず軽食をお腹に押し込んで、オペラに挑む。 ワーグナーは調整をその限界まで押し続けた作曲家と言うことで、 ドビュッシー、ショーンベルグを始めとする20世紀の音楽の創始者達すべてに大きな影響を及ぼした。 と、言うことで、11月後半に「歴史を反映する不協和音」と言う題名で ウィーン学派の作曲家たち(モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ベルグ)が どうして無調性に行きつくか、というテーマのリサイタルを予定している私は、 ワーグナーは必修!だったのだ。 しかし、長い。 第一幕は一時間だったが、ほとんどがジークフリートとその育ての親である小人の会話だ。 舞台装置も衣裳もすっごく(音楽の邪魔になるくらい)凝っており、 音楽とストーリーがゆっくりと進行する中、舞台の仕掛けは結構一生懸命動き、 多分、ワーグナーマニアは眉をひそめるが、ワーグナー初心者には親しみやすい演出だった。 絶対にワーグナーはユーモアを意図してないところでも、 舞台装置や、歌手の演技がコミカルで、客席から笑いが良くおこった。 特に、指輪を守っている、恐ろしいはずの竜は、出場する前の歌詞や、 まだ姿を見せずに歌だけが聞こえるところでは、マイクを通して歌手の声がびりびりと聞こえ、 どんな竜を出してくるかと思ったら、「お母さんと一緒」に出てきそうな可愛くて、 サイズも小さい竜で(7歳児くらいの大きさ)客席は大笑いになった。 う~ん、ワーグナーはきっと怒るだろうな。 そして、こんなに演出家が頑張っても、私はちょっと寝てしまった。(ごめんなさい) タングルウッドで友達になったチェリストがこのオペラのオケでアルバイトで弾いているが、 非常に疲れるだろうと思う。トイレはどうするんだろう。今度ご飯する時に聞く。 9時「送り人」。 主人公がチェリスト、と言う設定の割には音楽がお粗末で友達と大笑いしたが、 でも、いっぱい泣かせられて、最後はどうしても鼻声を隠せなかった。 中国人の友達だったので、中国語の字幕付きで見たのだが、 そのあと、日本の文化や死の概念について、いっぱい質問された。 こんなに哲学的な子だとは知らなかった。 私は「送り人」の方が、正直楽しかった。 タングルウッドで「マイスタージンガー」の第三幕の演奏会バージョンも聞いたけど、 そっちの方がまだ楽しかった。 こんなことを書いたら指輪マニアに軽蔑されそうだけど。

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コーヒーの効用と、練習効果

子供の頃は、母の方針によりコーヒーは飲まないで育った。 段々、カフェインは体に良くないと言う認識が芽生え、 お茶でもカフェインの入らないハーブティーを飲むようになった。 しかし12年前ころから演奏会が増え、譜読みが追いつかなくなり、 カフェインを飲むと練習の効率が上がると言う噂を頼りに飲み始めるようになった。 最初に飲んだ時の感動は今でもよく覚えている。 お店でテイク・アウトを頼んだのだが、カップの半分をミルクにしてもらい、砂糖をいっぱい入れた。 そして一口飲んだ時、本当に目から鱗が落ちたような、急に世界中の色が鮮やかになったような、 視点が一転したような感覚が在った。 その日の練習は夢のようにはかどった。 コーヒーを飲むと、いつまでも楽しいのである。 そして、繰り返しが苦にならずいつまでも興味を持って同じパッセージを練習できる! どんどんミルクの量が減って行き、そのうちブラックまで行きつき、一日に2杯以上飲むようになり、 さらにコカ・コーラのカフェインはコーヒーとちょっと効き具合が違うことを発見してからは 朝はコーヒーで、夕方からはコーラと使い分けるようになった。 そうしないと練習できないような、必需品になってしまった。 この効用のどれだけが心理作用で、どれだけが実際の効用だったのか。 最近風邪をひいたとき、 友達に断固と「カフェインは病気の時、体に良くない」と主張され、 コーヒー無しでずっと過ごした。 何となくいつもよりリラックスして、性格がまろやかになったような、 アクセク観が無くなったような気がした。 興味を持って回復後もずっとコーヒーを絶ってきたが、そろそろ困ってきた。 何だか一日中眠いのである。 始めは病み上がりのせいだと思っていたが、どうやらそれだけでもないらしい。 緑茶を飲んだり、甘いものを食べたりして、自分にはっぱをかけようとするのだが、 怠け者になってしまう。 そしてどんどん早寝になる。 今日は友達の誕生パーティーだったのに、10時になったらもうどうしようもなく眠くなってしまった。 う~ん、どうしよう。 明日、コーヒー再開しようか。

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アシスタント・指揮者に指名される!

この土曜日にコルバーンのオケの定期演奏会がある。 曲目はラヴェルの「道化の朝の歌」、ヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」、 そして我が学校のチェロの教授、ロン・レナードのソロによる、ドヴォルザークのチェロ協奏曲。 いつも学校のオケでアシスタントを務める人は、私の指揮の先生でもあるのだが、 去年、Pacific Symphonyの常任指揮者に任命されてから、学校のオケの演奏会に時々来れなくなった。 オーケストラには、指揮者のほかに指揮者のアシスタント、と言うのがいる。 この人は「指揮者に何かあった場合、飛び入りで指揮をする人」と言うことになっているが、 実際にはそういうことはまあ大抵無いので、結局サウンドチェックの時に客席を駆けずり回って、 オーケストラの音響のバランスに問題が無いか、チェックする人、と言うことになる。 演奏会で、一番の経費はホールの借用費だから、リハーサルは学校のリハーサル室でやって、 本番と、本番前のゲネプロだけ、会場で演奏する。 でも、ホール毎に音響と言うのは丸っきり違うし、 客席にどう聞こえているかと言うのは、実は舞台からは本当に分からないものなのである。 ソロのリサイタルをする時でさえ、これは大問題で、 私は手をパンパンと打ち合わせてみたり、大声で叫んでみたり、 ピアノをバン!と打ち鳴らして残響を聞いてみたり、いろいろするのだが、 弾いている自分の音を客席で聴くのは不可能だから、いつも不安な要素なのだ。 だから、友達に客席に座ってもらって弱音がちゃんと会場後方まで届いているか、 大きな音が大きすぎないか、細かい音がちゃんと歯切れよく聞こえているか、意見してもらう。 オケの場合は、それをするのが、アシスタントなのだ。 そして今回は私がそのアシスタント! 勿論、風邪の季節だし、万が一に備えて、ちゃんと指揮できるように勉強します。 本当に指揮できたら、凄いなあ! わくわく

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ロスの週末

ハリウッドがロスにあるのは、ロスの降雨量がアメリカで一番少なく、日照時間が一番長かったからだそうな。 その昔、映画に必要な照明を太陽に頼るしかなかった時代、ロスは最高のロケ地だったわけだ。 今では撮影は大抵屋内で、電気照明でやるので日照時間は映画製作にはあまり関係ないが、 その気候のおかげで私たちは、とても幸せな毎日を送ることができる。 大体いつもぽかぽかとお日さまが照って、9月後半から5月頃まで気温は10度と25度の間を行ったり来たりする。 (夏は地獄の様に暑いらしいが、私はまだ夏をロスで過ごしたことはない) そんな訳で今日は私はLAマラソンに向けてトレーニング中の友達に付き合って海岸に行ってきた。 友達が走っている間、自称未だに病み上がり中の私はのんびりと砂浜に座り込んで、 海を見ながらテレテレお勉強をした。 海岸は、学校からドライヴして20分くらいのところに延々と広がっている。 波の音を聞くのは本当に気持ちがいい。 2週間前サーフィンをしたときは、水は全然冷たくなかった。 今朝もサーフィンしている人が結構いる。 子供も水遊びしている。 ロスのもう一つ素晴らしい事は、いろいろな人種が同居しているので、 色々なお食事が体験できることだ。 土曜日の夜は友達の誕生日で、インド料理を食べた。 その時、エチオピア料理とインド料理の比較検討が話題に上り、食べたくなったので、 日曜日の昼食は今度はエチオピア料理を食べに行った。 エチオピア料理は、インジェラと言う発酵したパン生地を薄くのばして焼いた、クレープの様なパンをちぎって シチューの様に、色々なスパイスで煮込んだ野菜や肉を包んで、手で食べる料理だ。 スパイスを使って煮込むところがインド料理に似ている、と言えばそうだが、 スパイスの種類が違うし、そんなに辛くなく、うま味の要素がずっと多いと思う。 私は大好きな料理だ。 それにしても、ロスは日本系の店や料理屋が並ぶ「リトル・トーキョー」や 同じく韓国系が密集する「コリア・タウン」、 そして今日行った所はエチオピア料理屋ばかりが並ぶ一角だし、 同じようにタイ系、ベトナム系の地域、そしてチャイナ・タウンもあるし、 メキシコ人ばかりでお店の表示がみんなスペイン語の地域もある。 なんでこうはっきり分離するのか。 ちょっと車でドライヴすると、ハングル文字、中国語、スペイン語、など地域によって看板が違う。 本当に国際旅行をしているようだ。

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教えていて気付いたこと

今週は、私の恩師であるMr. Perryが演奏旅行で居なかったため、下級生のレッスンをした。 全部で7人教えたから、7時間のレッスンした訳である。 こんなに教えたのは本当に久しぶりで、しかも皆グリーグの協奏曲やブラームスの協奏曲(しかも2番!)など 凄い大曲をばんばん持ってくるので、本当に楽しかった。 こうやって立て続けに教えていると私たちの一般的な傾向と言うのが見えてくる。 例えば、暗譜が心元ない時、大抵皆左手からあやしくなって、そして崩れる。 私自身がそうなのは前から知っていたが、これは一般的な傾向らしい。 考えてみたらば、ある程度あたりまえで、例えば人間の耳は高い音に集中するそうだ。 だから、メロディーを受け持つ右手をより良く覚えているのは、よくわかる。 ただし、さらに突き詰めて考えていて気になったのだが、鍵盤の右に行くほど音が高くなるのは 私が知る限り初代鍵盤楽器からいつも一貫していたことだ。 どうして左に行くほど音が低くなっちゃいけないんだろう。 これはもしや右脳・左脳にかんけいがあるのでは!? そう考えると、皆が左手から暗譜を忘れていくのは非常に興味深い。 付け焼刃の知識で申し訳ないのだが、右脳は体の左半分をつかさどり、左脳は右半分をつかさどる。 その役割をまとめると 右脳=図形、音楽、全体像などをとらえる力、直観力 左脳=言語、分析、思考力 と言うことになるらしい。 音楽のメロディなどを聞き取るのは右脳です。だからピアニストやバイオリニストのようなプロの演奏家は,特に右脳がすぐれているように思えますね。ところが,プロの演奏家はかえって左脳がすぐれているといいます。音楽を演奏するには,メロディだけでなく,曲のテンポやピッチ,構成などを分析する力がなくてはいけません。これは,左脳の働きですね。プロの演奏家は,右脳だけでなく左脳もいっしょに働かせることによって,すばらしい演奏ができるのです。(教育文化社広島本社のHPより、http://www.edu-cul.co.jp/column/column7.html) 楽譜を読み取り、曲を習得する段階では左脳を主に使わなくてはいけない。 ただし、演奏する時は右脳中心にスイッチすることができれば、左手から崩れることはなくなるのでは? と、右脳を使って直観的に、あてずっぽうを好き勝手に書いてみました。 それにしても右手=高音、左手=低音、と言う公式は不可欠だったのか、疑問が残ります。

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