嘘をつく子。

木曜日はある幼稚園から高校までエレヴェーター式のある学校でピアノを教えています。 授業を受けている子供たちを教室まで迎えに行き、 レッスン室まで一緒に歩いて30分のレッスンをした後、 また教室まで送り届けます。 2年生のSちゃんは楽譜を忘れる常習犯。 そして、なぜ楽譜を持っていないのか、なぜ練習が出来なかったのか 実に想像力豊かな嘘をつきます。 今日のは傑作でした。 私がSちゃんを迎えに行くなり、息せきって話し始めたのがこちら。 Sちゃん「私の家のカレンダーはすでにもう2016年のになっちゃってるの。 曜日が違うから紛らわしくって… 昨日は曜日を混乱して、教材を忘れて学校に来ちゃった!」 私は大笑いしようかどうしようか、一瞬迷ってからおごそかに言いました。 「それは、嘘だね」 Sちゃんは一瞬固まってから私の目を凝視したあと、うつむいて黙りました。 「今日は楽譜は持ってきたの?」 Sちゃん「ロッカーにあると思う」 二人で黙りこくってロッカーまで歩きます。 そしてやっぱり案の定ロッカーに、楽譜はありません。 「ロッカーにあると思うって言ったのも、嘘だったんだよね」 Sちゃんは私の目を見た後 「はい、嘘をつきました」と私がびっくりする深刻さで告白します。 「今学期の目標は何にするってお約束したんだっけ?」 Sちゃん「…嘘をつかない…」 私は貴重な30分のレッスン時間の10分を割いてお説教をしました。 (まあ、どうせ楽譜なかったし、練習もしてきてなかったんですけれど) 「嘘をついて一番傷つくのは、自分だよ。 誰にも、言うことを何にも信じてもらえなくなって、寂しくなるのは自分だよ。」 Sちゃんは神妙に聞いているけれど、あるいは聞いているふりをしているけれど、 でも来週もきっとウソをつく。 私は何をしてあげられるのだろう。 どうしたら、気づかせてあげられるのだろう。 ウソってなんだろう? ウソなんてついても結局寂しいだけなのに…どうして人はウソをつくんだろう。 私のストーカーは、私としばらく婚約していた間に私にさまざまな嘘をつきました。 結局いつかはばれるのに。 その中で、今でも一番心が痛むウソが家族背景についてです。 自分の両親は本当に人望高い、素晴らしい美女美男で、 6人兄弟の中でも彼は一番かわいがってもらって兄弟たちにねたまれるくらいで、 その中でもお父さんは特に目に入れても痛くない可愛がりようで… そう言う話しを涙を浮かべながらしていた彼の父親は、 実はアル中で、酔っぱらってはお母さんを殴って、 ついにはお母さんに離婚されていたのです。 でも、自分の過去を否定するためだけのウソでは無く、 私腹を肥やすためのウソも沢山の人に多くついてだましていた彼は、 私にとってはもう人間の皮をかぶった宇宙人としか思えない、遠い存在になりました。 一時は、信じようと本当に努力をしたのだけれど。 そう思っていたら、ある映画を思い出して、愉快な気持ちになりました。 「嘘」と言うものが全く存在しない世界で、 一番最初にウソをつくことを思いつく主人公の話です。 「嘘」が全くない世の中と言うのも中々つらい物なんです。 初対面の人に「あなた、あんまり格好良くないわね」とか。 仕事の同僚に「お前、大嫌い」とか。 そんな中、見た目で差別を受け、仕事を失って家賃が払えない主人公が 銀行で、自分の口座にないお金を引き出すことを思いついて「嘘」が始まります。 […]

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