May 2016

本番当日の覚書ーChin up!

ピアニストをしていると、色々な会場の色々なピアノで演奏することになる。 昨晩は悲しいかな、電子ピアノでの演奏だった。 屋外なのでしょうがないのだが、 そして芝生でたむろす小さな子供連れの沢山の家族に 良天候の中音楽を楽しんで頂けて嬉しかったが、 歩いたり走ったりが嬉しくてたまらないやんちゃ坊主が何度も舞台を疾走したり、 譜めくりが棒を駆使してアクロバットのように風にあおられる譜面を押さえつけたり、 そんな中で何とかやった演奏だった。 風に凍える腕に鞭打って、モニターの割れる音を無視して、 ベストを尽くして演奏した。 二週間前の「『クラシック』って何⁉」世界初演は反対に これ以上ないほどの環境での演奏。 その朝、調律師がきちんと調整・調律してくれたフルコンに、 音響の微調整を壁に取り付けてある布をコンピューターで動かして出来る リサイタルのために作られた300席のホール。 ここで久しぶりに音響とフルコンのすごさを思い出した。 ここでの練習の時に気が付いた、演奏に関する普遍的な真実がある。 目線は出来るだけ上に、と言う事である。 キーシンも、ランラン(私は嫌いだが)も、内田光子も、リヒテルも 良く目線を天井に泳がせて弾いている。 あれはお客さんのための演出ではない。 姿勢を正し、耳をピアノ本体から一番遠い状態にして、目線を上にあげた時 ホール自体に響く音、お客さんが聴いているのに一番近い音を聴ける。 さらに、緊張すると皆取り勝ちな、鍵盤を凝視した、鍵盤に覆いかぶさる姿勢。 これは音が客観的に聞こえなくなるだけでなく、 首や肩、上腕にかなりの緊張を要し、 さらに呼吸も浅くなる。 主観的にはより一生懸命弾いているような感じだが、 実際は全くの逆効果なのである。 今夜の演奏はべ―ゼンドルファーのインペリアルと言う高いピアノで行うが、 会場自体の音響は若干乏しい、ドライな物である。 カーペットが敷き詰めてある会場だと言う事、天井が低い事、 理由は色々あるのだが、 私はその中でどのように聴衆と共鳴出来る音を発信できるだろうか。 自分のベストを尽くします! 今日の演奏会は熊本復興支援のチャリティー。 日本大使館や日本人会のご協力を得ての演奏会となる。 詳細はこちら。 平田真希子さん、佐々木麻衣子さんコンサート なお、演奏会場に来る事は無理だが寄付だけご希望、と言う方は Japanese Association of Grater Houstonへの小切手(Kumamoto Donationと明記)を P.O. Box 130954 Houston, TX 77219までご郵送ください。

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本当の友好、と言う事。

明日、Korean-American Society of Houston主催のイベントで演奏する。 私にはおこがましいほど大志が色々あるのだが、 その一つは自分の音楽活動を通じて国際親善の様な事が出来たら、と言う夢である。 例えば私に向かって「ハイル・ヒットラー」と嫌味を言ってくるような ネオ・ナチスのはびこるドイツの田舎町でリサイタルを演奏した時。 アジア人が珍しいらしく、街行く全ての人に振り返って見られているような ポーランドの小さな町のオーケストラと共演した時。 「音楽は世界の共通語」と、 肌の色が違う自分が、彼らと同じ音楽に情熱を抱き、人生を賭けていることを 見てもらえることに意義を感じた。 でも、自分では気が付かなかった自分の活動の象徴性と言うのを、 お客様に気が付かせていただいた事がある。 タングルウッド音楽祭でメンデルスゾーンの三重奏を演奏した時の事。 中国人のヴァイオリニストと韓国人のチェリストと私のトリオは、 タングルウッドが勝手に組んだ組み合わせ。 顔合わせから数週間で私たちは演奏を披露すると言うスケジュールで、 私は、私よりも年少の弦奏者たちを叱責しながらリハーサルを仕切って 準備不足にやきもきしながら本番に臨んだ。 クラシック業界にアジア人は多い。 韓国人や中国人と共演することは日常的だし、 そんなことよりも少しでも良い演奏を披露する事だけに集中していた。 そしたら演奏後に、お客様の一人にこう挨拶されたのです。 「世界はゆっくりでも少しずつ進歩をしているのですね」 意味が分からなかった私にその白人男性は続けた。 「あんな戦争を経た60年後にその子孫たちがこうやって音楽を奏で合うなんて」 物凄く感じ入った一瞬だった。 ちょっと位演奏の質を妥協しても、 「交流」と言う共演の側面をもっと大事にするべきだったのでは? 私はくそ真面目な人間だ。 準備不足でリハーサルに臨まれたりすると、短気になってしまう。 でも、音楽人生と言う特権的な毎日を送らせて頂いている私が そんなせせこましい事を言っていたら、本末転倒なのかも知れない。 明日演奏するヒューストン韓国人会の演奏会。 話しが来たのはほぼ2か月前。 タングルウッドの一件が在って以来、 「アジア人奏者のコラボでイベントやシリーズをやりたい!」と思っていた私は (運命!?きっかけ!?)と食らいついた。 しかし、今回の責任者のヴァイオリニストは連絡が非常に取りづらく、 何度メールしても「アジア人コラボ」のプロジェクト・ヴィジョンの話し合いどころか 演目の楽譜さえ、やっと送られて来たのが約一週間前。 この頃には私は業を煮やして、匙を投げかけていた。 そんな私の態度を反映してか、 それとも相手がその日の午後にヒューストンに到着して疲れていたのか、 昨夜のリハーサルは「雇われ伴奏」に近い、 交わす言葉は必要事項だけ、という感じの味気ない、ドライな物だった。 私もハードな一日で疲れていたし、 それに約束されている印ばかりの「謝礼」は キャンセルせざるを得ないレッスンと差し引くと赤字になるくらいスズメの涙。 それなのに、この態度は何だ!…そんな気持ちもあったことは否めない。 このイベントは屋外コンサートのため、雨天の場合は中止になる。 雨ごいダンスを激しく踊りたい、そんな気持ちだった。 でも、一日置いて、反省。

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金・土・日と全く違う演目で演奏するための準備

たまたまなのだが、毎週末複数の演奏を抱えている。 先週末はそれでも2回同じ演目で金曜日と日曜日に演奏しただけだったが、 今週末は金・土・日とそれぞれ違う演目・共演者。 昨日は土曜日と日曜日に向けてのあわせが午後に次々とあった。 今日は土曜日と金曜日に向けてのあわせが次々とある。 しかも、ソロ曲だってあるのである。 金曜日の演奏会はDiscovery Greenと言う公演での演奏。 雨天中止で,現在の降水確率は40パーセント。 降水確率にあわせて練習の優先順位が上がったり下がったりする。 こういう状況はまれなので、結構面白い。 これはKorean-American Society of Houstonが主催している催し物。 私は韓国人・日本人・中国人・台湾人と並んで共演して見せることに意義を感じるので、 電子ピアノである事、屋外である事、非常に忙しい週末である事、 全てを見越して受けた仕事だが、結構大変。 韓国の伝統楽器の演奏と共に、ガーシュウィンやピアツォラのタンゴなど、 世界各地の音楽を演奏する、と言う趣旨は良いのだが、 演奏者が各地から集まるのが今日! リハーサルは間に合うのでしょうか? 開けてびっくりお楽しみ!の世界である。 土曜日は麻衣子さんとの共演。 熊本復興支援のチャリティー、と言う事で ヒューストンの日本総領事ご夫妻や、日本人会の全面的な後援を受けてやる。 大変ありがたい。 麻衣子さんと演奏するのは、どういう状況でもいつも楽しみ。 日曜日はフルートの発表会の伴奏。 これはまあ、アルバイトだが、 でもピアノ合わせは初めてと言う3年生から 来年音楽専攻の大学一年生として進学する子まで それぞれリハーサルを要し、かなりの曲を弾く子も居る。 音楽は「音を楽しむ」と言う事を心して、 それぞれの曲、共演者、そして機会を愛でる気持ちを大切に、 今日も頑張ります! 今日は10時半からレッスンを教え、 11時45分から自分のソロ曲をレッスンしていただき、 16時から空港での演奏アルバイト、 そしてそれが終わったら19時30分から22時までリハーサル。 今日も充実!

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走らない日はラジオ体操!~優雅は努力を要す。

雨続き。 演奏会の翌日。 多忙。 走らない、走れない理由は色々ある。 そういう日は何もしないのではなく、 ラジオ体操と「7分体操」と言うのをやっている。 ラジオ体操は一生懸命やると、結構良い運動になる。 適度に息が気持ちよくあがるし、四肢がのびて良い感じ。 7分体操と言うのはこちら。 どのように科学的なのか知らないが、 科学的に一番効率が良い運動だそうだ。 30秒間の運動の間に10秒くらい休む。 腕立て伏せ、段の上り下り、腹筋、スクアットなど色々するのだが、 これは一生懸命やると、本当に汗をかく。 7分で汗をかくなんて、すごい! この「7分体操」はYouTubeで色々なヴァージョンがあって アニメ化されてコンピューターゲームみたいな音楽が着いている奴とか 色々あるのだが、 私は上にペーストしたお姉ちゃんが好き。 この人は息を切らしながら一緒に運動してくれるし、 それに途中て「It takes effort to be graceful]と言うのだ。 優雅に動くのはより努力を要します。 それを聞いて運動しながら、(うん、そうだな、私も優雅になろう)と思う。 ♪そ~れ一、二の、さ~~~ん!!♪

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心を合わせる=耳を澄ます。本番前の覚書。

今日の本番はRiver Oaks Chamber Orchestraの 室内楽〝Unchamber”のシリーズ、シーズンフィナーレ。 River Oaks Chamber Orchestraはアメリカ中から そのユニークな演奏会概念で注目される室内アンサンブルで、 創始者のAlecia LawyerはMusical Americaの 「もっとも影響力のあるアメリカの音楽家50人」の内30位目に選ばれている。 2005年に始まって以来54曲の委嘱作品を世界初演したり、 子供を持つ親が気兼ねなく演奏会を楽しめるように 演奏会中に保育所を設け、その中で音楽に関する子供向けのクラスを行ったり、 色々な工夫で、地域に浸透した、聴衆が楽しめる音楽創りを目指している。 そのAleciaがオーボエ、そして副芸術監督を務める主席ヴィオラ奏者のSuzanneと 三重奏で出演させていただく。 オーボエとヴィオラとピアノと言うコンビネーションは珍しい。 発音も、音色も、奏法も全く違う3つの楽器が 音をまじりあわせて一つの曲を作ると言うのは、 例えばもっと一般的なヴァイオリンとチェロとピアノの三重奏よりもずっと大変。 オーボエは信じられないような小さな穴に すごいプレッシャーで息を送り込んで発音させる。 だから発音は破裂的と言うか、出るときは「パッ」と出る。 そして音は基本的にまっすぐ。 大してヴィオラは弓の最初と真ん中と最後では自然にうねりが出来る楽器。 弦楽器の中でも特にその傾向が強い。 そしてピアノは言ってしまえば打楽器。 これ等の異色な音を溶かして一つの音楽を作り上げるためには 音響と、タイミングを上手く使う、と言うのが現実的な言い方だが、 しかし音響なんて言うのは部屋や、 その日の気温や湿度、それに影響される楽器の調子で一々微妙に変わるし、 タイミングだってお互いのその日の気分や、 お客さんの息遣いなんかで変わったりもする。 計算して前もって準備しきれるものではない。 それで最終的に、一番基本的な「聴く」と言う事に落ち着くのだ。 邪念を捨て、お互いを信頼し、音楽を愛で、 一緒に鳴らしている音、共鳴している部屋、そしてその周りの全てを、聴く。 聴いて、それを包容力を持って迎える。 本番前の覚書、でした。 良く聴いて、楽しんで弾いてきます。

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