February 2011

真夜中までリハーサル。

ライスの音楽学部では学部生は卒業までに二回、修士は一回、そして博士号は卒業までに五回の演奏が義務付けられている。そして本番が在るからには、本番前に音響や楽器、照明などのチェックを行うリハーサルもある。その他外部からホールを借りて行われるイベントもあるし、ホールは公開レッスンや、時には客演講義にも使われる。必修でない、自主演奏会もあるし、室内楽演奏はこれまた自主、そして必修で色々在る。と、言う訳でどんな音楽学校でもそうなのだけれど、学校の演奏会場と言うのはいつも予定がぎっしり入っている。と、言う訳で本番前の会場でのリハーサルは時として非常な時間に行われる。昨日は夜の10時から真夜中までリハーサルをした。 この事は何度かブログにももう書いたのだけれど、ライスの音楽学部は5人の博士課程の生徒を選び、国会図書館へ送り込む、と言うプロジェクトを去年に引き続き、今年も実地している。私たちは去年の12月まず、国会図書館一般と、特に音楽部門のコレクションについて学び、実際にリサーチをする、と言う事を5日間に渡ってした。そしてこのリサーチと図書館について学んだ経験を活かせる室内楽のプログラムを相談して決定し、来る3月の4日と5日に国会図書館のクーリッジ演奏会場で演奏するのである。ワシントンに実際に向かう前に学校でまずお披露目コンサートが来る火曜日に在る。その為の通し稽古が昨日の夜10時から12時までだったわけだ。 昨日の私のスケジュールはこんな。 朝眠れる限り寝坊して、野菜たっぷりの健康朝食。 9時半から11時まで図書館で勉強 11時から2時まで練習。 2時から4時半までオーケストラのリハーサル(ルートトラスキーと言うポーランド系作曲家の「オーケストラの為のコンチェルト」と言う曲でピアノ・パートを担当。素晴らしい曲だが、中々難しい)。 4時半から同じく国会図書館のプロジェクト・チームに参加している他の子と、夕飯を食べながら今後の対策(リハーサル、現地でのリハーサルの場所の確保、など)について検討会。 練習 10時から真夜中 リハーサル。 今日は久しぶりにコーヒーの威力に頼らなければ予定をこなせないかも。

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レベッカ・クラークと言う作曲家について。

レベッカ・クラーク(1886-1979)はイギリスでアメリカ人の父親とドイツ人の母親の間に生まれた作曲家である。生前は女性にしては珍しく作曲のコンクールで賞を取り、その為に何度か脚光を浴びたが、主にヴィオラ奏者として活躍し、パブロ・カサルス、ルービンスタイン、マイラ・ヘスなどの超有名演奏家と室内楽の共演をしたり、イギリス四重奏と言う、女性四人の四重奏と世界中演奏旅行したりしていた。アメリカでその人生の大半を送っている。90代になってから偶然、ピアニスト、マイラ・ヘスを記念するラジオ番組にマリア・ヘスの幼馴染として出演した際、彼女自身の作曲の多くの初演をマイラ・ヘスが手掛けていた事が話題に上り、やがて彼女自身が同じ番組で後日取り上げられることが決定。そしてその番組で演奏された彼女のヴィオラ・ソナタ、ピアノ三重奏などが思わぬ反響を呼び、シンデレラの様な好運なカム・バックを他界寸前に果たした。 私は来る3月の4日と五日にワシントンD.C。の国立図書館(library of Congress)での演奏会で、彼女のピアノ三重奏を演奏する。Library of Congressには彼女が生前書いた直筆の楽譜(ピアノ三重奏も含め、数点)や、手紙などが多数残されており、この演奏に向けて私は彼女の伝記や、エッセー、当時の女性の投票権運動に関してや、世界大戦がどのように女性の社会的立場を向上したか、と言う事についてもちょっと調べた。 芸術家が良い仕事をするためにはいかにどれだけの好条件がそろわなければいけないか。そして、その好条件が必ずしも本人にとって「楽」な人生では無い、と言う事も中々興味深い事実である。例えば、第一次世界大戦の勃発は彼女自身にとっては在る「好条件」の一つとなっている。大戦勃発前の1910年、彼女は長年行き違いの多かった父親と最後の大げんかをし、家を放り出されている。学校は当然(学費を払えないから)退学。そしてその後彼女はヴィオラ奏者として、自らの生計を立てるのである。かなり上手い奏者だったようだが、それでも女性蔑視の強い当時のイギリスである。まだ女性の参政権も認められていない。その彼女が大成した背景には、大戦で多くの男性奏者が参戦してしまったから、と言う事実もあると思う。 彼女の作曲活動は家族にとってはからかいの種でしかなかったらしい。それでも断固として書き続けた彼女のハングリー精神はむしろ反抗精神なのかもしれないが、他界3年前に思わぬ偶然から脚光を浴びたにも関わらず、彼女の遺族が彼女の残した直筆の多くや、自伝などの研究を許していないらしい。ピアノ三重奏や、ヴィオラ・ソナタなど、それでも主な作曲は再出版を最近果たし、ヴィオラ・ソナタに至ってはすでにヴィオラ奏者なら誰でも勉強する曲になっているが、彼女の他の作品や、彼女自身の人生についてはそういう訳で余り多くの資料が無い。 彼女のピアノ三重奏は、文句無しに素晴らしい、訴えかける物を多大に持っている作品である。胸をかきむしるような、悲痛な演説の様な一楽章の第二テーマは、何か童謡や民謡を思わせるような、耳馴染みが無いのに懐かしいメロディーで在る。2楽章の沈痛な美しさも胸を打つし、3楽章のドライなユーモアには思わず踊りだしたくなる。私はこの余り知られていない作品を、library of congressで演奏出来る事を誇りに思っている。

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今週末の5つの演奏

記録の為にも今週末の演奏の記録: 2月11日(金) 朝 ― 2月12日世界初演予定の子供が参加できるように作曲された、ジョージ・ヒースコ氏作曲の"Alpha-Beta, One, Two, TREE!" を小学校で試験演奏。作曲家と言う物は、音で実験する科学者の様なものだ、と説明するジョージが子供の提案を募り、子供たちの前で曲を演奏して行く。子供はジョージの合図で曲と一緒に足踏みしたり、ダンスしたり、数を数えたり、アルファベットを唱えたりする。 2月11日(金) 夜 ― ライス大学のオーケストラで、去年作曲科を卒業したChris Goddardの曲, "Songs of Arion"のピアノ・パートを担当、演奏。この夜のオーケストラの曲はゴダード氏の曲を皮切りに、教授Desmond Hoebig氏によるエルガ―のチェロ協奏曲、そして休憩をはさんでショスタコーヴィッチの交響曲11番 2月12日(土) 午後 ― ヒューストンに在る美術館、The Menil Collectionにて、ジョージ・ヒスコしの "Alpha-Beta, One, Two, TREE!”の世界初演 2月13日(日) 午後 ― 学校のダンカン・ホールで3月にD.C.の国立図書館で演奏する予定の曲の一つ、レベッカ・クラークのピアノ3重奏を演奏。 2月13日(日) 午後 ― ヒンデミット作曲ヴィオラ協奏曲「白鳥を焼く男」をピアノ伴奏で演奏。

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長い、長~い一日、長い、長~い週。

今日は朝、ヒューストンの小学校で2回演奏をして、そのまま直接学校でのクラスに駆け付け、午後はリハーサルを二つこなして、その後ずっと練習し、夜はオーケストラの演奏会でピアノ・パートを演奏した。朝の小学校での演奏会が遠い昔の事に思えるのは、今日余りに色々な事が在ったからだろうか? はたまた自分が演奏した後(現代曲。プログラムの一曲目でした)聞いた、エルガーのチェロの協奏曲の美しさにつまされたからか、あるいは後半に在ったショスタコーヴィッチの交響曲11番(一時間5分に及ぶ大曲。しかも楽章と楽章がつながっていて、一つも休みが無い)に圧倒されたからか。 今週は風邪をひいてしまいながらも、一日も休むことなく鼻をかむための塵紙を片時も離さずに走り回ってリハーサル、本番、クラス、宿題とこなした。風邪は回復に向かっているが、自分にご褒美で今晩はゆっくり寝ようと思う。

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「ピアノの時間」エピソード#4が放映されました。

ロサンジェルスのローカル日本語放送、Newsfield Television Broadcast (略してNTB)で隔週放送される、私の「ピアノの時間」、2月6日にエピソード#4が放映されました。今回のテーマは「メロディー」。ショパンのノクターン(有名な奴)を例に弾いています。 下のURLの9分53秒から14分40秒までが「ピアノの時間」です。 http://www.soto-ntb.com/program/2011-02-06/

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