飛び入り演奏
pianofestでは色々なことがとても簡単と言うか、気楽である。 「明日は水曜日なので、恒例のコンサートがあります。演奏したい人は~?ああ、君のベートーヴェンの3、4楽章は10分くらいだね。それから君のバッハはとても良かった。何分くらい?あと、ロマン派が欲しいね。。。あなたのラフマニノフは何分?。。。」と言った感じで演奏会の前夜、夕食の会話で次の日のプログラムが決まる。 昨日の水曜日の演奏会では私のルームメートが二人と、後数名弾くことになっていた。正午のコンサートで10時ごろ会場に向かって出発と言うことで、私は二人に付き合って早起きして練習に向かった物の、本番が無いからリラックスしてゆったりと朝食をとり、さあ、そろそろ練習を始めようかな、と9時半ごろピアノに向かったとたん、がたん!とドアが開いた。 「今日の演奏会に出るとしたら、何と何が弾ける?13分くらいの穴を埋めなきゃいけないんだ」 。。。なんと、出場予定のピアニストの一人が手首に怪我をしたのである。 「えっと~、シューベルトの即興曲とか、モーツァルトの幻想曲とか。。。」 「完璧!出て!」 「でも、ドレスが。。。靴が。。。」 「今すぐお家に帰って取ってきて!」 「ギャ~~~!!」 と、言うことでぜんぜん練習しないまま、十八番ではあるがここ何ヶ月、いや、もしかすると何年もさらっていない曲を人前で披露する羽目に。。。 会場はBrookhaven Laboratoryと言うなんだか原子力研究所で国の最高秘密の研究所に在る講義用のホールである。やけに警備が厳しく、免許証の提示などが要求される。古いスタインウェイのフルコンがステージに在って、お客さんは研究を休んで和みに来た科学者が主な感じだが、中には身分証明書提示の厳しい審査にもめげずに、ドライヴしてきてくれた一般聴衆も居る。私は、日本の福島原発に関する彼らの意見を聞けるかも知れない、と意気込んでいたのだが、自分の研究の話はあまり出来ないらしいし、第一、あんまり演奏後に聴衆に挨拶すると言う、雰囲気ではなかった。演奏はまあ、状況を考えれば上々。喜んでもらえてよかったが、突然の事でびっくりした。