October 2010

玉ねぎの涙 vs。 感動の涙

今日はこの学年度初めてのライス大学オーケストラの演奏会が在りました。 私は約3週間にわたるリハーサルを出来る限り聴講し、それぞれの曲の成長を見守って来た気持ちだったので、特に感動、興奮しました。ほぼ満員の会場が最後は総立ちになる、素晴らしい演奏会でした。 リハーサル中、私は何度か涙しました。でもこれは感動した、と言うよりは共鳴した、と言う感じ。例えば完璧に皆の調律がぴったりと合って、まるで宇宙に共鳴したようなハモリ方をした時、別に感情は込め無いのだけれど、何だか水洟が出てくるのと同じ感覚で自分の気持ちと関係なく、涙が出てくるのです。これは本当に、玉ねぎを切っている時に出てくる涙と感覚的には全く一致しています。 しかし、今日の涙は感動の涙でした。 曲目はこんな。 バーバーの「マデアの瞑想と仇」作品23a. デ・ファリャのスペインの庭の夜(ソロはライスのピアノの教授の一人、ブライアン・コンリー) そして休憩をはさんで ブラームス交響曲一番。 バーバーのタイトルに在るマデアはギリシャ神話の女性で、良妻賢母だったのだけれど、夫の浮気に怒り狂い、彼との間にできた子供を次々に殺してしまう、と言う恐ろしいキャラクターです。この曲はもともとマルサ・グラハムが踊るために作った作品をオケ曲として演奏できるように短くした物ですが、物凄く鬼気迫る感じの迫力が在る曲です。リズムが凄く難しいのだけれど、今日のオケは心身ともに一となってと言う感じで、背筋がぞっとしました。 デ・ファリャも素晴らしかった。私はこの曲は生で二回ほど過去にも聞いた事が在るのですが、その時は「なんじゃこりゃ」と言う印象しかなかったのですが、メリハリの利いた演奏で、ブライアン・コンリーも素晴らしく上手で、本当にスペインの雰囲気や、乗りや、けだるさがはっきりと感じられる素晴らしい演奏でした。 そしてブラームスの一番は最高だった。本当に文字通り最高でした。最後に全身がゾクゾクして涙が出てきました。このオケはそんじょそこらのプロのオーケストラなんか比べ物にならない程、上手いです。私は振り欲(指揮をしたい、と思う気持ちの事)がモリモリと湧いてきました。 明日からシカゴですが、道中しっかり勉強しようと思います。

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部屋の整理は気持ちの整理

土曜日のリサイタルが終わってからも中々息がつけない日々が続いた。 月曜日は「ピアノ教授法」のクラスでプレゼンが在り、しかもそのプレゼンが一部始終ビデオ録画される、と言う事で結構緊張したし、火曜日は「博士課程セミナー」で性格判断テストの結果を2時間半にわたって分析・説明のクラスが在り(しかもこれは第一弾で、第二段が来週に在るのです!)凄く面白かったけど、結構疲れた。水曜日は公開レッスンで演奏したし、今日は試験、そして指揮のクラスでベートーヴェンの交響曲7番の分析ディスカッションが在り、昨日は夜遅くまで勉強、今朝も目が開いてから走って机に向かって猛勉強(私にとっては)、と言う雰囲気だった。 その指揮のクラスが終わって一段落。 突然気が抜けてしまった。お昼のサンドウィッチは持参してあったのだけど、腹ペコだったし、何だかお祝いしたくて色々な友達をお食事に誘ったけど、もうすでに一時半と遅い時間だったし、皆忙しくて、私は結局お家に戻り、大量のパスタをゆでて一人で食べて、その後ぐっすりお昼寝してしまいました。 起きて、これから今日は何しようか、頭を巡らせる事、しばし。やるべき事は沢山在るのだけれど… 思い立って、ずっと後回しになっていた部屋の整理を始めました。色々な郵便、書類、楽譜、プログラムをどんどん片づけて行きます。母からの手紙もタングルウッドの時の写真も、批評も、嬉しい所を色ペンでマークして、壁にセロテープで貼って行きます。部屋が段々にぎやかになって来ました。ページを開いたままで散乱している参考書の数々も、もう終わったのだからきちんと閉じて、本棚に納めます。そして引っ越してきてからしまいっぱなしになっていた、大事な物を部屋に飾ってみました。 例えば、友達で絵描きの大岡和夫さんの絵。この人は早期退職してから絵を描き始めた、元技術屋さんです。描写から出発して、現代アートの意義を見つけるのに苦労しながら、自分の視点に向かってぐんぐんと変化してこられる様子を、触発されながらこの6年間見させて頂いています。この人が私が2006年にNYからLAに移るにあたって引っ越しする際にプレゼントして下さった静物画。何だか立体感が面白くって私が一目で気に入った作品です。立派な額に入った小さな絵ですが、今までロスで梱包したままだったのを、今日きちんと飾りました。 (大岡和夫さんのサイトはこちら; http://www.soymonk.com/Soymonk_Art_Studio/Welcome.html) それから私の妹がもう十数年前にプレゼントしてくれた写真集。”The Book of Colors”と言うシリーズの本の一冊で、色々な色がそれぞれ違った心理的影響力を持っていると言う学説の元にデザインされています。妹が私の為に選んでくれたのは、「アサギ」と言う色の本で、「皆から遠く離れた気がする時に」読む本だそうです。詩の様な文章が、それぞれ色々な濃度、色々な場面のアサギ色の写真と一緒に載せて在って、私はこの本はツアーに行く時も、引っ越しに行く時もいつも大事にしていました。失恋した友達の為に英語に訳しながら読んであげた事も在ります。今まで他の参考書と一緒に本棚に立てかけてあったのだけれど、今日はちゃんとスペースを作って飾りました。 こうやって片づけていると、気持ちも段々新たになってきます。 これからは今週末のシカゴへの旅の色々を片付ける事、ヒンデミットの指揮の準備を始める事、10月8日に締め切りの博士課程のプロジェクトを始める事、そしてこれから練習する曲を選ぶ事。 さあ、また頑張るぞ!

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