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病み上がりの音楽

その圧倒的な名声により、後にポーランドの首相まで務めた、カリズマ・ピアニスト、パデレフスキーは 「一日練習しなかったら自分にわかり、二日練習しなかったら評論家にわかり、3日練習しなかったら聴衆にわかる」と言ったそうだが、これは私にも当てはまるだろうか? 今日は、ちょっと反対の体験をした。 今朝の寝起きは、すっきりと言うのは程遠かった。 目の奥が重く、眠くは無くてもいつまでも瞼を閉じていたい感じ。 でも、もう4日もピアノに触っていない。 後で昼寝をするにしても、とりあえず起きてちょっとでも朝のうちに練習したかった。 シャワーを浴びながら、身支度をしながら、何度もくじけてベッドに戻りたくなる。 ここまで休んだんだからあと一日大事をとって完治してから練習再開の方がいいのかも知れない。 でも頑張って、練習室まで自分を引っ張っていく。 始めはやっぱりもどかしかったけど、弾いているうちにどんどん元気が出てきた。 目が、耳が、指が、体が段々覚めてくる。 どんどん音が、音楽になって聞こえてくる。 どんどん指が軽くなってくる。 そしてベルグが、シューベルトが、ベートーヴェンが、バッハが全く新鮮に聞こえてくる。 凄い! 毎日練習していたら絶対分からない感動。 生きている、と言う実感、音楽家で良かった、と言う実感がふつふつと沸いて、 思わずにこにこしてしまう。 頭が痛くて、ふらふらしていた時は友達に笑顔で挨拶するのさえ面倒くさかったのに。 4日休んで、やっぱり良かったんだ。 そして、やっぱりピアニストになって、良かったんだ。

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「無駄」な時間!?

どうやら風邪をひいてしまったらしい。 豚インフルエンザが騒がれるこの季節、全く縁起でもない。 先週くらいからなんだかいつもより怠け者になり、それなのに焦燥感もわかず、 気楽にホワーっと過ごす時間が増え、金曜日は起きてみたらすでに9時でびっくりした。 友達に体が熱いよ、と指摘されて、土曜日に熱を測ったら華氏で101.5度(38.6C)ありびっくり。 それまでの一週間のぼんやりぶりに始めて納得がいき、罪悪感抜きで怠けられるとちょっと嬉しかった。 とろとろと眠り、本を読み散らかし、たくさんの映画を見て、立て続けにスープと熱いお茶を交互にのんで、 段々この「公休暇」に飽きてきた。 練習がしたい! 夢の中で練習するようになってきた。 練習がしたい! 始めなければいけない勉強も沢山ある。 かけるべき電話も、果たすべき責任も、ある。 バリバリ生きたい! 今日の夜ぐっすり眠れば、明日は魔法の様に元気いっぱいになっている、と思う。。。

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オバマ大統領の健康保険改革のスピーチについて

今日、オバマ大統領のスピーチの生放送を見た。 アメリカのhealth care system reformに関してのスピーチである。 アメリカの保険には色々問題があり、それは私の様な人間にも直接関係してくる。 facebookと言う、日本で言うmixiの様な、ソーシャル・ネットワーク・サイトでは、 最近こんなメッセージが出回っている。 80%of the uninsured have full-time jobs. 62% of all bankruptcies in theU.S. are because of unpaid medical bills. 75% of those actually havehealth insurance. Enough is enough: time for reform. If you agree,please post this as your status for the next 24 hours.(現在保険に加入していない人の80%はfull-timeの仕事を持っている。アメリカで申請される破産の62%は病院への支払いができない人からで、その中の75%の人々は保険に加入している。もう十分です。改革の時の今です。賛成する人は自分の「今日の気分」のところに貼り付けて、24時間そのままにしてください。) この統計がどこから来ているか私にはちょっと分からないが、 今まで聞いてきたアメリカの保険にまつわる醜聞を考えると、本当では無いかと思えてくる。 オバマのスピーチを聞いていると、4年後には全く違ったアメリカになるような気がしてくる。 彼の声音はとても真摯に、希望に満ちて聞こえる。

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この頃

この頃ブログに音楽とは関係ない事ばかり書いているので、心配になる読者の方がいるかと思い、 今日はこの頃の生活について、書くことにします。 タングルウッドでは、弾く曲も、リハーサルのスケジュールも、すべて音楽祭が決めていました。 その決められた時間割はとても密度が高く、音楽以外の事、自主的に何かをする余地は少なかった。 練習だって、今何を弾きたい、ではなく、20分後のリハーサルの為に今練習しなきゃ顔がつぶれる、 と言った、いつも切羽詰まった、自由の無い状況が多かった。 演奏会も非常に多く、聴きに行く演奏会が無い日の方が少なかった。 研修生の多くは、疲れの為、音楽会を休む人が多かったが、私はできるだけ行った。 多分研修生の中では一番多く演奏会を聴きに行ったほうだと思う。 こういうことは全て、本当に貴重なありがたい経験だったけれど、 2か月の限定期間だったからこなせた、と言うこともある。 コルバーンでは逆に生徒の自主性、個性がとても重要視されている。 学部生は人文学、音楽誌、音楽理論などのクラスをとることが義務付けられるが それ以外の生徒は基本的に必修は4つだけ。 1)学期毎に一曲室内楽の公開演奏に参加すること、 2)週一回レッスンを受けること 3)週一回自分の楽器の専攻の人達がみんな集まる"Playing Class"に出席し、弾きあいっこに参加 4)週一回選ばれた生徒が全校生徒・教授陣の前で演奏する“フォーラム”に出席すること。 2)、3)、4)、はロスにいる時だけの課題で、演奏旅行、コンクールなどでロスにいない生徒は免除。 選曲も、演奏スタイルも、個性や自主性と言うものがとても大事にされる。 ロサンゼルス・フィルハーモニーなど、近くで行われる演奏会の無料券がしょっちゅう提供されるが これも提供されるだけで、強制ではない。 でも、生徒たちはとても積極的にこの機会を利用している。 私はコルバーンに来てから、指揮の勉強を始めた。 バンドを持って、クラヴなどを回っている子たちも居る。 私も聞きに行ったことがあるが、やはりとても上手だ。 室内楽のグループを作って演奏活動を始める子たちも居る。 また、知らない間に近くの大学の日本語のクラスに入門して、いきなり日本語の質問をしてくる子もいる。 インターネットで取れる大学の講座でエッセーの書き方などを学んでいる子もいる。 音楽以外の勉強、あるいは練習以外の音楽の勉強が無駄に思えた時期もあったけれど この頃は本当に必要だと思う。 演奏はいつもその人の人間を正確に反映すると思うし、 人間が薄っぺらければ、どんなに技術的に上手でも薄っぺらい演奏になると思う。 と、言うことで、いろいろ探索中です。

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ホンダの哲学

いつも、演奏会の宣伝などでお世話になっているロスの日本人コミュニティーの関係で、 ホンダのエアバッグを発明、開発した小林三郎さんのお話を聞く機会を得た。 小林さんは、実にエネルギッシュでユーモアのセンスに満ち溢れた人で、 (英語の講演だったのだが) "Profit can NEVER be a goal – profit is only a mean to the end!" 利益を目的にするな~利益は夢に到達するための手段である! とか "Action (technology) without philosophy is a lethal weapon; Philosophy without action (technology) is worthless" 哲学・理想抜きの行動(技術)は凶器である。 行動(技術)抜きの哲学・理想は無意味である。 など、ポンポンと明言が飛び出した。 他にも、 「自分の提供する製品の理念・価値をいつも言えるようにしろ。」 「20年後、世の中の価値観がどうなっているか、いつも考えていろ。」 「10人のうち9人が賛同するアイディアは、もうリサーチするには遅いアイディアである。(はじめにエアバッグを提唱したときは、業界の「今年の一番馬鹿らしいアイディア賞」と言うのの2位になってしまったそうだ。)など、など。 小林さんは、こういう「哲学」のすべてをホンダの社長のもの、としていたが、 それを実践して、今では世界中がマネするホンダのエアバッグを創った小林さんも やはりえらいと思う。 同じ日本人として、とても誇りだった。

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