November 2015

充実!ー時間の不思議、惰性の法則

今週節目の誕生日が来た。 朝起きたら みなぎるようなやる気と、 憑き物が落ちた様な明るさが実感としてあった。 自分の反応をちょっと心配していた誕生日だったけれど、 沢山の人にお祝いしてもらっていて、楽しみな演奏の機会にも恵まれて、 素晴らしい誕生日となった。 誕生日翌日の昨日はスケジュールがびっちり詰まっていた。 朝の8時から夜の6時まで教えるのは毎週木曜日の事だけれど、 (昼食も教えながら取る、という感じ) その後7時から2時間半、今度の日曜日の演奏会のリハーサルがあったのだ。 でも、不思議と楽しい。 私の生徒の中でも最年少の5歳が昨日、 レッスン室に入ってピアノの前に座って、 最初の一音を弾いてからまじまじと私の顔を見て次を弾かない。 しばらく目を合わせてから、聞いてみた。 「Is there something on my face?(私の顔に何かついてる?」 そしたら、意外な答えが返ってきたのだ。 「Yes…HAPPY!(ついてる…ハッピーが!)」 この事は一生忘れないで、何度も反復して大事にしよう、と思った。 生徒は可愛い。 これから日曜日までは毎日リハーサルだし、その後も結構忙しい。 そしてなんでだろう。 「論文日」とか「論文の夜」とか大きな単位の時間を論文のために割くと 他の事が色々気になってメールしちゃったり、家事をしちゃったり 全然進まない日もあるのだけれど、 忙しいと、20分を利用して意外にぐんぐん捗ったりする。 こう言うのも「惰性の法則」と言うのだろうか? 忙しい日にゲームのように「今日はいつ論文を押し込めるかな}と工夫するのも、 何だか楽しくて、頑張ってしまう。 寸暇を惜しんで論文を書いて、 弾くときは真剣に心を込めて そして笑えるチャンスは逃さずに一々多いに笑って楽しもうと思う。 あ、そう言えば。 横須賀ゆかりのピアニストグループ「スカぴあ」のメンバーが贈る クラシック音楽番組『スカッとスカぴあ』と言うラジオ番組。 11月が私が「ピアノ史に於ける女性観の移り変わり」と言うテーマでお届けしているが 11月21日(土)朝10時半から30分の放送がもうすぐ! 今週のテーマは「クララ・シューマン」。 インターネットを通じて世界中どこからでも生放送をお聴きいただけます。 FMブルー湘南のサイトから、どうぞ! http://www.yokosukafm.com/

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音に込める願い。「いたいの、いたいの、とんでけ~!」

ピアニストとして私のしたい事は、言葉以上の思いを音に託して発信すること。 毎週水曜日はヒューストンから南に少し言ったHobby国際空港で クラリネット奏者で私の心の友である麻衣子さんと演奏している。 皆が忙しく行き交う中演奏をするのは、 演奏会場で演奏するのとはだいぶ違う。 色々な人を観察しながら、色々な事を思う。 ヒューストンの大産業の一つは石油に並んで、医療。 Houston Medical Centerと言うのは癌研究で世界先端と言うこともあり、 沢山の医者や患者がヒューストンに最新の医療技術を求めて来る。 昨日は弾きながらその事にふと、思いが飛んだ。 今こうして闊歩している人たちのどれだけが患者さんとしてヒューストン空港に来たんだろう? あるいは患者さんのお見舞いに来ている、家族の方々なんだろう。 最近、2歳の子が、お母さんに一生懸命 「いたいの、いたいの、とんでけー」とやっているのを見た。 私がピアノを弾きながら、色々な方の安心を願うのは、 実際には「いたいの、いたいの、とんでけー」と同じかも知れない。 でも私は「いたいの、いたいの、とんでけー」の行為と伝統に込められた、 『愛』みたいなものも、愛おしいと思う。 そして、それは確かに私たちを色々な意味で癒してくれる。 いたいの、いたいの、とんでけ~。

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音楽は祈り。

私は音楽を演奏することで世界平和を祈願します。 11月13日のパリでの多発テロは、私たちのメシアンの最初のリハーサルの前日だった。 129人が殺され、352人が負傷。 4月に起こったケニヤでの147人の死者を出すISISの暴行も、 パリと照らし合わせて再び注目を浴びている。 メシアンの「時の終わりのための四重奏」がインスピレーションとしている 新約聖書の黙示録も、急進派と読めなくもない。 異教徒を世界から残酷なやり方で抹殺する、と言う内容の描写が延々と続く。 人を人類愛にもたらすためには、究極的には手段は何でも良いと思う。 理想的にはどの宗教だって人類愛を目指しているのだと思う。 でも多様な宗教観がお互いに相いれなかった時点で、 相手を抹殺と言う思考に走るのは歴史的に何度も、何度もあった訳で、 そういう危険性もあるんだと思う。 宗教以外に人を人類愛に導いてくれるものとして、私が考え付くのは: 家族の絆、母性、文字通りの隣人愛、『恕』とか同情する気持ち… 私は、少なくとも私の人間形成に於いて、 音楽と言うのはこの最後の「恕」とか同情心をいつも助けてくれている、と思っている。 練習して作曲家の歴史的背景、人生状況、作曲家に影響を与えた人々に思いを馳せる。 初演を聞いたであろう聴衆の反応に思いを馳せる。 演奏の度に、私の発する音波が空気を通じて、 聴いてくださる方々の鼓膜だけでなく体全体に通じるんだと言うことを肝に命じて 自分の一番純粋な気持ちを鍵盤に伝えるように心がけている。 毎日の練習を始める度に、自分がなぜ音をコミュニケーション手段に選んだのか、 音楽に自分を託すのか、考えながら最初の一音を出すようにしている。 私にとって、音楽は個人的な宗教の様なものである。 そして私がそう言う教育を受けられ、ここまで来られたのは、 色々な人の「愛」(敢えて愛と言うぞ)があったからだと信じる。 私の音楽は私個人の願いだけでなく、 私の音楽に思いを託して養育してくれた皆の『愛』がこもっている。 今週末、誕生日を祝っていただいた。 ヒューストンのお友達が集まって、盛大にごちそうを食べて、 手作り黒ゴマプリンにロウソクを立ててもらって吹いたりもした。 その愛も受け止めたぞ! 今日の練習、これからの演奏に、しかと受け止めた愛をこめて、発信するぞ! 非常に、非常に間接的だけれども、 音楽を発信し続けることで、皆が音楽に気持ちを託せる平和な世の中になることを、 毎日祈ります。 誕生日に私が頂いた愛のごく一部。 あれから毎日見て、ニコニコしています。 、

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メシアンの「時の終わりのための四重奏」について

11月22日(日)もいよいよ一週間後に迫りました。 ヒューストンにこの秋新しくオープニングした MATCH(Midtown Arts and Theater Center of Houston)にて演奏する 20世紀を代表するフランス人作曲家、Olivier Messiaenによる 『時の終わりのための四重奏』を午後5時開演でお届けします。 この曲は本当に重要な曲なんです。 1.まず内容が劇的: ―新約聖書に出てくるヨハネの黙示録の中で 特にこの世の終末を描いた部分が題材となっています。 10章の1~2、5~7は特に直接のインスピレーションとして作曲の前書きに引用されています。 10:1わたしは、もうひとりの強い御使が、雲に包まれて、天から降りて来るのを見た。その頭に、にじをいただき、その顔は太陽のようで、その足は火の柱のようであった。 10:2彼は、開かれた小さな巻物を手に持っていた。そして、右足を海の上に、左足を地の上に踏みおろして、 10:5それから、海と地の上に立っているのをわたしが見たあの御使は、天にむけて右手を上げ、 10:6天とその中にあるもの、地とその中にあるもの、海とその中にあるものを造り、世々限りなく生きておられるかたをさして誓った、「もう時がない。 10:7第七の御使が吹き鳴らすラッパの音がする時には、神がその僕、預言者たちにお告げになったとおり、神の奥義は成就される」。 2.次に歴史的背景が非常。 第二次世界大戦中、ドイツ軍に捕虜に捕られたメシアンが 捕虜収容所、Stalag VIII-Aでたまたま居合わせた ヴァイオリン奏者(Jean le Boulaire)、 クラリネット奏者 (Henri Akoka)、 チェロ奏者(Etienne Pasquier) そしてオルガン・ピアノ奏者であったメシアンのために この楽器編成で書かれ、 捕虜収容所の中で他の捕虜たちを聴衆に初演が行われたのが1941年1月15日の極寒の夜。 3.最後にこの曲はOlivier Messiaen(1908-92)と言う 現代音楽に多様な影響を及ぼした作曲家の 一番有名な代表作と言うだけでなく 彼の音楽理論発展の過程に於いて決定的な役割を果たす曲となった。 ―鳥類学者として鳥の鳴き声を譜面に書き取り、自分の作曲に題材として利用したメシアンが 最初に特定した鳥(ブラックバードとナイティンゲール)の鳴き声を利用した作品。 ―「わが音楽語法」(1944)と言う自分の作曲法を説明した著書で一番引用されている曲 世の終焉の後に来るとされる無限の時を音楽で表すためにこれ等の書法が使われた。 「移調の限られた旋法(移調しても音が同じになることが多いモード)」 「逆行不可能なリズム(前から読んでも後ろから読んでも同じリズム)」 「リズム・メロディー・ハーモニーのペダル(リズムとメロディーとハーモニー、それぞれに何度も繰り返すパターンがあるのだけれど、中世のイソリズムのように、それぞれのパターンが違う長さ―例えばリズムは5拍分、メロディーは13拍分、ハーモニーは21拍分と言ったように―なのでいつも違う音が違うハーモニーやリズムに当たる)」 「時の終わりのための四重奏」は8楽章から成っています。 1.水晶の典礼(4楽器) 作曲家の描写: 「朝3時と4時の間の鳥たちの眼覚め:高い木の中で出所が分からない震える音、トリルの後光の中でブラックバードとナイティンゲールが即興で鳴く。これを宗教のレヴェルに移調させると、天国で共鳴する静寂が垣間見られる」 音楽的に: クラリネットがブラックバード、ヴァイオリンがナイティンゲールとしてこの楽章中、鳴いています。その中でチェロが5つの音(ドーミ―レーファ#-シb)を15のリズムのパターン(2つの「逆行不可なリズム」の組み合わせで繰り返して、メロディック・ペダルを奏で、ピアノはハーモニックペダルとして29の和音を17のリズミック・パターンで繰り返し「永劫」を醸し出します。

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本番は大成功でしたーさて、お次は…?

昨日の本番もお陰様で大成功でした。 会場の大学の駐車場から、私の付き添い担当になった警察官がずっと付き添ってくれ、 ストーカーが出現した場合の対策としてちゃんと避難ルートまで説明され、 担当の警察官のボスとかが私が練習中に何人も来て自己紹介したりして、 「このキャンパスは平和なんだね~」という感じでした。 私もお姫様か大統領にでもなったような気分で、中々楽しかった。 お客様の中には私の昔の教え子が二人来てくれていて、びっくり! 本当に懐かしくて、嬉しくて、そしてこの子たちを教えた一年前の自分と 今の自分を比べたりして、本当に感慨深かった。 ギュッとハグして、近況とか卒業の予定とかお勉強の様子とか色々聞かせてもらいました。 それにしても、同じ演目でも会場と聴衆とピアノが違うと本当に色々変わります。 観客の反応や雰囲気や、感じ取られる「気」の様なもので、 奏者の曲に対する気持ちが随分変わります。 そして楽器と会場が違うと、音そのものが変わる。 音楽会と言う共同体験に於いて、演目と言うのは一部でしかない。 そして先週、この演目を初めて弾いた経験を踏まえて 2回目の余裕と、そして野望もあります。 更に、前回は弾いた5曲を書いた5人の作曲家の内 イタリアに滞在中の一人を除いた4人が聴衆の中に居たのに対し、 今回は1人だけ。 やはりプレッシャーが軽減し、 その分「自分節」をそれぞれの曲に於いて試したくなってきます。 今回護衛をしてくれた警察官が私の音楽に興味を持って 色々良い質問をしてくれたり、私の事を立ててくれたりしたのも手伝って 聴衆に伝えよう、コミュニケートしよう、とすごく意識した演奏になりました。 それが通じたのかな? 大学の生徒、教授、スタッフ、色々な人が私のトークや演奏に生き生きと反応してくれ、 演奏後に沢山の人と言葉を交わし、お礼を言われました。 そして今日は早速、来週末演奏のメシアン「時の終わりのための四重奏」 初リハーサル! 昨日のパリでの惨事と、この曲の終わりである「世の終わり」 更に、この曲が描かれて初演された第二次世界大戦中の捕虜収容所、と言うことが 妙に共鳴し合って、リハーサルなのに結構感情的な演奏になりました。 良いメンバー。 これは楽しくなりそうです。 来週はがっつりリハーサル! 私の誕生日も重なって、色々イベントフルな週になりそうです。 さ、備えて今日は、早寝! おやすみなさい。 いつもお読みくださっている皆さん、ありがとうございます。

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