June 2011

ピアノフェストの演奏会

ピアノフェストでは毎週月曜日とほとんどの水曜日演奏会があります。 それぞれのピアニストが大体6分から15分くらいずつ、小品や大作の一部を演奏し、全部で6人くらい出演します。 私は昨日、モーツァルトの幻想曲ニ短調と シューマン作曲ドビュッシー編曲の「6つのカノンの練習曲」と言う2台のピアノのための曲を演奏しました。 演奏が行われたのはある大学の構内に在る演奏会場でスタインウェイが二台入っていて350人くらい入る、 とても感じの良いホールです。 昨日は約200人の聴衆が来場し、暖かく私たちの演奏を受け止めてくれました。 毎週、月曜日の演奏会の後は、ピアノフェストのために大口寄付をしている人が ボランティア、他のドーナー、そしてピアノフェスト参加者全員のために盛大なパーティーをしてくれます。 昨日の家は、物凄く大きくて、前庭には大きなプールとジャクジ、 そして後ろの庭は軽く10分くらいの散歩が出来るほど広かった! 出てきたのは、ロブスターや、ムール貝などが沢山入ったパイエヤ、ソーセージと野菜の煮込み、 マッシュルームに詰め物をして焼いた物や、おいしいものが沢山。 そしてバーがあって、何でも飲み放題です。 他のお客さんが沢山居る時は私たちもまだかしこまって無茶食い程度でお行儀良くしていましたが、 みんなが帰ってピアノフェスト参加者だけにってからは無礼講でプールで大はしゃぎしました。 とても楽しかったです。

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ゴールドベルグを初めてリピート付きで演奏しました!

私が今参加しているPianofestの在るEast HamptonはNYに住む金持ちが避暑用の豪邸別荘地として有名です。こういう人たちは、すでに退職していたり、特に職業を持っていない人が多く、音楽鑑賞や、芸術関係、またボートや車などの趣味に生きている人が多い様です。そういう人たちのスポンサーによって私が今参加している様な音楽祭が実現するわけです。 今日はPianofestの個人スポンサーの一人で在るドイツ人の女性のお家で、彼女と彼女のお友達のためにゴールドベルグをリピート付きで演奏してきました。私はゴールドベルグを8月にCD録音する予定で、今リピート(とそれに伴う装飾や即興)付きで演奏するために特訓中。この音楽祭の音楽監督に、「なるたけ沢山、人の前で通し稽古をしたいので、助けて下さい」と頼んだところ、このホームコンサートが実現されたわけです。 個人宅とは思えないような豪邸。見渡す限り広がる花咲き乱れる庭にはハンモックがぶら下がっています。「天国」と言われたら、こういう場所をイメージする人も居るかもしれない。私のミニ・コンサートのためにこじんまりとした、でもとてもおしゃれな飲み物とおやつの用意がお客さんのためにしてあり、居間にあるスタインウェイはきちんと昨日調律されていました。 日本でのゴールドベルグの演奏はリピートをせずに大体40分程度でしたが、リピートをした場合はざっとその倍の80分かかります。そしてやはり疲れた。腕も疲れたし、脳みそが疲れた。耳も疲れました。でも、だから達せられる境地、というかナルヴァーナのような感じも味わいました。そしてリピートをするから聞こえてくる物もある。実現できる声部の比較検討もある。全部弾き終わった時は本当にタイム・トラヴェルから帰ってきた浦島太郎のような気持ちがしました。 そして、みんな物凄く喜んでくれたのです。「それぞれ、全ての瞬間を楽しみました」と言って下さったイギリス出身のヴィクトリア。ホストのブリジットは「また、是非やりましょう。いつ来れますか?」と言ってくれました。「バッハは神様みたいですね」と言って下さった方も居ました。 とても、とても嬉しかった。 大成功!

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「ピアノの時間」のエピソード11が放映されました。

ロサンジェルスの日本語テレビ放送、NTB(Newsfield Television Broadcasting)で私が担当している隔週放送のミニ・シリーズ、「ピアノの時間」のエピソード#11が放映されました。今回のテーマは「音で描く絵」、フェデリコ・モンポーの前奏曲8番「一つの水滴について」を例に、音楽でイメージを描く、ということについてお話します。 下のリンクの9分50秒のところから13分45秒までをご覧ください。 http://www.soto-ntb.com/program/2011-6-19/

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ゴールドベルグの難しさ

Pianofestの様な音楽祭に参加する醍醐味は色々在るが、やはり一番大きいのはこういう場所で培う友情だと思う。寝食共にして、色々語り合い、音楽について、人生について語り合って、自分の考えを掘り下げ、人の考えに触れる。でもまじめくさってやるのでは無く、たいていお酒や食事や、ゲームや遠足や、海岸でのごろごろをしながらするから、楽しい。 今回の参加者は14人。その中で遊びを仕切りたがる人は2人くらい居るが、一人は偶然ゴールドベルグを勉強中だ。この男の子はいかにも3枚目で、ゲーム中にもわざと一番おどけて見せたり、大げさに失敗して見せたり、冗談も下ネタが多く、なんとなく私は自分よりもかなり年少な後輩として見ていたが、経歴を見てびっくり!イエール大学の物理で学部を卒業した後、修士をピアノで修めた秀才なのである!  お互い弾きあいっこなどして意見交換などもしたが、それよりも何よりも、同じ家で練習していると、お互いの練習が聞こえてくる。そして何だかいろんな解釈が影響されあってしまうのである。面白く、そして空恐ろしい… Pianofestでは生徒の演奏会が毎週月曜日と水曜日にある。今シーズン最初の演奏会でこの3枚目の彼がゴールドベルグの15分ほどの抜粋を弾いた。ところが、全コンサートのオープニングで在ったにも関わらず、聴衆の中で船を漕ぐ人が、何人も…彼はきちんと弾いていたのだ。でも、その後のドビュッシーやショパンやベートーヴェンに比べて色あせてしまったのは否めない… ゴールドベルグを勉強すればするほど、その緻密さ、スケールの大きさ、構成の巨大さに圧倒されて謙虚になり、兎に角ゴールドベルグを仲介する透明人間的な存在になりたくなってしまう。でも、それではダメなのだ、きっと。演奏は演奏。積極的に表現しなければ、ゴールドベルグまで透明で存在感がなくなってしまう。 改めて、難しいなあ、と思い知らされる。

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共同生活の意義

2010年の9月から始まった博士課程一年目は、兎に角物凄く充実していた。 ロサンジェルスから、ヒューストンと言う新天地に移って、その土地や文化になじむ、と言うこと在ったし、 私にとっっては物凄く久しぶりの学位に向けてのカリキュラムに添った勉強・宿題・試験。 その間に、学校代表としてのワシントンD.C.の国会図書館でのリサーチと演奏のプロジェクトが在り、 それが終わったらすぐ東北の大震災があり、チャリティーコンサートの企画・演奏で忙しくなった。 そして学校が終わったら急ピッチで練習をして5月・6月の日本での演奏会。 このEast HamptonでのPianofestの参加を決めたのは、 決まったスケジュールの無い、あくまで本人本位の海岸近くの音楽祭と聞いて、 正直、有給休暇をするつもりだったからだ。 そしてここに来て、本当にちょうど良かった。 私にしては珍しく、正午近く寝坊してみたり、2時間もぐっすり午睡をしたり、 海岸で一時間海を横目に貝を拾いながら一人で散歩したり… でも、一人だったらそのうち寂しくなっていたと思うし、ピアノとの距離感もつかみにくかったと思うけど、 ここではいつでも、人と居たければ、喜んで一緒に遊んでくれるピアニストが12人も居るし、 音楽もピアノもいつでもそこにある。 Pianofestの始まる前、『ピアノはしばらく弾くまい』と決心していた私は真夜中に起きて驚愕した。 枕の上で狂おしく指を動かしている自分に、目が覚めたのである。 本当に「狂おしく」と言う感じだった。手が疼いて、いたたまれない気持ちだったのである。 一人と言うのは、特に私のような性格だと、極端に走りやすい。 その分、共同生活だと『今日は休む!』と頑なに決心していても 「ここの所、あなただったらどういう指使いで弾く?」 と声をかけられて、それがきっかけで気がつくと楽しく4手を弾いていたり、 夕食前の10分、なんとなくちょっとパッセージをさらったり… そして、昨日の夜の様にみんなで遊んで大声を立てて笑っている自分を発見したりする。 どんなに『休もう』と頑固に決心していても、一人だったらあんなに手放しに笑わないもんなあ。

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