2013

暗譜の是非。

実は私、博士論文を暗譜の歴史と是非について書くことにしたのです! 文献を読み始めているのですが、 自分でも(何と素晴らしいトピックを選択したんだ!)と歌いだしたくなるほど面白い! 暗譜、と言うことを始めたのは 9歳の天才少女ピアニスト、クララ・ヴィーク(後にシューマンの妻)と、 同時期ヴィルテュオーゾとしてロックスター的人気を誇っていたリスト、と言うことになっています。 しかし、その長い西洋音楽の歴史の発展途上では色々な形の暗譜がありました。 まず、記譜法以前は当然暗譜。 そして、記譜法が発展してからも、楽譜、そして本と言うのは非常な貴重品。 今の私たちからは想像も出来ないほどです。 そして、例えば本に関して言えば「目次」とか「索引」とか言うシステムが確立するまで 数世紀かかっています。 しかも、中世時代の本は非常に大きくて重く、持ち運びなど不可能。 と言うことで、一度出会った文献は覚えるつもりで読まなければいけません。 (ノートを取る、と言う習慣も無い。紙もインクも貴重品) 記憶、と言うことと、記録、と言うことの関係を歴史を追って考えてみると、本当に面白い! 音楽に関しても、記譜法の発展、印刷の発展、そして調性の発展を追って、 楽譜から読む、と言うことと、暗譜から演奏する、と言うことの関係が複雑な発展を遂げます。 例えばショパンは、自分の曲を暗譜で演奏されることを嫌ったそうです。 逆にほぼ同い年のシューマンは、暗譜をする事によって演奏が自由になる、と奨励しました。 私は暗譜がいつも怖かった。 (忘れたらどうしよう)と心配すればするほど、忘れやすくなる。 暗譜しなくて良ければ、どんなにこの音楽人生、楽になるか!? この頃アメリカではこういう意見や記事が良く見られます。 それに、リチャード・グードやエマニュエル・アックスと言った著名なピアニストが 最近協奏曲でも楽譜を使って演奏するようになっています。 昨夜、ライス大学で私のピアノの教授Brian Connelly門下生に夜リサイタルがありました。 私もスクリャービンのマズルカ作品3-7と左手のための夜想曲作品9-2、 そしてドビュッシーの夜想曲と言う三つの小品を演奏。 この3つは昨晩の時点で全く違う暗譜の過程にそれぞれありました。 スクリャービンのマズルカは明らかなABA形式で、Aでは主題が変奏されていく。 単純な構築で、メロディーも覚えやすく、好きな曲で、 大して努力せずに気がついたら暗譜していた。 譜読みを始めたのは3週間ほど前。 暗譜していることに気がついたのは一週間ほど前。 同じくスクリャービンの左手のための夜想曲は2009年以降の持ち曲。 譜読み以来、大好きな曲で別に演奏の予定が無くてもいつもウォームアップで弾いていたし、 アンコールなどでもいつでも弾ける、本当に十八番。 でもこの頃ちょっと忙しくてここ数週間全然弾いてない曲。 最後のドビュッシーはこれは「おお!水曜日に演奏!」と言うことで この月曜日に一生懸命構築分析などしながら急いで暗譜した曲。 譜読みを始めたのは、マズルカと同じく3週間ほど前。 主題が変奏されていって曲が発展するのはマズルカと同じだけど、 転調やセクションとセクションの関連がちょっと入り組んでいて、マズルカより複雑な構築。 論理を使って暗譜した。 でも、暗譜に関する文献を読んでいると、 『こうすると暗譜が確実になります』と言うメソード本にも沢山出会います。 そう言うものを読むと試したくなるのが人情と言うもの。 …そして昨日の演奏の結果は? 三曲ともそれぞれ、違う意味で暗譜が不安でありました。 マズルカはメソードを使わずになんとなく暗譜してしまった。 果たしてきちんと構築を把握しているのか? 本番のプレッシャーで崩れるのでは? ノクターンはここ数週間一度も触っていない! […]

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ハロウィーンの思い出

香港でもハロウィーンがあって、 子供のころは仮装してマンションの一軒一軒を回ってお菓子をもらうのが楽しみでした。 幼馴染と一緒にはしゃぎながら回ったのを覚えています。 今年は10月31日はなんだか忙しく、お菓子の買い置きが無かった。 子供が来るたびに「ごめ~ん、なんにもありませ~ん」と謝っていました。 相棒の家では、玄関の横が音楽室になっていて、練習しているとピンポンピンポン。 その度に謝っていました。 夕方は親に連れられた幼児が多かったのが、 暗くなってくると今度が高校生くらいの子達が結構手の込んだ仮装で来ます。 もう反射神経のように「ごめ~ん」「ごめ~ん」と謝っていたら、 その中の一グループが中々立ち去りません。なんか玄関の外で叫んでいます。 良く聞くと「ピアノ、聞かせて~!」と言っているのです。 玄関を開けて、ドビュッシーのアラベスクのサワリを1分くらい弾きました。 どんな子たちか分からないし、ドンナ音楽を期待してるかも分からない。 正直、猜疑心で一杯でした。 ピアノから見上げると、結構一生懸命聞いているのです。 そして弾き終わった私に拍手してくれて、 「きれ~い!」「お菓子より、嬉しい!」 …私も嬉しい!! もっとちゃんと弾いてあげれば良かった。

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凄い格言を発してしまった…

私は、教えることも大好きです。 特に今は、私は本当に個性豊かで熱心な生徒さんに恵まれていて幸運! その中のAちゃんとのレッスンで、今日私は自分でもびっくりする格言を発してしまったのです。 Aちゃんは凄く飲み込みが早く、音楽性もある6歳の女の子です。 実は物凄い美人なのですが、それに反抗するかのように憎まれグチをたたきます。 「同じことを繰り返し言わないで!」とか平気で言います。 「繰り返し言わなきゃいけないのは、同じ問題が続くからなんだけどな~」 「忘れちゃったの!」 「だから思い出させるのが私のお仕事だよ。」 などとやり取りするのですが、それでもこちらがいやな気持ちがしないのは、 やはりこの子の愛嬌でしょうか。 この子は素早く曲を仕上げてくるのですが、 曲の性格に関係なくなんでも凄いアップテンポで弾くのが好きな子でもあります。 今日の会話。 「これはどんな曲?」 「ハッピーな曲」 「そうだよね~、でも今のAちゃんの弾き方は、ハッピーじゃなくて忙しそうだったよ」 「…忙しいってピアノではどういう感じ?」 「忙しいって言うのは、一つ一つの音の全てにそれぞれ集中していることだよ。ハッピーはそれぞれの音が大きなグループに属していて、そのグループを大きな目で見られること。違いが分かるかな?」 凄くないですか? 忙しい=一つ一つの小さなことにそれぞれ集中してしまい、収集が着かなくなること 幸せ=それぞれの仕事が一つの大きな方向性や目標に属していて、それを安心してこなすこと。 おおお!真希子(の潜在意識!?)、素晴らしい! 自分で自分の発言を聞きながらびっくりしていました。 勿体無くて、思わずブログで発表してしまいました。

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演奏活動!

星座とか「タイミング」とかって本当にある、って実感する時があります。 私は博士過程を終えたら、もっと演奏活動をしたい!とひそかにずっと思っていました。 まあ、厳密にはまだ論文が残っているし色々あるのですが、 でももうこの学年度から授業は無いし、随分自由な身になって パリに行ったらこれからの演奏の機会の打診を色々始めてみよう、とか考えていました。 パリからヒューストン降り立った瞬間! …ずっとチェックしていなかった携帯メールに着信。 「12月に協奏曲、弾く?」 何と!(これは今時期など交渉中) さらにヒューストンに戻って2日目! クラリネットとヴィオラとピアノの室内楽コンサートが テキサス州のオースチンで10月26日に予定されているが、 ピアニストがドタキャン -と言う事で私に出演依頼! これは2日間に及ぶリハーサル量、出演料などの交渉の末、出演決定! 24日に現地入りして、2泊三日の予定。 これはコルバーン時代に何度も一緒に弾いた、 今ではハーレム四重奏のヴィオリストとして有名になってしまったMiguelとの演奏会。 私とMiguelの共演はYoutubeでもご覧になれます。 楽しみ! さあ、練習頑張るぞ!

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実はパリに居りました。

試験が終わったのにずっとブログを怠っていた理由(言い訳!?)。 …実はパリに居たのです。 この夏もHouston – NY – 日本 - パリ - 日本 - パリと 飛行機の旅の多い日々でしたが、機内では必死に勉強していて、 映画のメニューさえ見ない、まあ充実はしているけどちょっと忙しい旅でした。 それに夏だったからいつも満席。 でも、今回の飛行機は違います! 秋半ば。 半分も満たない飛行機の中で、行きも帰りも一列丸々独り占め。 そして約10時間の飛行機の旅で行きは3本も立て続けに映画を見てしまいました。 最近映画を観ていなかった私はそう言うものに対する免疫力が落ちており、 もう、つぼにはまりまくり! 機内にも関わらず顔中べたべたにして大泣きしてしまったり、 エンジンの轟音にかき消されるのを良いことに腸がねじれるのではと思うほど大笑いしたり。 3本見た中の2本が日本映画だったことも我ながら興味深い選択です。 「奇跡のりんご」ではもう本当に泣きました。 「図書館戦争」も面白かった。この映画は自衛隊を揶揄って居るのかな? さて、パリ。 試験が終わって、人生一段落して、ゆっくりとカフェでコーヒーでも飲みながら これからの人生について思いをめぐらせれば… など、と夢想していたこの旅ですが、着いてみたらばトンでもない! たまたま現地合流できた相棒と こちらのフォアグラ、あちらの鴨、向こうのTart Titinと食べ歩き。 中でも人生観が変わるほど美味しかったのは かの有名な焼き菓子屋, Pierre Herme! そしてやはり忘れられないのは、朝一番に隣で買う、香り高いバゲット。 本当に焼き立てで、抱えている腕がジンワリと暖かくなり、 魅力的なパンの芳香で頭がくらくらする中、 階段をとことこ上がっていく時の、楽しみな気持ち。 そしてドアを開けて、キッチンに直行して、まな板の上で 「パリパリ!パリパリ!」とそのバゲットを切って、 チーズとジャムで食べるバゲットの美味しさ! トロトロのチーズ(数種)も本当に美味しくて、 でもその臭さは形容不可。 冷蔵庫を開けるたびに(何事!?)と思う臭さです。 さらに意外なことにアジア食もパリで進出しており、 本格的で美味なベトナム、タイ、そして中華も美味しく頂きました。 さらに音楽人生で培った友情は世界中に広がっており、 残念ながら全員に会え切れないほど! そして次のパリでの演奏に向けての会合、打診、お願い… と、言うことで予想に反して非常に充実はしてしまった私のパリ滞在。 しかし、試験が終わって飽和状態に陥る危険をはらんでいた私の試験後の人生は、 これでしっかりとまたフォーカスして来ました。 帰りの飛行機では映画はドキュメンタリーを一本観ただけで、 読書に没頭。 そして一昨日ヒューストンに帰ってきてからはひたすらやることリストをこなし、 練習、練習、練習! いつものリズムが戻ってきました。

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