January 2020

私たちのアルバムのプロデューサーがグラミー賞受賞です!

“Visions Take Flight” はヒューストンでは「ROCO」の愛称で親しまれている River Oaks Chamber Orchestraのデビューアルバムです。 私は2014年以来ROCOのメンバーとして、鍵盤楽器を担当しています。このアルバムはROCOらしい。ROCOはモーツァルトやメンデルスゾーンなどのいわゆる定番クラシックも演奏しますが、何よりも沢山の委嘱作品の世界初演で有名です。このアルバムを制作するにあたって、創始者で総監督の首席オーボエ奏者、Alecia Lawyerが 団員に「今まで演奏した中で一番思い出に残る曲」とアンケートを取ったところ、5曲全てが委嘱作品!その5曲をそのままアルバムの演目にした、本当に民主的なROCOの風潮を反映したアルバムなのです。 英語ですが、アルバム制作中のヴィデオを下でご覧ください。 このアルバムのプロデューサーが「2020年のプロデューサー・オブ・ジ・イヤー、クラシック」カテゴリーのグラミー賞を勝ち取りました。私たちのプロデューサーはエネルギッシュで音楽に情熱的なBlanton Alspaugh。下のヴィデオでこのアルバムについて語っています。ヴィデオの後半で喋っているのはコンサートマスターのScott St. Johnです。 この受賞が格別嬉しいのは、録音の予定が一度無期延期になってしまったいきさつがあるかも知れません。元々このアルバムはテキサス州のラウンドトップにあるFestival Hill演奏会場で録音されるはずだったのです。予定日は2017年の9月。丁度、ハリケーンハーヴィーがヒューストン一体を洪水にしてしまったときの事です。 当初の録音予定日の前日。私の心の友にして、ROCOのクラリネット奏者である佐々木麻衣子さんはすでに洪水の心配のために、アパートの4階にある私の部屋に避難して来ていました。それでも私たちは、何とか運転して録音会場に行くつもりでいたのです。でもメールで録音の無期延期を知らされ、本当に気落ちしました。 その時の事情、そしてそれでも録音の日程を組みなおして「Harveyなんかに負けない!」と頑張ったROCOの奮闘記は下のヴィデオでご覧いただけます。 振り返ってみると、このアルバムがここまで深く音楽的に仕上がったのは、ハリケーンや無期延期を乗り越えて、録音に携わった全員が心を一つにして頑張ったからなのかも知れません。そして今回、そのプロデューサーがグラミー賞を受賞…本当に感無量です。この録音の一部となれたこと、ROCOの一員であること、そして人生のさまざまなチャレンジにも負けず、創造性豊かに生き続ける決意を曲げない人類の一員であることを、今日は特に祝いたいと思います。

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NAMMショーに出演!

毎年恒例、カリフォルニア州はアナハイムのコンベンションセンターで開かれるNAMMショー。NAMMはNational Association of Musical Merchantsの略。ウィキによると世界最大規模の音楽産業トレードショー。楽器メーカー、録音機器、オーディオ機器など音楽関係の産業が世界中から出展しに来る。今年のNAMMに出展者として登録した人は130か国からは11万5千人以上。NAMM開催中の取引総額は11億ドル。2020年のNAMMショーは1月16日(木)~19日(日)までの4日間。NAMMショーの事は聞き知ってはいたけれど、参加は今年が初めて。私はShigeru Kawaiアーティストとして出演させて頂いた。 どういう環境でどういう聴衆のために弾くことになるのか、正直心配だった。でも、立ち見のお客さまたちが皆集中して20分のミニコンサートに聞き入ってくださった。入ってくる方はいらしても、演奏中に立ち去るお客様は見当たらず、最終的に40~50人のお客様がいらしたのかな?ちょっと感動してしまった。どういう場所でも音楽を通じて心を交わす事って可能なんだな、と嬉しくなった。 アナハイムはディズニーランドやエンジェルス・スタジアムが在るところ。LAから車で一時間程。アナハイム・コンヴェンションセンターは大規模。4階建てで、端から端まで歩くと余裕で10分はかかる。 そのアナハイム・コンベンションセンターですら、NAMMを収容しきる事は不可能。出演の朝、到着してみて度肝を抜かれた。コンベンションセンターから徒歩5分以内にあるSheratonホテル、Hiltonホテル、そしてMarriotホテルと、その周りの外のスペースが全てNAMMに占拠されているのだ!ホテルは全ての集会場や廊下やロビーが出展者の演奏会場やブースやショールームと化している。外のスペースには野外コンサート用のテントがいくつも建てられ、朝っぱらからいくつもの演奏会が同時進行している。 音楽産業の規模を体感した一日でした。

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音楽の効用:認知症予防と症状軽減のワークショップ

私は、Dr.ピアニストとして、音楽を社会的なツールとして提唱しています。音楽の正しい活用方法を広めることで、沢山の人に、より健康に幸せに人間として尊厳のある生活をして行く手助けができると確信しています。今回は認知症の予防、症状の改善、そして介護でどのように音楽を使えるか、少しご紹介させてください。実際にワークショップも行っています。

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書評:習慣の力(2012)

私は原語で読みました。The Power of Habit: Why We Do What We Do in Life and Business by Charles Duhigg (2012), Random House Trade. 最近の読書は、内容もさることながら、ベストセラーの書き方に共通する事は何か、どういう書き方が本やメッセージに力を与えるのか、研究するつもりで読んでいます。この本はニューヨークタイムズやアマゾンのベストセラーに選ばれただけでなく、2012年の Financial Times and McKinsey Business Book of the Year Award にも選ばれています。 この本の主張は簡単に要約する事が出来ます。それはこの本の構築と論点が良くも悪くも簡潔だ、と言うことです。以下にまとめてみましょう。 習慣は無意識。例えば脳の破損により、新しい出来事を記憶する事が全くできなくなった人(側頭葉の内側-Medial Temporal Lobe新しい記憶を時間に基づいて整理するという機能をも持つーを破損すると短期記憶が出来なくなる)にも、繰り返しによって新しい習慣を確立する事は可能です。習慣は全く違う、もっと本能に近い脳の箇所(Basal Ganglia、大脳基底核)に記憶されるからです。2006年に発表された研究によると、私たちが日常的に行う行為の約40%は、習慣に基づいているということです。「研究者によると、脳は常に効率を上げる方法を模索しており、習慣と言うのはその結果である。脳まかせにすると、脳は我々の行動のできるだけ多くを習慣化しようとするだろう。(原文より “Habits, scientists say, emerge because the brain is constantly looking for ways to save effort. Left to

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明けましておめでとうございます。2020年演目発表!

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 まず、リクエストを公募した2020年の私のリサイタルプログラムを公表させてください。日本では6月中旬から7月上旬にかけて、また演奏させて頂く予定です。小さな曲はこれからまだ詰めていきますが、大体まとまってきました。題して「音楽の架け橋:旧世界🎼新世界、ベートーヴェンとガーシュウィン」。(日本での演奏日程をブッキング中!ご興味がおありの主催者の方々はお早目にご連絡ください。サロンや美術館、ホームコンサートのご相談も承ります。) ベートーヴェン(1770-1827)ソナタ28番、作品101(1816)21分 ベートーヴェン(1770-1827)ソナタ32番、作品111(1823)28分 ガーシュウィン(1898-1937)『ラプソディーインブルー』(1924)15分 この3つの大曲の歴史的位置づけを表す小品(未定・模索中) ラヴェル?『道化の朝の歌』『亡き王女のためのパヴォーヌ」他 スコット・ジョップリンかWilliam Grant Stillなどの黒人作曲家? ベートーヴェンとガーシュウィンに徹して彼らの小品で固める? べ「エリーゼのために」「月光(一楽章)」など ガ「I Got Rhythm」などの歌のピアノ独奏編曲や前奏曲 2020年は、ベートーヴェンの生誕250周年記念です。私はへそ曲がりなので、(皆がベートーヴェンを弾いてるときにわざわざ尻馬に乗らなくても…)と思っていました。博士論文では、ベートーヴェンの天才性は歴史的に演出された部分が大きい、と書きました。でも皆さんからのリクエストにもベートーヴェンが多く、(まあこの機会にちょっと…)と見始めた後期のソナタにどっぷりはまってしまったのです。何と言う恍惚の世界!しかも遊び心と、茶目っ気に溢れているのです。 「後期のベートーヴェンは難解」と言うのが一般常識です。私もその固定観念で、今まで作品101や111を避けてきました。が、今この年で初めて自由にこれらの曲を考察すると、ベートーヴェンは実はものすごく楽しんでこれらの曲に取り組んでいた、としか思えないのです。そして私も弾いていて本当に楽しい。 「難聴→失聴」の『運命』のベートーヴェン…これが歴史が創り上げたベートーヴェンのイメージです。でも本当にそうなのでしょうか? 失聴したから聞こえてきた最高の音世界をベートーヴェンは実は満面の笑みで楽しんでいたのでは?障害を持っているから苦しいだろう・不幸だろう、と言うのは健常者の想像力の欠如では?これはパラリンピックの精神にも繋がります。更に、ベートーヴェンには1/16黒人の血が入っていたという学説があります。例えばこれが本当だったとして、リズムの観点からベートーヴェンの後期の作品を見てみると突然ジャズっぽく聞こえてきたりもします。失聴したことで、(その上もしかしたら人種的マイノリティーだった?ことで)常識や固定観念から自由になる事が出来たベートーヴェン。ラッキーなベートーヴェンと言う観点から後期のソナタを検証してみると、全く新しい見解を持ってこれらの曲を解釈する事が可能になります。 そういうお話しをしながら、ガーシュウィンとつなげていきます。ガーシュウィンの両親は、ロシア系ユダヤ人としてアメリカに移民しているので、ガーシュウィンは一世です。反ユダヤ主義が世界的に横行していた時代に、黒人差別に自分たちの人生やアイデンティティーを重ねてみるユダヤ人は多かったようです。そのガーシュウィンの出世曲が「ラプソディーインブルー」です。昨年渡米30年を迎えた私の、日本での演奏活動20周年記念にも相応しい曲です。更に、実に400年前—1620年に清教徒がメイフラワー号に乗って宗教弾圧を逃れて自由を求めてきた自由民主国家、アメリカ合衆国の代表的作曲家とされるガーシュウィンを、この大事な大統領選挙を控える2020年に演奏するのは、意味深だと思います。 書き出してみると、楽しみが募ってきます。ちなみに、生活が不規則になり勝ちな音楽人生ですが、今年の抱負は3時間練習、3時間本の執筆、8時間睡眠を、バローメーターに毎日前進する事!本の執筆にはブログやメールをやっている時間は含みません!楽しんで頑張るぞ!

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