August 2015

本番の恐怖は命の危険?

口が乾く、手足が冷たくなる、心拍が早くなる。。。 これらはすべて本番前の緊張の症状である。 実は、これ、体が「命の危険!」と大間違えをして すぐに逃げ出せる準備をしているのである。 例えば、口が乾くのは余計な代謝などにエネルギーを使うことをやめるため。 手足が冷たくなるのは、体の先っぽが切られても出血が少なくて済むように。 そして心拍数が早くなるのは急に逃げ出すことができるように体が準備しているのである。 アドレナリンも大量に出る。 舞台の緊張と言うのは、本当に恐ろしい。 歯が抜け落ちるかと思うような恐怖感である。 手が震え、ひざががくがくする。 (ここで殺されちゃった方がまし!)と思った事もある。 私は本番前は必ず下痢をしていたし、吐く人もいる。 恐怖に対処するために、強いお酒を一杯あおる習慣がある人もいる。 この緊張感を克服する方法があることを、私は最近体験をもって知った。 実際に命を危ぶむ状況に陥るのである。 実はストーカーに付きまとわれていた。 この私が‼⁉である。 全く人生何があるかわからない。 今はまだ捜査が進んでいる段階なので詳細はここでは公開しないが、 しばらく避難生活を送り、何回か住居を変える羽目になった。 「怖いでしょ」と聞かれたが、実はあんまり怖くなかったのである。 「本番の緊張に比べればこんなの余裕、余裕」と思っていた。 そしてなんと、本番の恐怖もすっかり消えてなくなっていたのである! 演奏が発散に変わった。 「色々あったけれど、今日も演奏できる!うれしい!!」 と言う風に思えるようになったのである。 なんだかストーカーに感謝したい気もするくらいである。 全く人生、何があるかわからない。

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本番翌日!

昨日のみなとみらいでの「南欧の愛と幻想」は 暖かい聴衆に見守られ、熱心な応援団と家族に支援されて、 その美しい音響を楽しみながら、弾き切ることが出来ました。 今年15年目のリサイタルですが、 毎年来て下さっている方々も何人もいらっしゃいます。 遠方からは叔母が木曽から毎年上京してくれています。 小三の時の私の恩師も15年間私の演奏会を一度も欠かさずにいらして下さっている一人。 高校生の時から私の成長を見守っていてくださっているTさんも。 舞台上から、聴衆の方々のお顔と言うのは実は良く、見えています。 舞台からお辞儀をする際、そして演目紹介のトークの際、 懐かしい顔を見つけたり、 皆さんの表情で、うなづきや、ほほ笑みで、 私は元気づいたり、ホッとしたり、嬉しくなったりします。 演奏中もピアノに向かってホールの右側に座っている方は結構見えています。 昨日前列右側に座っていた面識の無い男性は 演奏中、ずっと目を閉じていらっしゃいましたが、 それが眠っているのでは無く、 実に心から音楽を楽しんでいらっしゃっているのは 時々軽くスウィングする上体や時々つかれるため息などではっきりと分かり、 それにも元気づけられました。 演奏会後、と言うのは興奮状態にあります。 音楽家の多くが多量のお酒を消費するのは、 一つには高まった神経を落ち着かせる、と言うことがあります。 私はお酒に弱く、すぐ赤くなってしまうのですが、 昨日は珍しく親戚一同が私の演奏会あとに集まる大きな宴会があり、 母と乾杯して生ビールとワインをいただき、気持ちよくなってしまいました。 (父と妹とも乾杯しましたが、ノン・アルコールの杯でした)。 そのせいでしょうか、昨日は本当に落ち着いて、ゆっくりぐっすり眠ることが出来ました。 演奏後には珍しいことです。 普段は演奏後の夜は高ぶった神経が寝床に着くとその日の演奏をプレーバックして 反省点が次々と思い浮かび、寝転がった状態でもいてもたってもいられなくなります。 でも、昨日の夜は一度も起きなかった。 夢も沢山見て、楽しんで寝ました。 そして演奏翌日の今日は20年来の友達であり、 音楽ジャーナリストのFKさんと、お昼を横浜で頂いたあと、 9月6日(日)にあるピアノ・フェスティバル、「スカぴあ」のリハーサル! スカぴあは横須賀ゆかりの4人のピアニスト・グループ。 ソロから始まり、連弾、1台6手、1台八手と弾き進み、 最後は2台16手までご披露する、前代未聞の演奏会! 今年で5年目になります。 横須賀芸術劇場のベイサイド・ポケットで毎夏公園していますが、 スカぴあ仲間は楽しく、 リハーサル中も笑いが途絶えません。 「南欧の愛と幻想」のリサイタルは、来週の日曜日にまたもう一回 千葉美浜文化ホールで演奏するのです。 が、演奏の翌日はやはり気分転換。 今日と明日はスカぴあのリハーサル、 そして11月の現代曲リサイタルの譜読みも始めます。 楽しみにすることが多くて、嬉しいです!

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本番前日

明日はいよいよみなとみらい! 本番前日に気を付けることの覚え書き。 1.ポジティブ思考。 ―それまでどこを上達すべきか批判的に自分の演奏を聴いていた練習を良いところを評価する聞き方、自分の音楽を楽しむ練習にモード・スウィッチする。 ―(これをやらなくちゃ)(まだこれが出来てない)ではなく、(これが終わった!)(これは上手くいった)(次はこれをやるのが楽しみ!)と言う風に自分の頭の言葉をポジティブにする。 ―リラックスする。命に関わることでは無い。何がどうなっても大事には至らない。すべては距離感の問題。少し達観することで、明日のイベントに距離感を持つことで余裕を持つ。 ―演奏会は皆で協力しあって始めて開催が可能なもの。そして演奏会のスタッフの中には普段の生活のいろいろも重なって、プレッシャーやストレスを感じてしまう方もいる。そんな方の立場を思いやり、感謝の念をはっきりと表現することを忘れず、演奏会で皆さんに癒しを感じてもらう、と言う最終目的を常に明確にみんなに表示し続けること。 2.健康管理 ―小まめな補給:水分、栄養(カロリーでは無い) ―できるだけ沢山、手放しで笑う、あるいは笑む。 ―体を動静にはっきりと意識をし、運動は一生懸命、休憩は完全に。 3.実際的な準備。 ―曲、そして演奏会に対するイメージをできるだけはっきり明確化させる。 ―CD,ドレス、メーク、アクセサリー、ストッキング、靴、栄養補給など、荷物をできるだけまとめる。 今日は午前中は練習、午後は美容室です。

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楽器は共演者

今日はみなとみらいホールに試弾に出向いた。 ホール側のご好意で、ピアノ庫にて今週土曜日に使用可能なピアノを弾かせて、 どの楽器を使うか最終判断をさせていただくのである。 1号と7号と呼ばれるピアノが二台、オプションとしてあった。 両方ともスタインウェイ、そして勿論、フルコンである。 私は去年は7号を使った。 深い音色、倍音の美しさに加え、 鍵盤の抵抗力がしっかりとあるため、微妙なコントロールが効く、と言うことが決め手だった。 去年の『ショパンToジャパン』はしっとりとした抒情的な曲が多く、 音色の複雑さ、細やかさが必要不可欠だった。 逆に一番は煌びやかすぎて、『ショパンToジャパン』の様なプログラムでは 軽薄に聞こえてしまう。 しかし今度のプログラムは南欧。 フラメンコの様なメリハリの効いたリズム、 ギターをかき鳴らす音を真似た、幅の広い和音や、 トレモロを真似た素早い連打音、 そして手の交差や早業が多く使われる派手な曲が多い。 7番で弾くと、これらがモソッとしてしまう。 1番だと、かっこよく決まる! どんなピアノでも、その状況に於いて最前を尽くす。 例えば土曜日、舞台に7番があったらば、私は7番で弾けるよう曲の解釈を融通する。 しかし、選択の余地がある時はやはり演目のキャラクターにあった楽器を選びたい。 自分がコントロール出来ることに関しては最前の努力を尽くす。 出来ないことに関しては、受け入れ、その中でどうしたら一番良い演奏ができるか工夫。 例えば音響はコントロールが出来ない。 ホールがどんな建築物を用いて建てられているか、どういう形か、大きさか。 さらにその日の気温や湿度(湿度が高いと音は響かない)。 お客さんの入り具合(人間の体が音を吸う)。 そういうものを全て耳で判断して、1音1音計算。 音響もまた、共演者である。

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ピアニストのジレンマ。

今年のリサイタル「南欧の愛と幻想」にはこの曲が入っている。 「ああ!この曲…」と思われる方も多いだろう、有名な曲だ。 アルベニスの「アストリアス」。 ギターの編曲が有名だが、アルベニスのオリジナルはピアノである。 スペインの民族音楽が素になっている。 このYouTubeを見てお分かりだろうが、この曲にははっきりとしたむずかしさがある。 跳躍である。 ここでピアニストのジレンマがあるのである。 ピアニストの楽譜立てと言うのは、 鍵盤の前に背筋を伸ばして座って、まっすぐ前方を見ると見える位置にある。 これが一番「良い」姿勢、体に負担がかからない姿勢、腕や手の動きが楽な姿勢である。 しかし、こうすると鍵盤が見えないのである。 これは、暗譜をする一つの理由になっている。 しかし、暗譜をしても、このような跳躍の場合はどうしたら良いのか。 鍵盤を見ないで、良い姿勢を保ち、触感と筋肉の動きだけで跳躍をする、 と言うのは一つの方法である。 しかしこのように遠くに跳躍をする場合、体の重心を全く動かさずに、と言うのはほぼ不可能。 そして、重心がずれると、指針がずれるので、触感と筋肉の記憶だけで跳躍を正確にするのは 非常に難しくなる。 しかし、鍵盤を見ようと首を下にすると、腕の動きが明らかに少し限られるのである。 特に私のように座高が高い人は不利である。 論理的には、鍵盤と楽譜立てからの距離が遠ければ遠いほど、両方見えることになる。 (楽譜立てに楽譜を置かないが、『楽譜立てを見る』姿勢を一番良い姿勢としての話し)。 だから、椅子をぐっと後ろに引けば、となる。 しかし、現実問題腕の長さは限られているし、 この曲のように高音鍵盤と低音鍵盤に同時に跳躍するとすると、 やはりある程度の近さに居ないと楽に届かない。 全てはバランスの問題なのだ。 が、そのバランスを毎日違った会場で、違った椅子で、違ったピアノで図るのが難しい。 最初のヴィデオはわざと、苦労して弾いている人のヴィデオを乗せましたが、 次に名人を、二人。 アリーシア・デラローチェはやはりすごい。 しかも、彼女の背の低さと手の小ささを考えると、信じられない! まあ、背が低いと自然と重心が低くなり、安定するという利点はあるが。 そして、次にこの人は、タイミングを絶妙に計ることで跳躍を簡単にしている。 う~ん、なるほど。とても参考になったぞ! みなとみらい、お楽しみに!

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