音楽

音楽家の健康管理

昨日のマインド・ボディーのクラスにはお医者さんが来てくれた。 彼女はPAMA(Performing Arts Mdeicine Association)と言うのに登録していて、毎月第一木曜日10~2時まで(受付)のperforming artists(演技芸術家―音楽家、ダンサー、役者、など)専用の無料のクリニックを開いている。こう言う無料クリニックとか、performing artists専門のお医者さんと言うのはどんどん増えていて、今ではアメリカ主要都市にはこういうクリニックが絶対あるそう。 なぜperforming aritsts専用のクリニックが必要かと言う理由はいくつかある。 #1 こう言う人はお金も保険も無い事が多い。 #2 こう言う人特有の怪我、問題がある。例えば腱鞘炎とか、ジストニアとか、ダンサーや役者の場合、摂食障害とか。そういう専門知識を持っている医者が一般的に少ない。 #3 医者の中には医者になるまで楽器を本格的に勉強していた、とかアーティスト系が多く、医者になってもそう言う世界と何らかの形でつながっていたい、と願う人が多い。 この人はカイロプラクティスも東洋医学も勉強した、何だか凄い人なのだが、ジョークを交えながら説明してくれた一番大事な事二つ。 #1 音楽家と言うのはsmall muscle athletes (小さな筋肉の運動選手)であると言う事。 #2 オリンピック運動選手が一番気を使う事を、音楽家ももっと気をつけるべきだと言う事。それは①栄養摂取と、②自分の競技に直接関係無い筋肉のトレーニング。 ①に関して、まずとても科学的な説明が在った。細胞レヴェルで、以下に酸素と栄養が身体の中に伝達され、それが以下に健康な反射神経、脳みその働き、そして筋肉の働きに必要不可欠か、と言う事。それからいかに演奏と言うものがカロリー消費が激しいもので、定期的な健康な食事摂取がより良い演奏の為に大事か、と言う事。 ②に関しては、筋肉と言うのは収縮だけしかし無い物だ、と言う事。そしてある一定の筋肉を使い続けていると、次第にその筋肉は収縮しっぱなしで固くなってしまう、と言う事。筋肉を伸ばす事が出来るのは他の筋肉を使ってそこを収縮させる事だけによって。だから上半身だけしか使わない人でも、下半身も鍛えなければいけないし、前半身も同じだし、etc. 夜はpiano pedagogy(ピアノ教授法)のクラスの為に、大学より若い生徒(小、中、高校生)の公開レッスンを見学しに行きました。とても熱心な先生だったけれど、年齢相応の話し方をするのは難しいな、と思いました。

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ヒンデミットの「白鳥を焼く男」

来る11月9日に指揮をするヒンデミット作曲「白鳥を焼く男」を猛勉強中。自身も超絶技巧のヴィオラ奏者だったヒンデミットが書いた三つ目のヴィオラ協奏曲である。 一曲指揮するのに、こんなに時間かけて勉強してるなんて、本業の指揮者は一体どうやって2時間のプログラムの曲目の勉強を毎週こなすんだろう、とちょっと自分が歯がゆい気もするが、こうやって一生懸命勉強するのは中々楽しいものである。 この曲は歴史的背景も中々面白い。 1935年に書かれているのだが、これはヒンデミットがナチスに糾弾され(知らなかったのだが、ナチスもスターリンと同じ様に『音楽は不協和音を少なく、一般人に心地よい様に ―前衛的なものは取り締まる』と言うスタンスを取っていた模様)、ドイツでの演奏会がどんどん減らされてやむなく外国に演奏の場を求め始めている時に当たる。1936年にヒンデミットの曲はドイツでは演奏禁止になり、彼は最終的にアメリカに移住するのだが、この曲はその前の話。 35年にJoseph Goebbelsと言うナチスの一員が公共で行ったスピーチの中でヒンデミットを糾弾している物が今私の手元に在る。「ヒンデミットはドイツ人であるが、だからなおさらユダヤ人のエリートがいかにドイツ国民の思想をむしばんでいるか、と言う証拠になると言えよう」。さらに、ヒンデミットの妻はユダヤ人だったという事情もヒンデミットの立場を難しくしただろう。 「白鳥を焼く男」と言うのは何だかショッキングなタイトルだが、由来はヒンデミットがこの曲に取り入れた四つのドイツの中世時代の歌のタイトルである。一楽章には「山と深い谷の合間に」、二楽章には「緑に育て、菩提樹の木」とそれからフーガの主題として「垣根に座ったかっこう鳥」、そして三楽章にタイトルトなる「白鳥を焼く男」と言う歌を使っているのだ。ヒンデミットが選んだこの4つの歌の歌詞にこの時のヒンデミットの心情を反映して読み込む人は多い。例えば、「緑に育て、菩提樹の木」と言うのは別れなければいけない恋人の歌だが、その歌詞に在る「もう耐えられない」と言う所のメロディーと、「悲嘆にくれる日」と言う所だけが、楽章の最後にヴィオラのソロで思わせぶりに出てくる。それから一楽章の「山と深い谷の合間に」は恋人を後に残して、山と深い谷間の合間にある「自由の道」を歩いて行く、と言う歌である。この恋人を「祖国」と読むのだ。 さらに、ヒンデミットが残した短い「前書き」も意味深である。「中世時代に沢山いた旅周りの音楽家が、異国から来て幸せにたむろす町の人々の前で演奏する。彼の出身地の歌は悲しい物も在れば、楽しい物もある。彼は技の限りを尽くして、このメロディーに装飾をして演奏して聴かせる」と言う前書きである。 勉強し過ぎると頭がくるくるしてくる。私はどうも根詰め過ぎな様な気がする。もっと色々なものを一定の時間ずつやれば、気分転換になって効率が良い様な気もするのが、一つの事を始めるとどんどん掘り下げたくなってしまう。そして最後にぐったりくたびれて、一つのプロジェクトは必要以上に仕上げても、他のプロジェクトが手つかず、と言う状態になってしまうのだ。それに一つのプロジェクトに集中し過ぎると、細部にとらわれ過ぎて全体像が見えなくなってしまったりする。 反省、反省。

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Kurt Schwittersと言う画家と「ダダイスム」について

来る11月20日にヒューストンのDe Menil Collectionと言う美術館で行われる「Stop, Look, and Listen」と言うイベントで私はKurt Schwitters と言う画家の特別展示室で彼の作品に関係ある演奏を提供する事になっています。他に一人打楽器奏者と作曲家が同じDa Camera of Houston Young Artist Programから参加することになっています。昨日は3人で初めての打ち合わせが在り、その準備で私は図書館で色々下調べをしました。Kurt Schwittersはドイツ出身の視覚芸術化でダダイスムの代表的な芸術家でもあります。彼が「音楽・作曲」と称して書いた詩は言葉ではなく、音声が発音として書いてあるものです。 知らなかったのですが、「ダダイスム」と言うのは第一次世界大戦勃発に反発して起きた芸術運動の様です。人間の論理と思想がこう言う破壊への道につながるなら、論理と思想を放棄した芸術作品でその方向へ対抗しよう、と言う事で始まったようです。只のでたらめみたいに思っていましたが、そう言う理想を持って始まったとは初めて知りました。ダダイスムが主に視覚芸術が中心になって発展した運動ですが、音楽ではサティ、ジョン・ケージなどが良く一緒にされます。ところがインターネットで調べてみると、私の今まで知らなかったErwin Schulhoff と言う人がとても面白いピアノのソロ作品を沢山書いている事を知りました。視覚芸術のダダよりは、ずっとしっかり「音楽」ですが、音楽としてとても気に入ったのです。これならこう言うプロジェクトじゃなくても弾いてみたい、と思うような曲風です。 こんな事、自分一人では調べてみようと思うきっかけも無かったけれど、面白いなあ、こう言うのも縁だなあ、と思います。そして3人で行ったミーティングはとても楽しい物でした。皆とても意欲的に積極的にアイディアを沢山準備して来ていたので、とても楽しいディスカッションとなりました。楽しみです。

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作曲家Bernard Randsが回想するストラヴィンスキー

またまた眼が覚めてしまった。朝の3時40分―こうなるともう悪循環の長丁場。 明日は一日音楽を離れてみようか、と思う。 昨日ああ書いてちょっと反省したので、 今夜はワルシャワで行われているショパン・コンクールをバックにメールを書いたりしている。 皆ミスタッチが凄い少ない。弾き込んである。とても上手。 忙しくてきちんとメールを書けなかった時も色々書き留めておきたい事は次々と起きている。 例えば私がこの頃一緒にお仕事させて頂いている作曲家Augusta Read Thomasの夫で やはり作曲家のBernard Randsは ベリオやダラピッコラに師事したり、 ブーレッズやバレンボエム、シカゴ交響楽団やニューヨーク・フィルハーモニックなどと 定期的に仕事をしている人だけど、 その人がまだ駆け出しの時パーティ―で遠くから見る機会の在ったストラヴィンスキーの 自ら語る自分の作曲の毎日の口調の物真似。 ロシア語とフランス語の発音の混じった奇妙な英語で 「私は毎日、旅の途中でも(彼は飛行機を嫌い毎回船で移動したらしい)朝起きたらすぐに作曲を始める。 在る程度書いて昼食を食べたらウィスキーのボトルを開ける。 それをゆっくり飲みながらその日の残りを過ごす。 ボトルが空になったら眠る。 その時間はその日によってまちまち。 デモ絶対いつも酔っぱらって眠る」 睡眠障害は音楽家にとっては割と普通の事らしい。 私は大抵いつも凄く健康に安眠するし、物凄く寝付きが早いので たまにこうして夜中に目が覚めると「世も末」と言う風にワーワー騒ぐが、 もっと深刻な睡眠障害で悩んでいる人は沢山いるらしい。 例えばAugusta Read Thomasは「音楽で頭がいっぱいになって良く眠れない」と良くこぼしている。 彼女は毎朝4時起きしてどんなに忙しい日でも8時までは作曲に専念するそうだ。 その代わり夜はとても早い。 物凄く大事な音楽界が在る時以外は10時には寝てしまう。 演奏家も、普通演奏会は聴きに行くにしろ、自分が演奏するにしろ大抵夜の8時から10時までだから そのまま会場から家に直行しても寝付くのはかなり遅くなってしまうし、 大抵片づけや挨拶や打ち上げやらで、家に直行出来る事は少ない。 そして特に自分が演奏した後と言うのは興奮で直行帰宅しても中々寝付けないものである。 色々な人が健康な睡眠の為に色々努力をする。 お酒は伝統的な解決法だ。 私はアルコールは弱いので、これは問題外だが、 強い人は日常の精神安定剤、催眠剤、そして社交の大事な生活の一部になっている。 その他運動、瞑想、ヨーガ、などなど。 インターネットは良く無い。 画面の明るさが何だか神経を不自然に覚醒するし、 何だかちょっとだけ気を紛らわせてもう一度眠りなおするつもりがどんどん時間が過ぎてしまう。 もう終わりにして、もう一度眠るように頑張ります。

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Da Camera of Houston Young Artist Prorgram

昨日電話が在って、私はDa Camera of Houston と言う音楽事業の「Young Artist Program」の参加者として、選ばれました。Da Cameraはイタリア語で「室内の」と言う意味です。この音楽事業団体は、音楽をコンサート・ホールだけでなく、もっと身近で、親近感を持てる場所で演奏したり、選曲にテーマを持たせたり、音楽以外の芸術と関連性を持たせることで、より深く音楽に親しんでもらおう、と言う意向を持って1987年以来活動している団体です。かなり大きな団体らしく、有名なゲストを沢山呼んでいます。 「Young Artist Program」と言うのは二つの趣旨を持って運営されています。 #1 キャリアを向上する為の演奏経験を次世代の音楽家に積ませながら、いつでもコミュニティー貢献を念頭に演奏活動を積極的にするように、ゲストによる公開レッスンや講義を通じて、指導をする。 #2 年若い次世代の聴衆や、普段余り演奏会になじみの無い階層に、音楽を届ける活動をする ゲストや、正規のDa Cameraのメンバー(ライスの教授、ヒューストン交響楽団のメンバーなど)と共演したり、地域の学校への出張演奏や、時には貧困層地域に在る学校にレッスンをしに行ったりするようです。特に貧困地域での活動は、演奏家に対する支払いは全てDa Cameraが行い、その地域の人には無料の奉仕となります。 Houstonには私は音楽的なコネが余り無く、急に来てしまったので、こう言うプログラムの一員となれる事は光栄なだけでなく、実際これからの演奏活動の為にとてもラッキーでした。嬉しい! 10月5日に説明会があり、これからの演奏活動の内容などが明らかになります。

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