自分の価値観を再確認する

タングルウッドに居る間インターネットで見つけた下宿先は、ライスから徒歩20分くらいの所にある静かな住宅街にあった。周りの家はつたに覆われていたりして、趣が在る。でも私の住む事になった家は近所の中で目立って古い家だった。大きいのだが、古く、手入れが行き届いていない。私の部屋も窓が3方に在り、壁に備え付けの本棚が在ったりして素晴らしいのだが、床が傾いている~家具付きの部屋なのだが、コンピューター・デスクに備え付きの車輪付きの椅子が転がって行かないように必死で足で押えながらタイプをするほど。そして、部屋のドアが。。。在って無いようなドア。トイレのドアも壊れている。ドアのノブが壊れて回らないので、ドアを閉めたままの状態にするためには故障後に取り付けられた簡単なちょうつがいを操作し無ければいけない。などなど。 私はニューヨークでもっともっとひどい状態のアパートに沢山住んできたし、ここはインターネットで調べた他の物件と比べて格安だったので、(何か在るだろう)と覚悟して来ていたので、(まあこんなものだろう)と言う感じだったのだが、一日違えて越してきたもう一人のライスの生徒の女の子はショックを受けて、他の物件をサッサと見つけて来てしまい、下宿のオーナーと今交渉中、もめている。その子のショックぶり、そしてその子がもう少し割高だが、まあ同じくらいの物件でずっと手入れの行き届いた下宿先を見つけてきたという事実で(私ももう少し探してもっと居心地の良い場所を見つけるべきだろうか)と言う気持ちが湧いてきた矢先の今朝・・・ たまたま昨日オリエンテーションで在った修士を始める作曲家の男の子が「今は知り合いの家に身を寄せているが、新居を探さなければいけない。一緒に来ないか?」と誘ってきた。私は(この作曲家が、出たがっている子の後釜に座れば、全てが丸く収まるかも)と思い、それから他の物件を見る事にも興味があったので、同意した。まず、この作曲家を私の現住所に連れてきた。500ドルで、電気もガスも水道もインターネットも全て込み、全館冷房・暖房で、キッチンとバスは共有、と条件を話した所では興味を持って聴いていたのだが、私の部屋を見せた途端「これはひどい、ここには住めない。僕の許容範囲を超えている」とはっきり断られてしまった。この子は車を持っているので、この子がここに越してきたら、車を借りられる、と踏んでいたのに。。。 この子のリードで近所の物件探しが始まった。そして探してみれば、あるものである。500ドルで1LK、ベランダも付いている。車でライスから10分。キッチンには皿洗い機もオーブンも付いている(マイクロウェーブは無かった)。アパートの中にはフィットネス・センターもプールまでも在る。他にも似たような物件がかなりあるのだ。この子はヒューストンに知り合いが居ないらしく、私にしきりに同じアパートで二部屋借りて、一緒に登校しよう、と誘って来る。私が車を購入するまでは喜んでアッシー君をしてくれる、とか、良い住環境は生産性を高める、とか色々言って来る。 私は正直揺れてしまった。自分の生き方を根本的な所から疑問を持ってしまった。 私はどうして日常的なレヴェルでもっと欲が無いのだろう? これは怠慢なのだろうか?努力して変えるべきなのだろうか? 本当に住環境を整えたら、生産性が上がってもっと良い音楽家になれるのだろうか? でも、どんなに家賃が同じでも、このアパートに越してくるためには私はまず家具を一杯買わなくてはいけない。そして車を買わなければいけない。車を買えば保険、そして故障したら修理、さらに駐車場、ガソリン、どんどん経費がかさばって行く。その上、電気代、ガス代、インターネット代、全て家賃の上に自腹だ。その経費を賄うために私は働かなくてはいけない。働いたら、練習と勉強の時間が減る。今の下宿先だったら私は学校からもらう生活費だけでも何とかやっていけるのである。でもこのアパートに越したらば、絶対にバイトをしなくてはいけない。住環境と言うのはそこまでの価値が在るものなのだろうか? 私はこの作曲家の良い生活を求める為の努力、と言うのには脱帽したのだ。この子は東欧出身の子だ。だから余計にハングリー精神が強く、物質的な貧しさと言うのを避けたがるのかも知れない。でも、私は逆に豊かな暮らしに生まれおちて、だから簡潔さ、苦労、と言うのに敢えて憧れるのかも知れない。 作曲家とのアパート探しが午後早い時間に終わった後、タングルウッドで出会ったお友達にドライブしてもらってお買いものに行きました。この下宿先に腰を落ち着ける、と決めた後だったのでこの部屋をいかに居心地良くするか、色々工夫してちょっと奮発して色々買いました。中でもセールで買ったとても座り心地の良い椅子が嬉しい。19ドル99セントで、折りたたみなのですが、本当に可愛くて、楽ちんなのです。これくらいの贅沢が私には丁度良いのです。

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