April 2016

弾くために食べる!? 食べない!?

「リサイタルを弾く前はやっぱりステーキを食べないと」 …と言う意味の記述を呼んだのは、確か宮沢明子のエッセー集だったと思う。 そう言う事を実際に言う人、実行している人、と言うのも周りに居る。 兎に角エネルギーを補給して、ガツンと、と言う感じだろうか。 私もどちらかと言うとこちらのタイプ。 腹が減っては戦は出来ん! 逆に「演奏前の食事は抜く」と言う人も多い。 その心は「脳に回したい血が食べると胃に回ってしまう)と言う物。 そういう人たちは大抵、演奏後にがっつり食べて、そして呑んでいる。 「緊張で一日食べられない」と言う人に会った事もある。 私には想像が出来ない。 私は食べて元気を出す、と言うタイプの人間として、今まで来た。 疲れたら、食べる。 病気かな、と思ったら食べる。 景気づけに食べる。 お祝いに食べる。 ストレス解消に食べる。 食べる、食べる、食べる。 子供の頃から大食漢だった。 赤ちゃんの時に母が何か月目かの検診の際「食事には何を?」とお医者さんに聞かれて 「バナナと、ゆで卵と、ベビーフードと…」 とリストしたらば「それは一日分ですか?」と聞かれたそうである。 勿論、一食分だった。 母が食事を切り上げようとすると、うなったり、テーブルを叩いたりして怒るのだそうだ。 赤ちゃんの時から味も分かったらしい。 母が鶏がらスープから自家製のおかゆを作ると喜んで大量に食べるが、 ブイヨンで作ると、口から吐き出して一口も食べないのだそうだ。 (この逸話は、私は誇りである) 「マキちゃんと食事をすると、本当に美味しそうに食べるからつられて一緒に食べられる」 と食が細くて困っているご高齢の方や病弱の方などに良く言われる。 そうすると張り切ってもっと食べて見せてしまう。 私は大抵の男友達よりも食べる。 しかし! 何だか小食の方が体も脳にも良いそうなのである… 最近私は健康に凝っている。 いかに自分をベスト・コンディションに保つか、 そして自分のベストの演奏を行い、ベストのリサーチを行い、論文を書くか。 どうしたら時間を効率よく使えるか。 どうしたら生産性を高められるか。 その為に走ったり、発酵食品を多くとったり、果物と野菜を増やしたり、色々している。 その健康志向のリサーチを進めていたら、「絶食の勧め」と言うのに出会ってしまった。 これである。 この人はアメリカ国家老化現象研究センターの神経科学のトップの人。 この人によると、動物実験でも人間でも、兎に角エネルギー摂取を減少することが 病気の予防、治療、脳の活性化、老化予防、全てに良いのだそうである。 では、どれだけカロリー制限すれば良いのか。 この人は色々な方法を述べている。 1.食事摂取時間を24時間中8時間に収め、16時間を「絶食の時間」にする。 2.一週間のうち二日は500キロカロリー以下の摂取にする。 3.忘れた。 このヴィデオを見たのが昨日の夜。 夕飯食べながら見たので、腹八分(実感的には五分)で中断。 今朝は中位のサツマイモをチンしたのを半分、グレープフルーツを半分、ミルクコーヒーコップ半分。 昼食は練習しながら:アーモンド7粒、ひまわりの種一握り、ミカン二つ、チョコボール二個、ぬか漬け(人参半本分、こんにゃく二切れ、キャベツの芯二切れ)。 4時:リンゴ一個とヨーグルト(砂糖なし、低脂肪) […]

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ハンガリー狂詩曲2番のチャームポイント。

なぜ有名な曲は有名になるのか。 一つには、凄く明確なイメージを提供できる、と言うことが条件なのでは、と思う。 そして今度私が「『クラシック』って何!?」でお届けする、 ジプシー音楽に触発されてリストが書いた『ハンガリー狂詩曲2番』は 少なくともアメリカでは、このイメージを持って聴く人が非常に多いのでは? トム&ジェリーのアニメである。 このYouTubeチャンネルが正しければ、1947年の制作。 今ちょっとWikiで調べたら、この曲は実に色々なアニメで使われている。 そして、ほぼ全曲が毎回色々なイメージやストーリーと共に使われている。 このYouTubeも多少カットとか、重複とかあるものの、大体全曲。 制作者も、視聴者も、今よりもレヴェルが高かったことを彷彿とさせる。 そして曲自体だが、 「リストのハンガリー狂詩曲をアニメに使うなんて不謹慎な!」 と怒るクラシック・ファンは居るのだろうか? ブラームスの協奏曲や、バッハのゴールドベルグならちょっと分かる。 (バッハのハ短調トッカータとかは良くアニメに使われていますが。) リストだって「愛の夢」とかがこのようにコメディータッチで描かれたら ちょっと悲しいかも。 でもハンガリー狂詩曲は基本的にノリノリクラシックなのである。 ノリノリクラシックなんてあるのか? 実はあるんです! 詳しくは私の演奏会で!

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ワーグナーがユダヤ人だった!?

ヒトラーにユダヤ人の血が流れていたかも知れないと言う説は 手塚治虫の「アドルフに告ぐ」などでも扱われ、割りと良く知られていると思う。 でも、ワーグナーがユダヤ人だったと言う説は、 少なくとも私は今日知り、驚愕している。 なぜ私がこの説に今日行きついたのか? またまた、博士論文のリサーチのためである。 女性が暗譜と言う演奏様式に貢献した、と言う有力な説に関するリサーチはすでに 一月17日付けの「女流ピアニストの進出がピアノ演奏様式を変えた!?」で書いているので ここでは割愛しますが、 実はエキゾチシズムで憧憬の対象になったのは他にもジプシーやユダヤ人などが居て、 それぞれ全く違った形で暗譜と言う演奏様式の確立に貢献しているようなのです。 ジプシーは文盲に固執することに於いては文字も音楽も同じで、 しかしその即興演奏はリストやブラームスを魅了しています。 その楽譜を使わない「自由」で「自然」な奏法が 特にリストの暗譜奏法につながったとする説はAlan Walkerなどが唱えています。 ユダヤ人は女性と同じく、ヨーロッパの白人男性社会に受け入れられたく、 しかしその社会的抑圧からコンプレックスがあり、その中で溶け込もうとする努力もあり、 秀でてくる音楽家が多くありました。 例えば、一番有名なのはメンデルスゾーン、オペラ作曲家のマイヤービア、 ブラームスと共演したヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒム、 ピアニストのアントン・ルービンスタイン、モシュレス、タウジッグ、などなど。 これ等ユダヤ人作曲家が一般的に比較的保守的で、 ユダヤ人奏者が皆過去の偉大な作曲家のリヴァイバルに務める傾向が強かったのを その人種・文化的コンプレックスに理由づけするのは無理でしょうか? そして、女性と同じく、彼らがバッハ・モーツァルト・ベートーヴェンと言った 過去の巨人たちを暗譜で演奏する傾向が強かったのは、 女性と同じく、自分たちの能力を認めさせたいと言う事の現れのほかに もう一つ、ユダヤ人の文化と言うのがあったようです。 色々な土地を追われ、迫害の歴史が長いユダヤ人の文化では 自分たちの聖書を焼かれるなどの迫害の被害にある事も多く、 その為「記憶する」と言う行為が特に強調されていたのです。 この事に目を付けていた私がNYでその話をしていたら、 最近「Wagner’s Jews」と言う題でドキュメンタリーを製作した学者にあった、と言う人が 紹介をしてくれました。 Wagnerは歴史に名を残すユダヤ人嫌いで、 ヒトラーはワーグナーとワーグナーの音楽をプロパガンダに利用しました。 その為イスラエルではワーグナーの音楽上演が禁じられているほどです。 しかし、このドキュメンタリーではワーグナーが生涯を通して 親しく付き合った音楽家の多くがユダヤ人で、 これらユダヤ人音楽家はワーグナーを崇拝していた、と言う 一般的歴史的見解とは異なる史実に焦点が当てられています。 こちらで予告編が見られます(英語です)。 この人とメールのやり取りをして、この人のプロジェクトに興味を持った私が この人の文献を読み進めていると、驚愕する学説に出会ったのです。 「ワーグナーの反ユダヤ主義は、 ワーグナーが自分がユダヤ人かも知れない事実を全力で否定する必要があったからだ。」 詳しくはこちらでお読みいただけます。 WAS WAGNER JEWISH?~An old question newly

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栄養のバランス=音楽バージョン

ストーカーの一件で最近とても嫌な思いをすることになった。 非常に、非常に間接的な事。 ある物凄く意地の悪い弁護士と取引をする羽目になって、 こいつがもう本当に嫌な奴だったのだ。 色々あったけど、嫌な思いと言うことでは、これがピカいちだったかも。 それで、私は怒り狂ってラフマニノフの作品39-5を3時間くらい練習した。 私のアルバム「Etudes, Seriously」のトラック13に収録した曲である。 (サンプルはここからどうぞ) http://www.cdbaby.com/cd/makikohirata この曲を弾きながら 「お前なんか嫌いだ~!! こういう風に生活の糧を得ているなんて何て可哀想な奴!!」と 心の中でこの意地悪弁護士に向かって一杯毒づいた。 その次の日も、その次の日もこの曲を練習するのが非常に楽しみだった。 でも、それ以外はずっとブルーで元気がなかった。 (この元気なさは実は意地悪弁護士のせいだけじゃないかも。 もしや、ああやって何時間もラフマニノフを練習してるからかも…) と思い始めたのは、3日目くらい。 それで、余り乗り気じゃなかったけれど、この曲を練習をし始めた。 今度日本でも弾く、ジョップリンのラグタイムである。 そしたら、びっくりするほど気が晴れたのである! ジョップリンの名曲集は、父が子供の頃プレゼントしてくれたもの。 もらった時は全然ありがたみを感じなかった。 小学校二年生くらいでモーツァルトとかバッハとかばかり弾いていた私に 「こう言うのもある、って知っておいても良いんじゃないかな」 と私に仕事帰りに買って来てくれた父に 「お父さんは分かってないね~」 と非常に生意気に返事をしたように思う。 でも、今、そのころの父の年齢に近づいてきた私は 父がその時、夜遅くまで仕事をした帰りに私にジョップリンを買ってきた、 その気持ちが少し分かってきているような気持ちがして、 ちょっと泣きたいような気持である。 お父さん、ありがとう。

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聴くことで静まること

10年以上前にテレビでたまたま見たの映画のワンシーン。 湾岸戦争から帰ってきた女性が朝、 ライスクリスピーが牛乳を吸って出す 「パチパチ」 と言う音にじっと耳を澄ませて微笑む。 その淡々とした行為に、女性が戦場で味わった凄まじい騒音が彷彿されて、 とっても印象的だった。 今、私も寝苦しい夜を諦めてライスクリスピーに牛乳を注ぎ、 このブログを書きながら思い出している。 LAで私が大好きだったヨーガの先生は 「真剣に聞くことに集中することによって、思考を一時停止することが出来ます」 と言っていた。 NYで再会した私の友人は、 彼女の父親の死に際に関する家族の葛藤の話しを私に打ち明けてくれている最中、 突然立ち止まって散歩していた公園の鳥の鳴き声に1分くらい耳を傾けた。 私も一緒に聞いて、その延々と続く歌に感動した。 何という鳥だったのか。 一度もメロディーが繰り返されない、どんどん発展して行く、まさに歌。 NJで色々な物を整理した際、自分の膨大な量の日記の中に発見した 一か月前に亡くなった私のアメリカン・ファーザーが 私がホームステーを始めたばかりの91年の私の誕生日に書いてくれた手紙。 「人は誰でも錨となる拠り所が必要だ。 これからのマキコの人生で私とジョーンとこの家をマキコの錨にして欲しい」。 手紙が書かれてから25年間、まさに錨になってくれた。 延べ日数で言うとNJと日本の実家と、 どちらがより多く私の田舎だったのか。 日本だって私は一年の内一か月は演奏活動などで居させてもらって、 かなりの日数を過ごしているのだ。 マンハッタン時代、疲れると休息を求めてNJに行っていた。 日帰りしたことも、週末を利用して2泊したことも、ずっと長く何週間も滞在したこともある。 LAやヒューストンに移動した後も、年始年末や夏休みなどを利用して良く行った。 ピアノが練習し放題だったことや、 マンハッタンの友達や音楽創りの機会が恋しくて、何かに付けて帰っていた。 91年に私に手紙を書いてくれた際、エドは66歳だった。 まだホームステーを始めたばかりで、将来の関係性も不確かな私への手紙に、 自分の余命など考えるはずもない年だったのだ。 私たちの関係が一生ものになったことだって、 努力と忍耐と愛情の賜物の、ほとんど奇跡だったのだ。 大学に進学した私が週末に帰りたいと言うと、 エドはいつも私が好きな菓子パンをいそいそと買って待っていてくれた。 その菓子パンを手作りしていたドイツ系パン屋さんもとっくの昔に引退してしまった。 形あるものはいつかは形を変えるし、命あるものには寿命がある。 変わらないのは、自分の中の思い出と、 何が起こっても周りの音を愛でる態度。 音楽人生、邁進。

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