April 2010

先生の叱責

毎週火曜日の夜はプレイング・クラス(playing class)が在る。 楽器ごとのグループで集まって、同じ楽器奏者の前で練習の成果を発表し、お互い意見し合ったり、先生の指示を皆で見学したりする。一昨日のピアノのクラスでは、新入生で彼女にとってコルバーン初のリサイタルを今週末に控えている女の子がコレグリアーノのエチュード・ファンタジーを披露した。 「この曲はとても効果的な曲で、特にコンクールで色々な人が弾くけれど、一つ問題はどうしてもピアノを調律を狂わせてしまうことだ。特にミのフラットとラのフラットが狂いやすい。なるたけ調律を狂わせないように、努力して弾きなさい」との先生のイントロに、クラスが皆笑った。 確かに凄い力で一つの音を連打したりする。その子は渾身こめて、初めての通し稽古とは思わない程素晴らしい演奏をしたけど、演奏を通じて、ピアノはどんどん調律が狂って行った。終わって、満足げでちょっと得意げなその子に対して、先生がコメントする。 「五楽章は素晴らしかった。幻想的に、良く弾けていた。全体的にもとても良かったよ。ところで、調律に関して、私が冗談を言っていると思った?」 ここで突然先生の声音が変わった。 「私はこういうことでは絶対に冗談を言わない。覚えておきなさい。」 「ピアノと言う楽器は楽譜に何と書いてあっても、在る程度以上の力をかけて鍵盤を叩くと調律が狂う。一度調律が狂った音は響きを無くし、それ以降はどんなタッチで弾いても醜い音しか出さなくなる。どんなに大きな音がほしい時でも、鍵盤のアプローチにはある程度の弾みを持たせなければいけない。肩から力を込めてまっすぐに鍵盤を力任せに押しては、絶対に、絶対にいけない!」 クラス中がシーンとなった。先生は時々こういう風に爆発する。デモ今回の場合、爆発には教訓が在って、この場に居合わせた子は皆一生このことは忘れないだろう。 私もこのごろこの爆発に近いものをレッスン中に受けた。5月の日本でのリサイタルで弾く、ショパンの幻想曲をレッスンに持って行った時だ。先生は私がもうすぐ卒業するので、褒めるのにも、教えるのにもかなり感情的で、かなり大げさだ。「君のテクニックは凄い。君の指さばきは私が今まで教えた生徒の中でも1位、2位だ。」と一しきり褒めた後、「でも、君は指が器用に動き過ぎるせいで、指以外で弾くべき時にも指先で全てを解決しようとする」と、突然怒り出した。「例えば和音。君のはいつも全ての音が同時に鳴ってそれは素晴らしい。尊敬に値する。しかし、それを指先だけでこなしているから、機械的に聞こえる。指先はお腹の底にあるリズム感、そして感情から一番遠いところにある。もっと腕を、背中を、腰を、身体の重心を全てかけて弾いてみなさい」 そこで急に怒り出すのはちょっと理不尽だと思ったけれど、その後のレッスンは素晴らしいものだったし、この時のことはそのレッスンの後一週間毎日私の練習を影響している。これからも何年も覚えているだろう。

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アイスランドの噴火の影響

アイスランドの火山の噴火はコルバーンの生徒に大きな影響を与えている。 スコットランドのコンクールに行っていたハープの院の生徒は予定した日に帰ってこれず、今度のオーケストラの演奏会は残された学部生のハープの子が一人で全部まかなわなければいけない(コルバーンにはハープの生徒は二人しかいない)。私の四重奏のヴァイオリニストはノルウェイのコンクールに行っていた。移動の途中に火山が噴火し、足止めを食らい、そこから電車を使って予選の前夜、現地入りした。そんな逆境にも関わらず、第二次に進み、学校全体を湧かせた。が、予定日に帰ってこれるかはまだ不明。私たち四重奏はロサンジェルスで29日に演奏するはずなのだけれど。コルバーンのピアニストで、ショパン・コンクールに参加するため今日ワルシャワに向かって旅立つはずだった子は飛行機のキャンセルでまだ今夜も学校に居る。ショパン・コンクールは彼の様な参加者の為に9月にもう一度予選を予定し始めている様だ。 こういうのも、運命なのだろうか。

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3度の飯より指揮が好き!

今週は一貫してかなり忙しい。 土曜日にある今年度最後のコルバーン・オーケストラの二曲でピアノ・パートを弾いている。レスピーギの「ローマの松」とジョン・アダムスの「A Chariman’s Dance~Foxtrot for Orchestra」と言うアダムスの「中国のニクソン」と言うオペラの中の曲に基づく曲の二曲だが、両方ともかなり長大で入り組んだ曲で、リハーサルもかなり集中している。2曲ともピアノ・ソロがかなり多いので、張り切ってしまう。そして私の先生、ジョン・ペリーがラフマニノフの二番の協奏曲を弾くので、これも見学する。このリハーサルが今週毎朝、9時半から12時まで。毎日早起きしてリハーサルの前に練習しようとしているが、それにも限りが在る。 オーケストラのリハーサルの直後、12時から1時まで毎日自分の指揮のビデオ・録画をしている。皆私の為に集まってくれているわけだし、ありがたいから出来るだけ有効に時間を使い、彼らにとっても良い音楽体験になるよう、汗をかきながら一生懸命指揮をしている。 そして夕方から夕飯まではこれから学期末まで続く、3つ参加しているアンサンブルのリハーサルが在る。 夕飯の後は大抵演奏会に行く。学期末で色々な子が卒業の為には必修のリサイタルをしていて、同じピアノ科の子なら私には出席が義務付けられている。夕飯をかきこんで、夕飯の後、リサイタルの前にちょこっと練習したり、眠い目をこじ開けてリサイタルの後に練習したりするが、これも限られている。 問題は、指揮の録画が終わってから夕方のリハーサルが始まるまでの2,3時間だ。普通に考えれば、この時間が絶好の練習のチャンスだし、今週が実際に始まるまでは私もそう思っていた。ところがそう簡単な問題ではないのである。指揮は凄く楽しいし、色々聴いて、考えて、楽譜を読み、そして音楽を体現する、この全てを同時にこなす。凄い脳みそが刺激を受けて、指揮が終わった後、私は凄いハイになっているのである。もうウキウキしてしまって、ご飯ものどを通らないのである。頭の中は指揮で一杯で(練習しなきゃ)と思っても、できること・したいことはヴィデオを復習して、次の日に備えることと、楽譜を勉強したり、振りの練習をしたり、だけである。そしてその間もぴょんぴょん飛び跳ねて、余分なエネルギー発散を試みたり、奇声を発したり、とても練習どころではないのである。 そして食いしん坊の私には信じられないことだが、食事をしたい、とも思わないのである。何だか恋をしているようだ。食べたく無くてもちゃんと頑張って3食食べているから、大丈夫ですけど、自分でも本当に不思議である。

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贈る楽しみ

指揮のデモ・ヴィデオを収録中。 二曲のリハーサルは先週から始まっている。弦楽9人編成のグリーグの歌に基づいた、ゆったりした表情豊かな曲とストラヴィンスキーの小節ごとに拍が変わる技術的に振るのが難しい、テンポの速い木管と金管の八重奏の曲。今日は弦楽の最終日だった。小さな柿ピーの袋やおまんじゅうなど、日本のお菓子を色々アレンジしたお楽しみ袋を人数分作って、皆の椅子の上に置いて待つ。、 待ってる間ワクワクする。喜んでくれるかなあ? ヴィオラの子は一杯お酒を飲むからきっとおせんべいが好きだろうなあ。第二ヴァイオリンの子は甘党だけど、おまんじゅうは好きかなあ? 皆思った以上に喜んでくれた。第二ヴァイオリンの子は皆が楽器を出したり、調弦をしたりしてる間に狂喜して一気にお菓子を全部食べてしまった。その後のヴィデオ収録は凄く上手く行った。皆本当に食い入るように私の指揮棒を見つめてくれて、面白い位行きがぴったり在って、本当に驚異的だった。後のヴィデオを見直したらやっぱりまだまだ私の指揮は未熟だけれど、でも心意気と、皆の行きがぴったりなのは、十分記録出来ていると思う。 とても満足。

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ブログを書くと言う行為について

何故か急に毎日、毎日ぎっしり充実した日々を送っている。 毎時間、何か在る。 色々考えさせられるし、刺激を受けて、練習も短時間でも集中してはかどる。 日中、「あ、今在ったことをブログに書いたら面白いかも」と思うことが沢山ある。 でも、夜部屋に戻って来てコンピューターを開けると、もう眠くて眠くて目を開けているのが辛い。 どうしても今日中に書かなければいけないメールを書いた後に、いざブログを書こうと思っても 大きなトピック、面白い話になればなるほど、それを書き出す手間を思って気持ちが萎えてしまう。 皆、どうやっているのだろう。 どうやって、活動と、記録のバランスを取るのだろう。 と、問いかけながらも、眠くて眠くてたまらない。 明日も色々ある。 指揮のビデオ録画が在るし、オーケストラのリハーサルでオケ・ピアノを弾く。 でも今考えられるのは、パジャマに着替えて眠ることだけ。 お休みなさい。

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