音楽人生

着物、考察

「ショパンToジャパン」のアルバムカヴァーのために着物で写真を撮りました。 ヒューストン在住で着物にお詳しいAさまが、 着物のコレクションを惜しげなく出して見せてくださいました。 着物と言うのをこんなに間近で検証したのですが 本当に砕身の工夫があらゆるところに施されていて、芸術品だと思いました。 着付けは、肌着から足袋から本当に細かく、 色々結ぶ物が在り、色々引っ張る物があり、色々大変です。 私の祖母は毎日着物でしたが、 毎日こうやってピンピン!スルスル(結ぶ音)と、朝の身支度を整えたのだな、 と思うと、儀式のような気持ちがしました。 私はそうしようと思えばパジャマから出かけるまでの身支度を 1分でも10秒でも必要に応じて済ませてしまいますが、 昔の女性はそうは行かなかったのだな、と その価値観と美的感覚と生活に思いを馳せました。 同時に自分の無頓着を少し反省も致しました。 帯をピッと締めると、気持ちもピッと引き締まる物ですね。

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音楽人生の素晴らしさ

凄いびっくり!そして、感動… 今さっき、メールが来ました。 『1998年の客船での旅について』との題です。 『夫と二人でアメリカからアテネまでの客船の旅に出た時、あなたがピアニストとして乗船していました。あなたが練習している最中こっそり忍び込んで聞き惚れたのを覚えています。あなたは恥ずかしがり屋さんだったけれど、本当にきれいなピアノを弾きました。 練習中のあなたの写真があるのですが、もしご興味が在ればお送りします。今、家の大掃除をしていて、たくさんの物を捨てています。この写真もあなたが欲しくなければ捨てようと思います。でも、お聞きしてみようと思いました。ご住所をお教え頂ければ、お送りします。』 もう16年前のこと。 客船では色々な乗客や乗務員と一期一会の濃い会話を交わしましたが、 正直に言ってこの女性がどなたか、思い出せません。 でも、胸が熱くなる思いがしました。 16年前の、まだ青二才の私がある夫婦の思い出の一部になっていたなんて。 音楽家の醍醐味だな~、としみじみと思いました。

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「焔に向かって」  

スクリャービンの「焔に向かって」を最初に聞いたときは「は?」と言う感じだった。 短い曲なのだが、 ある意味ミニマリズムと言っても良いほど単純で簡潔なモチーフが繰り返し、 音域と音量の高まりは在るものの、 伝統的な意味での和声の緊張と解決が無い。 明らかに『焔』を描写しているのだが、 印象派のように、感覚に訴えかけて描写する対象を彷彿させると言ったプロセスが無く、 むしろ焔をそのものになりきろうとしているかのよう。 美化したり、芸術化したり、と言う操作が無いため、 初めて聞く人の多くは狐につまされたような感じになるだろう。 しかし、弾きこめば弾きこむほど、勉強すれば勉強するほど、魅惑される曲である。 ホロヴィッツの有名な録画がある。 この動画でホロヴィッツは音を好き勝手に足しまくって、 ついでに曲もちょっと長くしてしまって 本当にスクリャービン作曲・ホロヴィッツ編曲と言う感じなのだが、 その効果は出ている。 この「デタラメ」と批判する人も居るであろう動画の中で 演奏前ホロヴィッツは知ったかぶりで 「この曲はスクリャービンが世の終わりをもたらす炎を描いているんだ」 と言っている。 実に眉唾だが、でもまあそう言われてから聞くと、それも納得できるような曲、そして演奏。 一方でスクリャービンの娘、そしてそのピアニストの妻が 「作曲家の意図に一番近い演奏」と讃えたのが スクリャービンの義理の息子ソフロ二ツキーの録音がこちら。 私はこちらの方がずっと好きだが、 これだって楽譜どおりとは言いがたい。 要するにこの曲に置いて、楽譜は「大体」なのだ。 トレモロなどの効果音が多く、楽譜どおりにきちんと弾くための練習は意味が無い。 勢い、インスピレーション、そしてほとんど芝居をするような 雰囲気を醸し出すための大きなイメージ。 どちらにしても悪魔的な曲、そして今まで私がチャレンジしたことの無い種類の曲だ。 これに大して山田耕筰の「青い焔」。 山田耕筰はベルリンに留学した後、日本に帰国する道中、 ロシアにしばらくとどまり、そこでスクリャービンのピアノ曲「詩曲」を聞いて ほとんどあきらめかけていた音楽への道に人生をかける決意をする。 「青い焔」もタイトルからしても、またその曲が意図するところとしても この「焔に向かって」を知った上での作曲と見て、まあ問題ないだろう。 この曲も最初に聞くと「は?」と言うような曲だが、 特にこうやってスクリャービンと比べると、面白い! さて、こういう最初に聞いて自分自身が「は?」と思ってしまった曲を お客さんにいかに納得して頂くか、と言うのが私のチャレンジ、である。

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電子ピアノで練習をする特典

ずっと電子ピアノで練習することを拒んできた。 アップライトだって出来ればイヤだった。 グランドで練習したい! グランドとアップライトでは中のメカニズムが違う。 従って、タッチが全く違う。 ましてや電子ピアノにいたってはいくら「タッチ・センシティブ」を歌っていても 中のハンマーを持ち上げて、そのハンマーが弦を打って、と言う実際の動きが無いわけだから 「ピアノ」を弾いているのとは似て全く非なるモノ!…とガン!と主張して来た。 ところが、背に腹は変えられない状況になって、 電子ピアノで練習するか、全く練習しない、と言う状況に置かれて見て、 これがびっくり!使えるのである。 ピアノで全く出来ない練習が可能になる。 何がびっくりと言って、音を消して練習することの効果ほどびっくりしたことは無い。 出てくるはずの音、音楽を頭の中で想像しながら、 指の動き、腕の重み、上体の姿勢に集中する。 練習の疲れの多くは、音にさらされる疲れなのだ、と実感した。 そして音が無い分、邪念無く肉体の動きと自分の理想に集中できる。 さらに、音楽に酔ってしまい、練習そっちのけで気持ちよくなってしまう危険も無い。 理性的に練習するから、効果増大。 譜読みもはかどるし、 難しいパッセージも感情的に成らずにきちんと練習するので、 結構簡単に弾けるようになる。 さらに、プレーバック機能が使える。 左手を録音して、それを聞きながら右手を弾いたり、そう言う練習も出来る。 和音だけを弾いて、和声進行を鳴らしながら、楽譜どおりに弾いたり、とか。 色々練習に工夫が出来る。 …これは使える。 今、ツアー中のホテルの部屋で練習が出来るよう、 電子ピアノを入れて飛行機で飛ぶためのケースを発注しようか、思案中である。

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細切れ時間の有効利用

兎に角今、自由になる時間が少ない。 色々プロジェクトを抱えていること、 人生交差点にあってこれからの自分の音楽人生、そして私的人生の指針を考察中、 その為に色々な人に相談に乗っていただいたり、リサーチしたりと言う時間が多いこと、 相方の超多忙を補佐して、同行することが多いこと、など理由は色々あるのだが、 食事を取る暇が無いくらい、自由になる時間が少ない。 そんな中、お陰さまで今年14年目になる私の日本での演奏会は3ヵ月後に迫り、 パリへの再来訪・演奏、も半年後に決まり、 CD録音の企画が進み、 DVD作成の話しが持ち上がっている。 細切れの時間を兎に角効率よく利用しなくては。 パニックして時間をロスする事無いように、 常に今できること、達成しなければいけない目標を、明確に把握し、 出来ることをその時その時一所懸命に頑張る。 そして移動時間など、どうしようも無い時間はリラックスして 次に利用できる時間に最高の働きが出来るよう、 構想を練り、楽しみに仕事のことに思いを馳せ、 15分でも、10分でも、5分でも、 与えられた時間は飛び込んですぐ生産性を上げられるように頑張る。 そう言う日々です。 春満開。

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