ピーター・ぜルキンのレッスン

私はアメリカに来てまだ間も無い頃、母と妹と一緒にタングルウッドに演奏会を聞きに来た事が在ります。小澤征爾さんの指揮で、ピーター・ぜルキンのモーツァルトのピアノ協奏曲を聞きました。ピーター・ぜルキンは、伝説的なピアニスト、ルドルフ・ぜルキンの息子です。彼自身、とても高名なピアニストで、去年はストラヴィンスキーのピアノの木管の為の協奏曲でボストン交響楽団とタングルウッドで共演し、その非人間的に性格な演奏に圧倒されました。そのピーター・ぜルキンが今年はタングルウッドのピアノ研修生に一人ずつレッスンをしてくれる、と言うのです!今日はそのレッスンでした。 ピーター・ぜルキンはとても控えめで静かに喋る人です。痩せていて、背が高く、ちょっとマーラーの写真を思い出します。でも静かですが、目の奥にチロチロと素早い考えが頭の中で起こっているサインが見える感じの人です。 私は「子供の情景」から、最初の三つまでと、「トロイメライ」を聞いてもらいました。この曲は日本でももう何回も演奏しましたし、私はかなり弾きこんでいるつもりでしたが、彼の細かな楽譜の読み方、微細までに至る注意で、全体像がグンと明確になりました。また、弾きこんでしまったために完全に見えなくなっていた見方を色々提示してくれ、またこの曲に新たな姿勢で臨む気持ちにさせてくれました。 とても楽しいレッスンでした。大声で笑う様な楽しさでは無く、これから毎日練習して行くのが、新たにワクワクと楽しみになるような楽しさです。静かに凄い人だなあ、と思いました。

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