演奏会でのハプニング

まず、今日のスケジュールから 9-11      練習 11-11;30   図書館で楽譜の整理、コピー 11;30-12  ボストン交響楽団、春祭のリハーサル見学(ジェームス・レヴァイン指揮) 12-1      歌手とリハーサル(ショーンベルぐのキャバレー・ミュージック) 1-3:30    講義「晩年シューベルトのライトナーの詩による歌曲」(Griffith) 4-6      メンデルスゾーンの三重奏リハーサル 8-今      Stephen Kocevich(元Bishop)のピアノ独奏会 今晩のリサイタルでハプニングがあった。 演奏中に鍵盤の一つがつっかかって、弾けなくなってしまったのだ。 なぜそういうことが起こるか、と言うことを説明するには、 オザワ・ホールの構造からまず説明しなければいけない。 主に夏の音楽祭用にデザインされたホールなので、 カジュアルなコンサートや、人気のあるプログラムの時は、 後ろの壁が取り払われて、野外にいる人がピクニックをしながら聞けるようになっている。 脇のドアも沢山の幅広いドアで、全部開け放てば風通しが非常に良い。 その代り、湿度や気温の変化はもろに楽器に影響を及ぼす。 ここ2週間青空は時々垣間見る程度で、雨が連続して降り続けたため、 周りの芝生はぬかるみにちょぼちょぼ生えてる感じで、 しかも今晩の演奏会が始まったとたんに雷を伴った大雨がザーっと降ってきたのだ。 それによってハンマーをくるむフェルトが湿気を含んで膨張し、 隣のハンマーとくっつきあって摩擦を起こし、上がり下がりがスムーズでなくなったのだ。 今夜のピアニスト、Mr.Kは、バッハのパルティータ4番でプログラムを始めたのだが コレンテの最中に(あれ、どうしたのかな)と思い始めたところで、ぱっと弾きやめて 聴衆に向かって「この鍵盤が弾けなくなった」と、ポン、ポン、と弾いて見せた。 すぐに客席にいたピアノ調律師が舞台に上がり、問題対処をしたが、 そのあとの演奏はなんだか不完全燃焼で、 弱音、弱音、さらに弱音の「子供の情景」で前半が終わったところで 私たちピアノの研究生の半分はおうちに帰ることにした。 後半は「ディァヴェり変奏曲」で、楽しみにしていたんだけど。 演奏会場のハプニングで一番多いのは、携帯電話だ。 ギャリック・オールソンはリンカーン・センターのリサイタルの最中に携帯が鳴った時 弾き止めてぎょろりと客席をむいて、静かに頭を横に振って見せ、 聴衆を震え上がらせた。 (特に機嫌の悪い日だった、と後から彼の友達に聞かされた) あるオーボエ奏者は曲が始まる一瞬前に客席の携帯が鳴った時、 自分のオーボエを分解して、受話器に見立て 「もしもし、もしもし?」 とやって、大受けしたらしい。 LAのウォルト・ディズニー・コンサート・ホールで一回 アンドレ・シフが演奏会の途中に 聴衆の立てる音(咳、携帯、ものを落とす音)に腹を立て 曲の最中に席を立って退出してしまったことがある。 そのあと主催者が舞台に出てきて 「演奏者の集中を助ける気持ちで、皆静かに聴きましょう」 と言ったことを話し、 しばらくして、シフは演奏を続けたが、私は憤慨した。 演奏者の気迫と言うのは、聴衆にも伝わるもので、 その日のシフは聴衆を全く無視したような舞台マナー、演奏で、 正直咳が多いのもしょうがないかな、と思えたし、 そこで演奏を曲の途中で辞めるなんて、 なんてプロ意識に欠けているんだ、と思ったからだ。 もう一つ、最近のディズニー・ホールのハプニングでは、 ポーランド出身のクリスティアン・ツィメルマンがある。 […]

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演奏家の仕事を企業に例えると

演奏旅行の為に不在のアックス氏に代わって、 今日はチェリストのノルマン・フィッシャー氏によるメンデルスゾーンのコーチングがあった。 中西部で見かけそうな、古き良きアメリカ人、と言う感じの人だが、 始業式でシューベルトのチェロ五重奏で表現豊かな、エネルギッシュな演奏をして、 印象深かった人だ。 この人が面白いことを言っていた。 演奏家は三つの役割をこなす:音楽家、運動家、そして演奏家 これは企業に例えると、音楽家=企画・研究、運動家=工場・製作、演奏家=マーケティング 音楽家としては、アイディアを豊富に出し、そのためのリサーチや会議を行う。 運動家としては、練習をする。 しかし、コンサートでは、できた商品を兎に角売らなければいけない。 だから、出来上がった商品がなんであろうと、とりあえず良く見せろ! なんという実際的なアドヴァイス。 そういう風に考えたことはなかったし、ずいぶん俗っぽい言い方だが、 結構納得した。

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ジェームス・レヴァイン、春祭のリハーサル

日曜日の午後、ボストン交響楽団が春祭とブラームスのヴァイオリン協奏曲の演奏会をする。 今日、ジェームス・レヴァインが春祭の稽古を行うところを見学した。 自分の練習とリハーサルの合間のわずか30分だけの見学だったが とっても面白かった。 ジェームス・レヴァインはスター・ウォーズの第二に出てくる カエルのお化けみたいな悪者(ハン・ソロを冷凍してしまう奴)にちょっと容姿が似ているが、 今日、しゃべり方と声もちょっと似ていることがまず第一の発見だった。 そして、ボストン交響楽団も彼自身も、もう何回も演奏したであろう、 この有名な曲に、実に実に緻密に稽古をつけていくので、本当にびっくりした。 一瞬一瞬の音色から、曲を創り上げていく、と言う感じ。 「そこのところ、もう少しチューバ控え目に、高音を浮かせる感じで」 「ピッコロとフルートとクラリネット、他の木管の細かい音の邪魔にならないで、 ダウン・ビートで入る前に彼らのパッセージを聴いてあげて」 など、15秒とオケを弾かせっぱなしにしない。 そしてやり直して、指示がきちんと伝わっていることを確認すると、 必ず親指アップを出して、努力をねぎらう。 そして、指揮が割と大きく、実にはっきりしていて本当に音を体現している。 やりたいことが明確に自分で把握できていて、 それが実現できるまで妥協しない。 そしてそのプロセスを実に精力的、意欲的に、楽しそうにこなしていく。 触発された。

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最近共感した言葉、その二

「新しい楽器や、新しい音響の中で弾く、と言うのは、新しい共演者と弾くのや、 初めて会った人と会話するのと一緒だね。 向こうが投げかけてくるものを、どう一番良い方法で活かすか、 絶えず耳を澄ましながら、臨機応変に対応して行く」 これは、今私が在籍するコルバーン音楽学校での学友、ライアン君がある日言ったことだ。 もう数年前に言われたことだが、何かにつけて思い出す。 そうなのだ、あまり「こう弾きたい」と言う固定観念に囚われ過ぎると その時の状況、パートナーを一番活かした演奏ができなくなってしまう。 でも、別の時ライアン君はこんなことも言っていた。 「演奏する時は、すでに描いた絵を提示するようなつもりで曲を弾けば、 上がらないんじゃないか、と思うんだけど。 練習のプロセスにおいて、すでに自分の中で曲は完成しているはずなんだから、 ただそれを再現すればいい、と思えば簡単じゃない?」 この言葉も良く思い出すが、こうやって並べてみると、ちょっと矛盾しているような気もする。 う~ん、ライアン君。。。 ちなみにライアン君は私よりもうんと年下のピアニストですが、 18にすでに大学の学位を最優秀成績でゲットしてしまい、そのあとコルバーンに来たツワモノで 私は密に一目置いている。 今日は次の様なスケジュールでした。 9-10:30      練習 10:30-11   図書館で伴奏する曲の歌詞を訳し、録音を聴く 11-11:30   リハーサル 11:30-12:30 歌のコーチング 1:00-2:00  ボランティア主催のランチにお呼ばれする。 2:00-3:30  練習 4-6       メンデルスゾーンのトリオ、リハーサル 6-7:30    夕食、インターネット 7;30-10   練習、友達と弾きあいっこ 10-11    メンデルスゾーンのトリオ、リハーサル ここしばらく、練習する気になれなくて、次第に焦燥感が募ってきていたけれど 今日はかなり乗って練習ができて、とても楽しかった。 このまま日曜日の演奏会に向けて、調子を向上できればいいな、と思います。 日曜日は、変な時間ですが、毎週朝の10時に研究生による演奏会があり、 私は今度の日曜日にルーカス・フォスのソロの曲と、メンデルスゾーンのトリオを弾きます。 トリオも、ずいぶん急ピッチですが、熟してきました。

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お休みの日

タングルウッド音楽祭は6月21日から8月17日まで、7週間半、二か月弱のプログラムですが、 正式な完全休暇の日は二ヶ月間中に3日だけあります。 オフィスも図書館も閉まり、コンサートもリハーサルもありません。 今日はその完全休暇の日でした。 「湖で泳ごう!」とか、「買い物に行こう!」とか、企画は色々あったのですが、 皆寝坊をして、ゆっくりご飯を食べ、 ここに来てから久しぶりに外界の友達と長電話をして、 昼寝をしているうちに夕立ちが来て。。。と言う感じで、 結局一日が脱力した感じで過ぎてしまいました。 環境の変化とかを自覚する間もないまま、リハーサル、コーチング、公開レッスンと 立て続けにいろいろあって、その合間にお互いの名前を覚えあい、探り合い、 心地いい距離を測りあい、と、楽しいけれど、やはり疲れるプロセスだったんだ、 と改めて自覚します。 一応キャンパスに行って、ガラ空きのキャンパスでちょっとだけ指を動かしましたが、 帰りのバスの中で爆睡してしまった自分に驚きました。 明日から7月! また心機一転で、頑張ります。

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