ジェームス・レヴァイン、春祭のリハーサル

日曜日の午後、ボストン交響楽団が春祭とブラームスのヴァイオリン協奏曲の演奏会をする。 今日、ジェームス・レヴァインが春祭の稽古を行うところを見学した。 自分の練習とリハーサルの合間のわずか30分だけの見学だったが とっても面白かった。 ジェームス・レヴァインはスター・ウォーズの第二に出てくる カエルのお化けみたいな悪者(ハン・ソロを冷凍してしまう奴)にちょっと容姿が似ているが、 今日、しゃべり方と声もちょっと似ていることがまず第一の発見だった。 そして、ボストン交響楽団も彼自身も、もう何回も演奏したであろう、 この有名な曲に、実に実に緻密に稽古をつけていくので、本当にびっくりした。 一瞬一瞬の音色から、曲を創り上げていく、と言う感じ。 「そこのところ、もう少しチューバ控え目に、高音を浮かせる感じで」 「ピッコロとフルートとクラリネット、他の木管の細かい音の邪魔にならないで、 ダウン・ビートで入る前に彼らのパッセージを聴いてあげて」 など、15秒とオケを弾かせっぱなしにしない。 そしてやり直して、指示がきちんと伝わっていることを確認すると、 必ず親指アップを出して、努力をねぎらう。 そして、指揮が割と大きく、実にはっきりしていて本当に音を体現している。 やりたいことが明確に自分で把握できていて、 それが実現できるまで妥協しない。 そしてそのプロセスを実に精力的、意欲的に、楽しそうにこなしていく。 触発された。

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最近共感した言葉、その二

「新しい楽器や、新しい音響の中で弾く、と言うのは、新しい共演者と弾くのや、 初めて会った人と会話するのと一緒だね。 向こうが投げかけてくるものを、どう一番良い方法で活かすか、 絶えず耳を澄ましながら、臨機応変に対応して行く」 これは、今私が在籍するコルバーン音楽学校での学友、ライアン君がある日言ったことだ。 もう数年前に言われたことだが、何かにつけて思い出す。 そうなのだ、あまり「こう弾きたい」と言う固定観念に囚われ過ぎると その時の状況、パートナーを一番活かした演奏ができなくなってしまう。 でも、別の時ライアン君はこんなことも言っていた。 「演奏する時は、すでに描いた絵を提示するようなつもりで曲を弾けば、 上がらないんじゃないか、と思うんだけど。 練習のプロセスにおいて、すでに自分の中で曲は完成しているはずなんだから、 ただそれを再現すればいい、と思えば簡単じゃない?」 この言葉も良く思い出すが、こうやって並べてみると、ちょっと矛盾しているような気もする。 う~ん、ライアン君。。。 ちなみにライアン君は私よりもうんと年下のピアニストですが、 18にすでに大学の学位を最優秀成績でゲットしてしまい、そのあとコルバーンに来たツワモノで 私は密に一目置いている。 今日は次の様なスケジュールでした。 9-10:30      練習 10:30-11   図書館で伴奏する曲の歌詞を訳し、録音を聴く 11-11:30   リハーサル 11:30-12:30 歌のコーチング 1:00-2:00  ボランティア主催のランチにお呼ばれする。 2:00-3:30  練習 4-6       メンデルスゾーンのトリオ、リハーサル 6-7:30    夕食、インターネット 7;30-10   練習、友達と弾きあいっこ 10-11    メンデルスゾーンのトリオ、リハーサル ここしばらく、練習する気になれなくて、次第に焦燥感が募ってきていたけれど 今日はかなり乗って練習ができて、とても楽しかった。 このまま日曜日の演奏会に向けて、調子を向上できればいいな、と思います。 日曜日は、変な時間ですが、毎週朝の10時に研究生による演奏会があり、 私は今度の日曜日にルーカス・フォスのソロの曲と、メンデルスゾーンのトリオを弾きます。 トリオも、ずいぶん急ピッチですが、熟してきました。

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お休みの日

タングルウッド音楽祭は6月21日から8月17日まで、7週間半、二か月弱のプログラムですが、 正式な完全休暇の日は二ヶ月間中に3日だけあります。 オフィスも図書館も閉まり、コンサートもリハーサルもありません。 今日はその完全休暇の日でした。 「湖で泳ごう!」とか、「買い物に行こう!」とか、企画は色々あったのですが、 皆寝坊をして、ゆっくりご飯を食べ、 ここに来てから久しぶりに外界の友達と長電話をして、 昼寝をしているうちに夕立ちが来て。。。と言う感じで、 結局一日が脱力した感じで過ぎてしまいました。 環境の変化とかを自覚する間もないまま、リハーサル、コーチング、公開レッスンと 立て続けにいろいろあって、その合間にお互いの名前を覚えあい、探り合い、 心地いい距離を測りあい、と、楽しいけれど、やはり疲れるプロセスだったんだ、 と改めて自覚します。 一応キャンパスに行って、ガラ空きのキャンパスでちょっとだけ指を動かしましたが、 帰りのバスの中で爆睡してしまった自分に驚きました。 明日から7月! また心機一転で、頑張ります。

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始業式

今日は、始業式があった。 研究生が全員タングルウッドにそろったのは一週間前だが、 昨日が初めての研究生のコンサート、今晩が研究生のオケのコンサート、 そして何よりもBSOの常任指揮者であるジェームズ・レヴァインの到着が今日の予定だと言う事で 今日が始業式となった。 生憎レヴァインはヨーロッパのコンサートの後、交通事情により足止めを食らって 結局レヴァイン抜きの始業式となったが、伝言として、次の趣旨のようなことが言われた。 「弾く、と言うことに集中するあまり、聴くことがおろそかになる若い演奏家が多い気がする。 ここでは、お互いを聴き、教授群や、ゲスト、そしてボストン・シンフォニーを聴き、 聴くことによって学んでほしい。練習よりも、ひとつでも多くの公開レッスン、講義、 そしてコンサートに触れ、見聞を深めることによってタングルウッドからより多くのものを得て 成長していってほしい。」 夜のオケのコンサートは全曲シベリウスのプログラムで、 前半のトーン・ポーエムを指揮の研究生が、 後半の交響曲二番をシベリウス研究の大家、ブロムステッドが指揮した。 指揮者によって同じオケが、同じ晩に、同じ音響で、ここまで音が変わるか、 とびっくりした。 そのあとタングルウッド主催のパーティーがあって、 皆したたかに飲み、たくさん踊った。 実は今、酔っ払っていて、乱文、乱筆、失礼。

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ピアノらしくなく、弾く

9-10   練習 10-12    研究生たちのコンサートを聴く(今日は金管アンサンブルと、打楽器アンサンブル中心) 12:30~2:30 Emanuel Ax のコーチング、メンデルスゾーンの三重奏 2;30~3;30 友達とお昼 3;30~4;30 ジュリアード弦楽四重奏のコンサートの第二部を聴く 4;30~6;30 寮に戻り、急いで練習と夕食と電話、再びキャンパスに移動 6;30~7;30 ちょっと練習 7;30~9:30 Emanuel Ax の公開レッスン 9;30~10;30 明日の研究生たちのオーケストラ・コンサートのリハーサルを聴く 「リズムは指先には無い、体に在る物だよ。もっと体を演奏に取り入れて、リズム間にアクセスしよう!」 これは、ここタングルウッドではなく、二年前に参加したフランスの音楽祭のジャズのレッスンの時に言われたこと。 「歌手と一緒に息をして、手首を息と一緒に動かして、弾く準備をしてみよう!」 「腕を弓だと思ってピアノを弾こう!」 これは、ここで色々な先生に言われていること。 「自分は、ピアノと言う楽器においてはピアニストひとりひとりの実際の音色の個性と言うのはない、と思っている。違いは、(発音の)タイミングと声部の弾き分けだけで、しかしその違いによって音色までも違って聞こえてくる。だから、タイミングと声部の弾き分けには、死に物狂いになれ。」 これは、Emanuel Ax氏に言われたこと。 ピアノと言う楽器は、一回発音してしまうと、そのあとはなすすべが無いから、 他の楽器が伸ばした音をどう処理するか、と言うことにすごく神経を使い、 結果歌い回しに気を使うことになっている、その手間がない。 ということで、タイミング、リズム間に無神経になりやすい。 ここ、タングルウッドでは、声楽家、弦楽アンサンブルとの共演のコーチングで そのことが一貫して、強調して、教えられている気がする。 今日は、アックス氏との最後のコーチングだった。 アックス氏はいつもニコニコとして、優しくって、とても人当りが柔らかいが、 レッスンは実に忍耐強く、大変細かく指示を出し、できるまで何度も繰り返させる。 今日のレッスンの結論付けとして、 「君はすごい、よく弾けているよ。こんなに音が多い曲で全ての音をちゃんと弾いているなんて、尊敬する」 と言われたが、ちっとも褒めてもらってる気持ちがしなかった。 まだまだ、まだまだ。Pateince, patience…

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