September 2010

ユリズミックスとTokyo弦楽四重

今朝はMind/Bodyのクラスで、ユリズミックス体験会をした。 ユリズミックスとはフランスのDelcrozeと言うピアニストが発明した音楽教授法で、音楽を身体で感じる事で、より音楽的なリズム感、拍、をつかもうと言うメソッド。私の記憶違いだろうか―「窓際のトットちゃん」でトモエ学園で生徒にユリズミックスをさせていたと思うのだが...ピアノの伴奏に合わせて、生徒を拍に合わせて歩き回らせ、その内腕は指揮、頭はリズム、とか身体の色々な部分でその曲の違った側面を反映させる。そういう訓練をすることで、音楽を頭、あるいは耳で覚えるのでは無く、身体で感じさせよう、と言う教授法。主に子供に使われるが、もともとは杓子定規に弾く音楽学生の治療法として開発された。 ライスのピアノの教授の一人がこのユリズミックスのエキスパートだそうで、今日は一日体験をした。中々楽しい。そして、中々難しい。しかしこうやって譜読みをすれば、リズムが複雑な曲になればなるほど、助けになりそう。面白かった。 夜は学校の大ホールで東京弦楽四重が演奏した。東京弦楽四重と言うのは、日本ではどれだけ評価されているのか知らないが、アメリカでは弦楽四重のトップクラスである。ただしもともとのメンバーは全員日本人だったのだが、メンバーが抜けるたびに新メンバーが白人なので、今では日本人は第二ヴァイオリンとヴィオラの方だけ。今日のプログラムはハイドンの最後の弦楽四重、バーバーの弦楽四重、そしてシューベルトの弦楽五重奏でした。ほぼ満席の聴衆が、楽章の合間にも拍手をせず、物音一つ立てないで聴き入っているのには恐れ入った。アメリカの聴衆のマナーはかなりひどく、ニューヨーク・フィルや、カーネギー・ホールのコンサートでも演奏中の聴衆の物音や無遠慮な咳が絶え間ない時も在るし、楽章間の拍手も在る。私は拍手は聴衆が感動したなら、拍手したいならすればいいと思う。でも、演奏中の無遠慮な咳や物音はやはり演奏者そして他の聴衆のの集中を妨げるから、嫌いだ。ヒューストンはその点、ニューヨークやロサンジェルスの100倍も良い(少なくとも今夜の演奏会では)。びっくりした。でも、シューベルトの3楽章の終わりはとても盛り上がって、私でさえ思わず拍手しそうになったのに、聴衆がかしこまって「シーン」としているのは、ちょっと不自然な感じがした。なんにせよ、今日の聴衆の音楽の知識レヴェルは相当高かったと思う。

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ライス大学の図書館

ライスの図書館は堂々とした4回の建物です。 正門からヨーロッパ風の広々とした前庭を経た所にド~ん、と建っています。 入学式の時に受けた説明によると、毎年卒業式はこの前庭で行われ、 卒業式の閉会と共に卒業生たちは正門を出て、現実の世界へと羽ばたき、 残された教授たちは、すごすごと図書館へ戻って行く、と言う象徴的な演出がされるそうです。 図書館の4階には、大きな窓からこの前庭が見渡される広々としたスペースが在ります。 ここにはお菓子やジュースを売る自動販売機が在って、飲み食いが許され、 地面にじかに置く巨大な座布団が沢山点在しています。 この座布団は身を沈めると自分の体の形に合わせて形が変わり、とても座り心地が良いです。 勉強の休憩や、読書の為にここに来る人は多くいます。 この図書館は一定の会員費を払えば一般の人も入れるのですが、 ライスの生徒に限って、月曜日から金曜日までは24時間利用可能です。 いつも沢山の人が本当に真剣に勉強しています。 この図書館の静けさは特筆ものです。 演奏会の時の静けさの様に、ぴーっと緊張感が走った静けさです。 今日は私はベル・ボトムのジーンズだったのですが、 図書館に行って急に、歩くたびに自分の立てる衣擦れの音が気になりました。 そういう音まではばかられるほどの緊張感なのです。 ここに来ると(集中して、一杯効率よく勉強しなければ)と、キリリとした気持ちになります。 今日はモーツァルトの交響曲41番「ジュピター」の4楽章と、 ベートーヴェンの交響曲7番を勉強しました。

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ピアニストが大学で仕事を得る方法

今日は、博士課程セミナーが在った。 今日のトピックは「大学で仕事を得る方法」。 音楽家が博士課程の勉強をする理由の大きな一つは、大学で教職を得たかったら博士課程は大抵必要、と言う事が在る。ライスの音楽の博士課程はそのことを念頭に、いかに大学側にとって魅力的な卒業生を作り上げるカリキュラムとなっている。博士課程に入学して最初の学期にまず、大学でのポジションをゲットする為に必要な履歴書の製作、面接に向けての訓練、大学側が何を新規採用の教授に求めているのか、大学で仕事をするという事がどういうことか、教わる。 今日のクラスではまず、大学の教授の階級から教わった。 アメリカの大学では、教師のポジションは大きく二つに分かれる。 Tenure と Non-tenureである。 Tenureと言うのは、終身雇用の事である。Tenureが付くと、余程の事が無い限り死ぬか退職するまでその教職は自分のものである。これは、仕事や収入の安定をを保障する事で、少数派・急進派の見識を、学者が自由に発表出来る事を目的に出来上がったシステムである。Non-tenureと言うのは、大抵一年ごとに契約が更新され。 Tenure と Non-tenure はさらに細かく分かれる。 Non-tenure 1) adjunct; 各学期、クラスごとあるいは自給でお金をもらう。ベネフィットは付かない。(ベネフィットと言うのは、健康保険や退職年金積立の事で、給料の平均35%の額だそう。アメリカでは健康保険が異様に高いので、これは死活問題である。)このポジションは使われ放題。経験を積むには良いが、支払いが少ないので他の収入源と掛け持ちになり、パート・タイムなのでそのポジションの為に遠くまで通わなければいけない場合が多く、本業(例えば練習)がおろそかになり、本末転倒になる危険性がある。そしてここで本末転倒になると、他の教職に応募した時余り良くない。ここで行き詰まりになってしまう可能性がある。 2)Instructor(または、Artist Teacher): 正規雇用で、給料で支払われ、ベネフィットが付くが、一年ごとに契約更新。いつ首になるか分からない。 Assistant(Tenure-track); まだtenureは付かないが、tenureにつながる可能性の強いポジション。 ベネフィットが付く。3年ごとの契約更新で、大抵6年目くらいに業績の査定が行われ、これに受かればTenureがもらえる。 Tenure 1)Associate Professor、多分日本の助教授と同じ。Tenure が付き、教授との違いは給料の額だけ。 2)full Professor、多分日本の教授と同じ。Tenureが付き、給料が高い。 ピアノの場合、最近では一つの教職に80人~200人の応募が在るそう。そしてピアノの教授と言っても、ピアノを個人レッスンするだけではない。室内楽、伴奏の技術、初見や移調のクラス、ピアノ科で無い音楽学生の副科ピアノや、音楽課程で無い一般科目専攻の生徒のピアノ・レッスンや時には自ら伴奏をすることを課す応募も在る。音楽理論や聴音を教える事を課す応募も在るし、在るいは一般科目専攻の学生の為の「音楽一般教養」や、一般教養としての音楽史を教える事を課す応募も在る。それはまだ良い方で、不景気の世の中、中にはチェロの教授の応募の中に「ダブル・ベースも教えられること」と含む応募も在るそう。 他にも面接の時のエチケットとか、履歴書の書き方、仕事をゲットした場合の給料交渉の仕方まで、今日は2時間半で耳から情報がこぼれそうなくらい、沢山の事を教わった。頭がぐるぐるしている。 今日一番びっくりしたのは、tenureと言う、学会における終身雇用のシステムが無く成るかも知れない、と聞いた事だ。学校側からすれば、終身雇用の教授と言うのは、昇級しなきゃいけないし、中々高くつく。今教育産業が不景気な中、資本主義的な考えから、儲かる学校運営と言うのが流行っているそう。そして、その流れから行くとtenureが廃止になる可能性が在るそう。しかしそうすると、学校という組織の中で教授の立場がとても弱く成る。理想的な教育という視点から言うと、恐ろしい事である。

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運動の効用

先週末は社交、勉強、練習と色々在って、ジムでの運動を3日怠けてしまった。 昨日の朝、何となくだるい感じ。 週末頑張ったからか、はたまた運動を怠けたからか、いささか判断が付きにくく、 朝一でジムに行ってみた。 (これで元気が出なかったら、久々にコーヒーでも飲むかなあ。。。) と、テロテロ運動を始めたら、間も無く大汗かきながら一生懸命になっていた。 そして今朝思い返してみると、実にエネルギッシュな、充実した一日だったのである。 朝の無気力が信じられない程。 朝はリサイタルのプログラムに関する用事を色々片づけ、 図書館に行って必要文書を借りたり、勉強したり。 午後はクラス、そして2時から7時まで二つのオーケストラのリハーサルを聴講。 その休憩時間は15分、20分と隙を見て、効率よくせっせと練習。 7時から軽く食べて、そして何と夜11時までバリバリ練習したのである! (ライスでは練習室は朝7時から真夜中12時まで開いている。それから図書館は24時間!) エネルギーが在る時は、それが当たり前で有難味を味わう余裕も無く色々こなしてしまう。 でも改めて (自分は健康なんだなあ、そして運動と言うのはエネルギーを本当に活性するんだなあ) と感慨深い。 今日も朝一で運動してみようと思う。

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勉強会

宿題と、練習と、そしてまた宿題、と言う感じで一日が終わろうとしていた昨晩。 (今日は、ちょっと非社交的だったかな)と少しさみしく感じながら ベートーヴェンの交響曲とにらめっこをしていたら 学校で同じく勉強をしていた子がインターネットでチャットをしかけて来た。 「お茶でも飲みに行こうよ」 「今週末はお金使いすぎたから、お散歩なら良いけど、お茶は飲まない」 「じゃあ、今から行く」 車を持たざる者に取っては車所有者のこう言う行動力は時として驚異である。 もう外は暗いのに。。。。 「ベートーヴェンの和声分析しなきゃいけないから、ちょっとだけね」 と念を押す私に 「じゃあ、家に総譜を持ってきて、一緒に勉強しよう! アイスクリームの買い置きも在るし、お茶も作れるし、それに全部タダだよ!」 その明快な論理に思わず連れられて行ってしまった。 お互いそれぞれの宿題と格闘としながら、アイスクリームとお茶で、とても楽しい一時だった。 あのまま一人で部屋で総譜をにらんでいたより、結局はかどったかも。 「ちょっと邪魔をしても良い?ここどうしてもわからないんだけど。。。」 とお互い何回も繰り返し、かなり話したが、でも話す相手の居る方が考えが整理出来るし、 それにず~っと同じ所をにらんで、同じ事を頭の中で反芻していると、 時には灯台もと暗しになって、当たり前の事を見落としたりしている。 会話と言うのは、時として思考の潤滑油になるんだなあ、と思った。 勉強=非社交、という公式は取り払ってみよう、と思った。

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