自分の極限ベストを常に目指して精進すること。

今週末は土曜日、日曜日と演奏会に出演した。 ヒューストンのコミュニティーに浸透したにオーケストラ演奏活動を始めて今年で10年目の River Oaks Chamber Orchestraのコンサートである。 アメリカ国内で破産の危機にさらされていたり実際破産してしまうオケが相次ぐ中 聴衆も予算も例外的な成長を見ているとしてアメリカ中から注目されているオケ。 色々斬新な試みで音楽の質を妥協せず、しかしどんなレヴェルでも聴衆に楽しんでもらえるよう 色々な工夫を試みている。 その一つに委嘱作品の世界初演がある。 私が出演したのはそんな世界初演のチェレスタのパート。 『不思議な国のアリス』の続編『鏡の国のアリス』の中に出てくる デタラメ詩『Jebberwocky』に触発されて作曲された曲。 最後にはJebberwockyの朗読も入る、 約15分色々な音響効果が楽しく、夢に溢れる曲である。 この他にも例えばプログラムの一曲目では 聴衆の中からくじで選ばれた4人が壇上に招かれて、 オケの中でオケの演奏を間近に体験できるとか、 子供が喜びそうな曲を一曲だけ選んで、 プログラムの中でその曲だけ子供たちが聴衆の拍手を浴びながら入場して オケ初体験をする、とか 本当に細やかな工夫が優しい、すばらしい企画が沢山。 土曜日はこのオケが拠点にしているヒューストンのオフィス街にある教会、St. Johnでの演奏。 日曜日は今回が初めてと言う、ヒューストンの北に約45分車を走らせた所にある コミュニティーセンターでの演奏だった。 このプログラムで私は思いがけず人生観を影響されてしまった。 ベートーヴェンの協奏曲でソロ出演していたAnne-Marie Mcdermottの演奏に感動したのである。 神経が研ぎ澄まされた、一瞬の気の緩みも感じさせない、息を呑まれる演奏だったのである。 しかも聴衆は余り良くなかったのだ。 土曜日の晩は「ここぞ」と言う静かなパッセージで遠慮なく咳き込む人がいた。 咳というのは伝染する物らしい。 一人が咳をすると、「じゃあ私も」と言う感じで咳がどんどん増える。 でも、Ann-Marieは動じること無く、本当に禅僧のような集中力だった。 そしてそのあと太っ腹にも弾いてくれたバッハのイギリス組曲2番の前奏曲のアンコールで 私は度肝を抜かれたのである。 私に最近練習が後回しに成りがちだった自分を深く反省させる演奏だった。 就職活動が何だ!論文がなんだ! 本末転倒!私はピアニストなのに!全てはピアノをうまく弾くためのはずなのに! 血迷ってしまっていた! 土曜日の演奏後のレセプションで 「オケの中でチェレスタを弾いているピアニストですが、あなたの演奏に触発されました」 と自己紹介をしたら、とても喜んでくれた。 日曜日は本当に泣きたくなるほどの会場だった。 最高の音響で素晴らしい会場だったのだが、客入りが本当にチラホラ、と言う感じ。 Anne-Marieが本当に可哀想で、私はまんまん中に座った。 そしたら私の目を見ながら最高の演奏を弾いてくれたのだ。 そして、演奏後にギュッと10秒くらいハグしてくれた。 「音楽人生は楽なことばかりじゃないけれど、でもやっぱり素晴らしいわよね」 と、ギュッと私の上腕を掴んでくれた。 私は練習します! 迷いが吹っ切れた。

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