October 2009

天使の羽根

カフェテリアでお友達とご飯を食べていたら、弦楽器の子がやって来て「ストン!」と同じテーブルに座った。 一緒のアンサンブルで弾いたこともある子で、指揮の後輩。 凄く一生懸命長時間練習する子で、熱意的に身体全体を揺らして弾くので、 好ましいが、オケでは凄く目立っちゃう、そういう3枚目。 この子がニコニコとして、ずっと顔を見ているので 「Z君、元気?なんか嬉しそうだね。」 と、声をかけると、 「うん、今凄い練習が乗っているんだ!」 自分の背中に、伸ばすと端から端まで5メートルくらいある羽根が背中についていると想像すると、 上手く弾けることに気がついた、と言う。 たとえば弓を上げながらスタッカートで弾くパッセージのところでは段々羽根を開いていく、 とイメージすると、上手く行くそうな。 始めは、(おお、面白いこと言うな)と思って聞いていたが 「そうやって練習していると、気持ちよくなって段々練習室の中を飛び回っているような気持ちになってくるの」 と、目をキラキラさせて言う。 「マキコも今度練習するとき、ピアノと一緒に飛んでみると良いよ!」 と言うので、「ピアノは大きいからねえ、上手く飛べないかも知れない」 とちょっと引き気味に言うと 「大丈夫、ピアノにも羽根を付けてあげれば好いんだ!」と断固として言う。 実は、私はこの子が先日他のお友達に 「学校でいろんな人がマリファナ使うようになったのは僕のせいかなあ、罪悪感を感じるよ」 と言っているのが、偶然耳に入ってしまっていて、ちょっと心配していた。 私は、まずその子がマリファナを使っていることを全然知らなかったし、 学校でマリファナを使う子が居ることさえ、噂には聞いていたが、忘れていた。 その直後だったので、この「羽根」の話もちょっと眉つばで聞いて、そのまま数日忘れていた。 ところが今日、練習中、どうやって練習したら好いかもわからない難所に苦労しているとき、 ふと、この「羽根」の話を思い出したのだ。 ちょっと試しにやってみると、確かに助かる。 羽根がある、と想像すると、羽根とその重みを上手く活用しよう、と思い、 その結果全ての腕の動きを、背中から意識するようになる。 そうすると、上手い具合に脱力が出来、腕の動きが自然になり、全てが簡単にこなせるようになる。 羽根の話は本当だった! そして「羽根の発見」を促したのが、マリファナだったとしたら、良かったんじゃない?とか。 マリファナはアメリカでは13の州が、痛みや精神的な症状に対処する処方箋として認めている。 定められた症状に当てはまれば、合法的に手に入れられる麻薬である。 中毒性も無いとか、少ないとか聞くし、アルコールやタバコより害が少ない、と主張する人もいる。 オランダでは全く合法で、「マリファナ・キャフェ」と言うのがあり、いろんなフレーバーが楽しめるそう。 別に私は使おうとは思わないが、事実を良く知らないで、 他の人の選択の倫理を杓子定規で善し悪し決めつけるのは、良くないと思う。 でも、やっぱりちょっと心配。 音楽家は感受性豊かな人が多いのに、音楽の道には物凄いプレッシャーを伴う。 本番の緊張を和らげるために、血圧を低くする薬を飲んだりするのは、割と普通らしい。 他にも、耐えがたい緊張のために、本番直前にアルコールを摂取することを始め、 どんどん摂取量が増えていっている後輩もいる。 でも、とりあえずこの「天使の羽根」には私は多いに恩恵こうむっている。 Z君に感謝!

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シャレードをして大はしゃぎをする。

昨日の夜はコルバーンのピアニストのの誕生日だったので、皆でパーティーをした。 彼女には高校時代からのボーイフレンドが居て(今、大学4年生)、 彼はボストンにあるニュー・イングランド・音楽大学でヴァイオリンを勉強中。 その彼も、彼女のために二泊二日、わざわざ東海岸から西海岸まで飛行機に乗って来ていた。 かわいい。 パーティーもたけなわ。 誰が言い出したが、シャレードというゲームをすることになった。 身振り手振りで、言葉あてをするゲームである。 今日のシャレードのテーマは映画。 声を使ってはいけないルールなので、皆映画のワン・シーンを演じてみたり、 タイトルを連想させる言葉を何とかジェスチャーで伝えようと必死になったり、 皆で大興奮、大笑いの渦となり、真夜中まで大騒ぎして、寮の管理人に怒られた。 ハハハ。 自分の部屋に帰るとき、外が信じられないような霧に包まれているのを目撃した。 ミルクを流したようだ。 学校の真向かいにあって、私の部屋の窓から良く見えるウァルト・ディズニー・コンサート・ホールは フランク・ゲリーと言う奇抜な建築家のデザインで、宇宙船のように周りが全部銀色で、 夜はそれが照明に照らされて幻想的に浮き上がる演出なのだが、 その照明が全く見えなくなるほどの霧だった。 とても不思議な気持ちだった。

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会話術

あるジャーナリストとお話をする機会を得た。 (Nさん、こんにちは!) この人が、インタビューなどで人の話を本当に聞くと言うことがいかに難しいことか、言及された。 自分の世界観、先入観、価値観などのフィルターを通してでは無く、 その会話の相手をそのままの人間として受け入れる、と言うことは、結局不可能だ、と言われていた。 でも、それにできるだけ近づくべく真摯に聞く努力をする過程で、 それぞれの対話の相手を自分の世界観、先入観、価値観に取り入れることが出来、 自分の視野が広がるかも知れない、そうも言っておられた。 私も最近、自分がいかに人の話を聞けていないか、痛感している。 人と対話をするとき、その人の話す文章の前半を聞いて、後半に予測を付けてしまい、 その時点で、聞くのをやめてしまっていることが多いことに、このごろ気がついた。 これは、私の音楽の聴き方、さらに演奏中の自分の注意の払い方に全く比例している。 たとえば、クライマックスの前に長いスケールの上昇があったとする。 スケールはパターンだから、始まった段階で終わりまで大体予測がつく。 そうすると私はそこでそのスケールを聞くのをやめて、次のセクションのことを考えたりしている。 でも、こうするとそのスケールのクライマックスまでの盛り上がりが、最高ではなくなってしまう。 一音一音、来るべくしてくる音全てに耳を澄ます事が出来るようになると、 音楽全体が、緻密に、おのずから出来上がってくる。 会話でも、たとえば語尾まできちんと聞き、内容だけでなく、 その人の声音や、文章の終わりの抑揚の様子、その後の息まできちんと聞く、 と言うことが、本当に話を聞く、と言うことなのだと思う。 まだまだ、修行中です。

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ピアノ・マラソン

7時半 起床、運動、身支度、朝食 9時  勉強 12時 練習 2時  レッスン (ベートーヴェン「告別」と、シューベルト、3、4楽章) 3時半 録音(プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲の伴奏~アルバイト) 5時  夕飯・練習 6時  ピアノ・クラス(ベルグのソナタを弾いた) 8時  マレイ・ペライア(Murray Perahia)のリサイタル 今日は大変充実していた。 特に凄かったのが6時からのピアノ・クラス。 国際コンクールに向けて準備をしている中国人の子がアルベニズのイベリア一巻全部と プロコフィエフのソナタの7番を弾き、 それからヴェネズエラで弾くリサイタルのプログラムを準備中のスペイン人の子が モンポーと、やはりアルベニズのイベリアから一曲弾いた。 このスペイン人の子は主にスペイン物を中心に演奏する子で、 今までその子の専売特許だったアルベニズを今日中国人の子が弾いたので、面白かったのだ。 スペイン人がスペイン物を弾くと、何をやっても「ああ、スペイン風だなあ」と思ってしまう。 特に、この子はとても雰囲気のあるピアノを弾く子なので、皆凄く納得してしまう。 ところが、今日全く違ったアルベニズを中国人の演奏で聴いて、これが互角に面白かったのだ。 今まで何度もスペイン人の演奏で聴いていて、 (こういうものなんだ)とずっとクラス中で思っていた曲を 全く違う人種の人間が全く違う解釈で弾いて納得させるのは物凄いことだ。 そして今日、この中国人の子の直後に同じアルベニズを弾く羽目になったにも関わらず、 全然動揺無く、自分の視点を失わず、自分のアルベニズを弾き切ったスペイン人も物凄い。 二人とも、あっぱれ。 皆、このごろ特に上手い。お互い触発し合っているのか。

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疲れた時はどうすれば。。。?

将来対策の一環として、ある資格試験(内緒)を受けるべく勉強している。 今までも少しずつやっていたけど、テストが約一週間後に迫り、今日は5時間ほどぶっ続けでやった。 その後、練習、リハーサルなど、今日は割とぎっちりのスケジュールで、今、夜の8時半。 本当はもっと勉強したり、返信の必要があるメール、他の将来対策など、 今夜決行する予定だったことがまだ結構ある。 でも、頭の中で脳が充血して、腫れたようになった感じで、 何を読んでもすんなり入っていかないし、決断力も瞬発力も、ついでに楽観力(!?)まで、お留守状態。 こういうときは、皆どうするのだろう。 チョコレートを食べてみた。 ~全然変わらない。 久しぶりの友達と電話で喋ってみた。 ~楽しかったけど、脳みそはおんなじ状態。 なんだか今無理をしても、帰って逆効果なような気がするが、 それは私の逃げ?ここで踏ん張って頑張るべき? それとも、この「脳みその状態は、今日のインプットを消化中のサイン」と なるたけ楽に気分転換するべきだろうか? コルバーンに来て、ちょっと天才的な人たちを多く目の当たりにして、 そういう人たちの遊び人ぶりや、飲みっぷりや、怠け者っぷりにびっくりした。 私は特に4年前来たばかりの時は、本当に朝から晩までがむしゃらに練習して自己満足していたから、 本番の前夜に飲み会開いてどんちゃん騒ぎをして、本番直前に起床して 「二日酔い~」とか言いながら、凄い演奏する人たちを見て信じられなかった。 こういう人たちが本当に努力したらどうなるんだろう、と思っていたが今はちょっと考えが変わった。 皆、練習していない時間に、練習中に学んだことを反芻しているんだと思う。 だから今以上練習したからと言って、必ずしも今以上上手くなるわけじゃ無い。 そしてこの頃は、私も反芻するようになった。もとい、「反芻できるようになった」というべきか。 窓の外をボーっと見たりする。 気がつくと頭の中で、今日練習した曲が理想的に鳴っている。 (ああ、あそこはこういうイメージなんだ。)(ああ、ここはこの隠れた旋律がきれいなんだ。) そう、今の私は資格試験の反芻をしているんです。 怠けてるんじゃありません、断じて。 これでいいのです。 (-^□^-)

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